ヒロくんのLIVE REPORT '96 PART 5 LUSH

 利尻島からフェリーと列車を乗り継ぎ、9月17日の午後5時半、私は新宿・歌舞伎町のド真ン中にあるリキッド・ルームの前で、開場を待っていた。ほかにも開場が待ちきれないという熱心なラッシュ・ファンが10数名いた。しばらく待っていると、リキッド・ルームの入口あたりの女のコたちが騒がしい。「何事だ!」と思っていると、どこかで見たことのあるような外国人女性1名と外国人男性1名がいて、この2人を取り囲んで女のコたちがキャッキャと騷いでる。よくよく見ると、外国人2人は(ラッシュの)エマちゃんと、ベースのフィルではないか!!! 女のコたちはエマちゃんとフィルにサインをおねだりしたり、ー緒に記念写真を撮ったりしている。私もエマちゃんとフィルのサインをもらおうと、ラッシュの来日記念盤『トポリーノ』をカバンの中から取り出そうとしたが、モタモタしているうちにエマちゃんとフィルは、タ暮れの歌舞伎町へと消えていったのだった...。(この2人、ライヴ開始の1時間前だというのに、いったいどこへ行ったんだろう?)
 新宿リキッド・ルームでのライヴが始まったのは7時10分。BGMつきでメンバーが登場。先ほどリキッド・ルームの入口で見かけたエマちゃんとフィルもちゃんとそこにいた。オープニング・ナンバーは“Heavenly Nobodies”。最近染め直したばかりなのか、真っ赤な髪のミキちゃんが首を左にかしげる独特のポーズで歌い出す。この曲では「まァ〜、ヤダわン」という『そらみみ』が聴けることが知られている(?)が、これは『生そらみみ』でも確認できた(笑)。
 ラッシュのライヴといえば、ミキちゃんエマちゃん目当ての野郎どもが大勢押し寄せ、「ミっキちゃあ〜ん、エっマちゃあ〜ん」と野太い声援を送るのが常と聞いていたが、「ミっキちゃあ〜ん、エっマちゃあ〜ん」という男性の声援はなく、逆にドラムのクリスヘの「クリス〜」という女のコたちの嬌声が目立っていた。
 “The Childcatcher”のあと、ニュー・アルバムのタイトルでありながら前作『スプリット』に入ってる曲“Lovelife”が演奏され、その後、新作『ラヴライフ』から、最新シングルの“500(Shake Baby Shake)”と第1弾シングルだった“Single Girl”が立て続けに披露された。
 実際のライヴを観て初めて判ったことが幾つかあって、1.ミキちゃんは12弦ギターを弾くことが多い(6弦のときもある)。2.「ミキちゃんがリード・ヴォーカル、エマちゃんがバック・コーラス」と思っていたが、リード・ヴォーカルよりバック・コーラスを目立たせたいときは、エマちゃんがリード・ヴォーカルで、ミキちゃんがバック・コーラス。ミキちゃんのほうが高音域が出て、声量も多いためだと思われる。
 6曲目は“Downer”。この曲は彼女たちがアルバム・デビューする前に出したシングルの編集盤『ガラ』に入っている曲。こんな昔の曲を演ってくれるとは...。8曲目も『ガラ』からで、“Deluxe”。この曲のイントロでミキちゃんとエマちゃんが向き合い、お互いのギターの指運を確かめあうようにしてギターを奏でる。美女2人が互いに向き合いギターを弾く姿はとても妖しいものがあった。9曲目の“Light From A Dead Star”と次の“Last Night”はアルバムではSEや凝ったアレンジが施されているので4人で演奏しきれないぶんをテープ(たぶん)を使っていた。11曲目の“Hypocrite”(邦題は“偽善者”)は、この日演奏された曲のなかで一番激しいナンバーで、みんな大いに盛り上がる。「払う払う有線バイト」という『そらみみ』のある曲“Runaway”、1stアルバム『スプーキー』から唯一、“For Love”が演奏されると、ミキちゃんが、「今夜の最後の曲」とMC。会場からの「エエ〜ッ」というブーイングをものともせず披露した曲は、新作『ラヴライフ』のオープニング曲で、世の男性たちへの憎悪をムキ出しにした“Ladykillers”だった。
 メンバーがステージを後にすると、当然アンコールの手拍子...だったがなかなか戻って来ないため、みんな疲れ果てて、手拍子が足踏みに変わったころ、メンバー4人がようやく戻ってきた。特にミキちゃんは火の点いた煙草を片手にの御帰還だった。ミキちゃんはマイクに向かうと、野郎どもが掛ける声援「ミ〜キ〜」のモノマネを造り声で披露。このあと“Desire Lines”を演った。次の曲は“Sweetness And Light”(邦題は“優しさと軽さ”)。初期の代表曲といえるこの曲を演奏した後、ミキちゃんは「サヨナラ」とこの日唯一の日本語MCをして、再びステージを去った。(ミキちゃんはその名のとおり、日欧のハーフなので、日本語MCしてもあまり有難みが感じられない。そこのところを本人も分かっているようだ) この後、しばらくみんな2度目のアンコールを求め、拍手(のち、足踏み)していたが、ラッシュの『最後のキメ』というべき“Sweetness And Light”を演ってしまった以上、もう演る曲がないということだろう、ミキちゃん、エマちゃんとフィルにクリスは戻ってこなかった。それとも恒例の「ミっキちゃあ〜ん、エっマちゃあ〜ん」と野太い声援が今日は少なかったので、ミキちゃんとエマちゃん、へソ曲げちゃったかな?(笑)

【SET LIST】...'96.9.17 新宿リキッド・ルーム
1. Heavenly Nobodies
2. The Childcatcher
3. Lovelife
4. 500 (Shake Baby Shake)
5. Single Girl
6. Downer
7. Kiss Chase
8. Deluxe
9. Light From A Dead Star
10. Last Night
11. Hypocrite
12. Runaway
13. For Love
14. Ladykillers

(encore)
1. Desire Lines
2. Sweetness And Light

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