SPILL THE BEANS!～Banned From The End Of The World

『友達』について

　『富山の回覧板』こと地元紙･北日本新聞の1面コラム『天地人』にこんな文章が載ってました。

　『若者の法則』（香山リカ著、岩波新書）によれば、今の若者たちの使う「友達」は昔よりずっと広い意味がある。昔は「相手の性格はもちろん、過去や未来の夢もすべて知り、たくさんの時間を過ごす相手」だった。メール交換だけや一方通行も含め「自分にとってある程度以上、気になる存在」はすべて「友達」だという。

(北日本新聞1面コラム『天地人』2002年5月15日付より)

　この文章を読んで私は、まるでパブロフの犬のように(笑)すぐ、ある文章のことを思い出した。音楽雑誌『BURRN!』の編集長だった酒井　康さん(現･バーン･コーポレーション社長)が1991年に出した『売名行為』という本に載っていた『友達』いう文章だ。

　友達

　以前テレビを観ていたら、面白い実験をしていた。
　深夜の六本木で「金が無くなったから、大至急5万円持って来てくれ」と友達に電話した場合、果たして何人が来てくれるか、というものだ。
　レポーターが何やら話しかけるのに応えて、「さあ、来てくれるかなあ」とか言いながら友達に電話をかける。
「何やってんだよォ、今何時だと思ってるんだよ?」
「いや、5万円を…」
「何だ、変な女に捕まったのか?」
「いやそうじゃなくって、とにかく頼むから5万円持って来てくれ」って、ひたすらお願いするわけだ。それを何人にもやってみる。結局何人かは来てくれたみたいだったが、これは“ほんとの友達かどうかを見定める踏み絵”として面白かった。
　実は私も若い人に、これと同じような手を使うことがある。
「友達何人位いる?」
「10人位います」
「じゃ、もし例えば君がマリワナ吸って捕まってね、保釈金に300万円必要とする。君に金がなかったら、自分の貯蓄をボッとおろして300万円払って君を留置場から出してくれる、そういう親友って何人いる?」
　そう訊くと、みんな絶句してしまう。
　よくみんなが軽々しく「あ、彼は友達さ」って言った時、その「友達」って一体何なのかと思う。そいつのためにどこまで身を削れるとか、逆にいざという時に自分のために彼は何をしてくれるのか、とまでは考えてはいないんじゃないかと思う。
　よく、人とのつきあい方は随分淋しいですね、と言われるが、逆に私は、うっとおしくない?と言ってしまう。友達はいっぱいいればいいというものではないと思う。ひとのことはほっといてほしい。
　まあ、そういう私にも友達何人かはいる。例えば私の家に来て、夜遅くまで話したりするヤツとか、すごく真剣にビジネスの話からプライヴェイトの話までしたり、真底ゲラゲラ笑って話出来るヤツとか。だが、ほんの少ししかいない。それでいいと思っている。で、そういう気心しれてる友達というのは1年間丸々会わなくても、気まずくなったりはしないものだ。

(中略)

　昔、ある雑誌社からスタッフを引き抜いた時、そこの編集長が私に会いに来てこう言った。
「今回の引き抜きは勘弁してよ。ちょっとキツイから」
「本人に話したら、本人が来たいって言ってるんだからいいんじゃないの」と言うと、「いや、そこをなんとか。友達なんだからさ」と言う。
　そこで私は「えっ、俺、友達と思ってないよ」と言ってやった。
　その編集長、絶句してましたけど。それは単なる知り合いってヤツでしょ。コンサート会場で会えば、「あ、どうも、おはようございます」と言うだけの、知り合い。普段から何らかのつきあいがあるかというと、全くないわけ。友達と知り合いは全然違うもののはずだ。知り合いというのは、それはそれでたくさん持っていれば便利なものだ。だけど私は、知り合いを友達レヴェルで語りたくないということだけだ。

(酒井　康『売名行為』p. 46より)

　この文章中にある「もし例えば君がマリワナ吸って捕まってね、保釈金に300万円必要とする。君に金がなかったら、自分の貯蓄をボッとおろして300万円払って君を留置場から出してくれる、そういう親友って何人いる?」という質問には「そんな友達、残念ながら居ません」としか、私には答えられないねぇ...。私がとっ捕まったら、留置場から出してくれるどころか、「ああ、やっぱり...。絶対何かやると思ってたよ。納得ぅ～」ってみんな言うんじゃないかなぁ(爆笑～!!!)。逆に、300万円出して友達を留置場から出したい!と思っても、300万円も貯金持ってないしさ(爆笑～!!!)。「300万円払って留置場から出してくれる」のが『友達』の定義とするなら、私には『友達』はひとりも居ません。っていうか、今の世の中そういう『友達』を持ってるひとのほうが少ないハズだと私は思うケド...。
　実際のところは、「1年間丸々会わなくても、気まずくなったりはしない」くらいのところが『友達』の定義だと、個人的には思っておりました。けど、今の世の中『友達』の定義とは『メール交換だけや一方通行も含め「自分にとってある程度以上、気になる存在」』になるというではありませんか!!!

　私にも『友達』たくさん居るね(爆笑～!!!)。

　今の学校は太宰　治の『走れメロス』とか、教えないのか!?(笑)

('02.5.15)

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