クラウドベリー・ジャム(以下、CBJ)の1年振り2度目の来日ツアーは、すべて平日の日程で組まれており、会社を休むか、ライヴを諦めるかのいずれかの選択を迫られる。私はどちらを選んだかというと...?
CBJといえば、スウェディッシュ・ギター・ポップ・バンドのなかでは、カーディガンズに次ぐ人気のあるバンドで、新作『雰囲気づくり』がオリコンの50位以内に入るわ、私がチケット発売当日に取ったチケットの整理番号は647番だわで、このことからもいかにCBJが人気バンドかよく判る。
「このスウェーデンの2大人気バンドの最大の違いは、力ーディガンズの客は男女比3:7。CBJは男女比7:3であることだ」と何かで読んだことがあるが、実際、会場の渋谷クラブ・クアトロに足を踏み入れたところ、男女比はほぼ半々。紅一点のヴォーカルのジェニー・メディン目当ての野郎どもばかりが集まっていると思っていたが、そうでもないようだ。
7時を5分廻ったころ、メンバー5人が登場。ジェニーが早速、「コンバンワ」と日本語で挨拶する。そうして始まったオープニング・ナンバーは“Going
Further”。この曲と次の曲の“Twice As
Cool”はキーボードのへンリク・サンドゥクヴィストが音を外しまくり、「アレッ」と思わせる。どうやら機材の調子が悪いようだ。キーボードがダメだといくらジェニーの歌が素晴らしくても楽曲の魅力は半減で、謀らずもCBJのサウンドの鍵を握っているのがへンリクであることを示してまった。
場内から「ジェニー〜!」と男性客の声が次々とかかる。当のジェニーはテレ隠しだろうか、「ジェニーって誰?(Jennie?
Who?)」とトボけてみせていたが、バンド・メンバーから「アンタのことだよ」と指さされていた(笑)。
ボサノヴァ調の“Roll The
Dice”のあと、観客のなかに、今回のツアー、全部観に来ている客(追っかけ)を発見したジェニー。「また会ったね」と声をかけたあとジェニーはミネラル・ウォーターのペット・ボトルをラッパ飲み。北欧のアーティストにとって、ここ日本の暑さは尋常じゃない暑さの筈。前に観たS・セルマーニも曲が終わるたびにコップの水をチビチビ飲んでいたが、CBJの場合、メンバー1人1本ずつミネラル・ウォーターのペット・ボトルを持ち、ノドが乾くたびに水をカパカパ飲んでいた...。
というわけで、4曲目の“Yeah!”を歌い終わった後も、ジェニーはカパカパとミネラル・ウォーターをラッパ飲み。そんな時、最前列にいた女のコがジェニーに「give
me
water!」と声をかけた。するとジェニーはそのコにペット・ボトルを渡した! そのコも水をラッパ飲みしたあと、ペット・ボトルをジェニーに返した。これを見て、場内の野郎どもが黙っている訳がなく、「俺も!俺も!」の騒ぎとなったが、ジェニーはそんなオオカミどもにエサを与えるようなマネは、当然の如く、しなかった。
ヒット曲“Nothing To
Declare”が披露されると、大いに盛り上がる会場。“Direction Still
Unknown”からはキーボードのへンリクもギターを構え、比較的ロック色の強いナンバーが立て続けに披露された。“Elevator”ではへンリクがイントロを弾き間違え、ベースのペール・ヴァルシンガーにタオルを投げ付けられたりした。この後改めて“Elevator”のイントロを弾き直したら、今度はジェニーが歌詞をド忘れ。ま、その後の歌がしっかりしていたので、ご愛嬌で済んだが...。
“Elevator”のあと、へンリクはキーボードに戻り、“Connected”を披露した。この後、よほど暑いのかジェニーは後ろ髪を結わえ、ポニーテイルに。そして演奏されたのは、新作『雰囲気づくり』のオープニング曲“Clich市”この曲で大いに盛り上がった後、ジェニーはベースのペールを指さし、「彼、まるでシャワー浴びたように汗かいてるわね」と言う。すると、会場から「Hot?」と問いかける声。するとジェニーは「Oh〜very
hot!...here〜」と、自分の立っている床を指さした...。この後、“Monday's
Back In
Town”が披露され、本編が終了。ステージを去るときベースのペールは自分のぶんのミネラル・ウォーターのペットを最前列に押し込み、汗をふいたタオルを観客へ投げ込んだ。が、悲しいかな、「キャー」という声はしたものの、奪い合いは起こらず、みんな露骨に身を引いていたように見えた。『ジェニーのは欲しいけど、アンタのは要らない』ということだろう...。
この後、場内はアンコールの手拍子。ジェニーとへリンクとドラムのペール・バイストロムの3人が戻ってきて、“Wandering,
Wondering”を披露。途中からベースのペールとギターのヨルゲン・ワーンストロムも戻ってきて、曲に加わる。この静かな曲でジェニーは熱唱。会場のみんなもこの時ばかりは静かにジェニーの歌に聴き入っていた。次の曲が“Couching”と紹介されると、最前列の女のコから歓声があがる。そのコにジェニーは「ユア・気ニ入ッタ・ソング?」と日本語・英語混じりで声をかけた。“Couching”が披露された後、メンバーはステージを後にしたが、再び観客の手拍子に呼び戻された。2度目のアンコールである。戻ってきたジェニーに男性客から「Jennie,
I Need
You〜!」と声がかかる。このときジェニーは「いったいどんな反応したらいいの?」って感じの何ともいえない表情をしていた。
2度目のアンコールの最初の曲は、ジェニーとヨルゲンのデュエットが聴ける“Life
In This
Way”。アルバムでは車のボンネットなどいろんな物を叩いた音を取り入れているというこの曲、ライヴでは...曲の途中からドラムのペールがドラム・セットを離れて、壁や照明などを叩きまくる。これには会場、大いに盛り上がった。次に“Waiting
For Another
Day”が演奏され、1時間15分のライヴは終わった。まだまだ聴きたかったけど、日本の暑さに慣れていなくて、水をカパカパ飲んでいたジェニーにこれ以上望むのは酷だし、ライヴを終えるいい潮時だったといえる。私も暑くて死にそうになってたし...。
【SET LIST】...'96.7.31
渋谷クラブ・クアトロ
1. Going Further
2. Twice As Cool
3. Roll The Dice
4. Yeah!
5. Nothing To Declare
6. Direction Still Unknown
7. This & That
8. Some Things Are Better Left To Be
9. Another Moment Follows
10. Come Back And Stay
11. Elevator
12. Connected
13. Cliches
14. Monday's Back In Town
(encore 1)
1. Wandering, Wondering
2. Couching
(encore 2)
1. Life In This Way
2. Waiting For Another Day