Why are we here?
Because we are here.
Roll the bones
Why does it happen?
Because it happens.
Roll the bones(“Roll The
Bones”より)
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RUSH--Roll The
Bones produced by Rupert Hine and RUSH |
前作『PRESTO』同様にルパート・ハイン先生をプロデューサーに迎えて1991年にリリースした17作目。
タイトルの『ROLL THE
BONES』...「bones」はすなわち、サイコロに使われる動物の骨を意味してる。したがって「tumbling
the
dice」と同義。また「bones」は「body」にも通じるわけ。だから「骨休みなどせず働きつづけろ!」っつう意味も多分に含まれてると思う。そんな意味を持つタイトルの付いたアルバム『ROLL
THE
BONES』において、扱われてる歌詞の大まかなテーマは「人生や世界は総て偶然から成り立っていて、そこにはあらかじめ計画されたもの、定められた宿命などはないのだ」...もっと端的にいうと、「人生はみんな賭けだよ」ってことになるようです。歌詞を担当してるニール・パートは、趣味が自転車ツーリング旅行で、中国奥地やアフリカなどを幾度となく旅してる。その結果、彼がたどりついた境地がこれらしい(笑)。このアルバムの歌詞内容やコンセプトについては、日本盤にニール・パート自身による解説が付いてるから、それ読んだらみんな解る(笑)。私の出る幕なんて無いッス...(苦笑)。
ここで収録曲を順に見ていきましょう。オープニング・トラックの“Dreamline”はまさに旅する者の賛歌的な歌詞内容になってます。近年のRUSHのライヴのオープニングはずっとこの曲で、もはや代表曲の1つに数えてもいいくらい。私も大好きです(笑)。“Bravado”は、このアルバムのなかでもシンプルな曲。リリース当時、私はあまり注目しなかったんだけど、こちらが歳をとっていくにつれて良さがジワリと伝わってきた(笑)。今では“Dreamline”以上に好きです(笑)。
タイトル・トラックの“Roll The
Bones”は、ラップを取り入れたことが話題になった曲。前々から「ラップに興味がある」と公言してたゲディ・リーがラップに挑戦しとります(笑)。この曲、ヒップホップからアコースティックな旋律からなにからゴチャマゼにした複雑怪奇楽曲で、よくもまあ1つの曲にまとまったなぁ...と、いつ聴いても感心します(笑)。“Face
Up”はこの時期のRUSHにしては珍しいストレートなロック・ナンバー。
“Where's My Thing? (Part IV,“Gangster Of
Boats”Trilogy)”は、'81年の『MOVING
PICTURES』収録の“YYZ”以来10年ぶりに彼らがレコーディングしたインストゥルメンタル曲。実は、前々からインスト曲を演りたい!...と思ってたらしいんだけど、インスト曲のつもりでゲディとアレックスが作曲しても、ニールが曲に嵌まる歌詞を書いてしまうため、最終的にはみんな『歌』になってしまったそうです。で、この曲を作るにあたっては、ニールが作詞拒否をしたため(笑)自動的にインストゥルメンタルになったらしい(笑)。で、このインスト曲、タイトルが“Where's
My Thing? (Part IV,“Gangster Of
Boats”Trilogy)”っつう長〜いものになってるのは、そもそもゲディとアレックスはこの曲を“Gangster
Of
Boats”ってタイトルにしよう!って思ってたらしいんだな。ところがニールに却下され(笑)、副題として『(括弧)』のなかに押し込められた上、「三部作(trilogy)のパート4」というオフザケまで施された(笑)。ゲディとアレックスのタイトル・センスを軽くあしらうニール(笑)。この軽快なインスト曲、'91年の日本シリーズ(ライオンズ
vs. カープ)の中継(TBS系)で使われてたのが記憶に残ってます(笑)。
CD時代になって収録曲が増えてからのRUSHは、どうも捨て曲が多くなったような気がするんだけど、アナログ(私、アナログも持ってる...笑)のB面に相当する後半は、どうもダレる曲が多いッス。“The
Big
Wheel”...車輪が廻る情景を描いたような(?)シンセの音が耳障りで感心しません...。
“Heresy”は1990年のベルリンの壁崩壊など、旧・東欧諸国の崩壊をテーマにしてます。ニールの言い分はこうです。「東欧国家の崩壊は人々を喜ばせたかもしれないが、私は激怒した。彼らは何世代にも渡ってトイレット・ペーパーを求めて列を成し、粗悪なスーツを身につけ、危ない車を運転し、ハイになりたくて殺虫剤を吸っていた。それはすべて間違いだったのか? 私から見れば、他人の見当違いのイデオロギーに支払う代償にしてはあまりにも高すぎる」。共産主義を押し付けられたがために不自由な暮らしを送ってたひとたちの人生はいったい誰が返してくてるんだ...という怒りが表れてる曲。
“Ghost Of A
Chance”は冴えないB面のなかでは一番光ってる曲。ニールもこう書いてます。「この曲では素晴らしいギター・ワークを聴くことができる、と思う。でも私がそんなことを言ったなど、彼にはくれぐれも言わないでくれたまえ」(笑)。『彼』...アレックスのギター・ワークが素晴らしいバラード・タイプの曲。
“Neurotica”は...ダメですね(笑)。当時のインタヴューでもアレックスは「皆なんとなくシックリしないと感じてたんだ」って言ってるし...。シックリしないと感じたんだったら、ボツにしようネ(笑)。
最後の“You Bet Your
Life”もこのアルバムのテーマに直接的につながる曲ですね。「人生を賭けてみろ!」ですから(笑)。
音楽史からいうと、このアルバムがリリースされてほどなく、ニルヴァーナの『ネヴァーマインド』が大ブレイク、グランジ/オルタナのムーヴメントが勃発。その後にリリースされる次作『COUNTERPARTS』では明らかにグランジ/オルタナの影響受けて音が荒々しくなります。この『ROLL
THE
BONES』では、音が荒くなる前のRUSH、'80年代のエレ・ポップ路線からハード・ドライヴンな感覚を取り戻す移行期間のRUSHが楽しめるっつうことになるんでしょうか? でも、移行期間の作品ゆえ、ファンの間じゃ評価高くないんだよな...。
ところで、この作品が出た6年後に、ニールは娘と妻を次々と亡くします。そういう悲劇に立て続けに見舞われてもニールは「人生や世界は総て偶然から成り立っていて、そこにはあらかじめ計画されたもの、定められた宿命などはないのだ」という考えのままで居るのかな? たとえ「鬼!」ってののしられようが、かなり興味があります、私...。
('01.10.11)