ヒロくんのLIVE REPORT '96 PART 10 GARBAGE

 音楽雑誌『rockin' on』6月号のp.73に載ってる写真がコトの始まりだった。そこに載っているガービッジのヴォーカル、シャーリィ・マンソン嬢のパンチラ写真、よ〜く見ると黒いパンティからタンポンのヒモがのぞいているではないか! この写真が20代後半の純真無垢な青年に動揺を与えた。『肩たたきのうた』の替え歌〜♪ねえさん、お股を開きましょう。タンポンタンポンタンポンポン〜を歌い出すほどウカレた私は、シャーリィの股間のタンポンのヒモを実際に見るべく、ガービッジの来日公演のチケットを取り、会社を丸1日休んで名古屋へ行ったのだった...。

 と書けば、大いにウケるのだろうが、私がガービッジのライヴを観に行ったのは、タンポンのヒモなど全然関係なくて(そりゃあ、シャーリィのミニスカートの中身に全然興味が無いと言えば嘘になるが)純粋にガービッジの音楽を高く評価しているからである。
 ガービッジといえば'90年代を代表する名盤...ニルヴァーナの『ネヴァーマインド』、ソニック・ユースの『ダーティ』、スマッシング・パンプキンズの『サイアミーズ・ドリーム』、そしてソウル・アサイラムの『レット・ユア・ディム・ライト・シャイン』などのプロデューサーとして名高いブッチ・ヴィグがプロデュース業を休止してまで始めたバンド。'90年代のミュージック・シーンをトップ・プロデューサーとしてリードしてきたブッチが自らミュージシャンとなり提示してきたのが女性ヴォーカルをメインに据えた打ち込み主体のポップ・ロック・バンド、ガービッジ。
 てなわけで10月17日、名古屋クラブ・クアトロに行った私。名古屋のよいところは「ロック不毛の地」とバカにされることもある土地柄のせいか、席が取り易いことである。事実、開場の6時前に入口で並ぶくらい熱心な客は30人ほど。お蔭で私はステージに向かって中央から少し左よりの最前列をゲットすることができた。手を伸ばせばマイク・スタンドをつかめる位置。ってことはシャーリィを間近に観察できるわけで、もしシャーリィがミニスカートなら、中身も拝めそう。そんな幸せ・な位置で開演を待っていると、私の目の前のステージ上にフット・スウィッチが置いてあることに気づいた。ガービッジの音楽はCDではオーヴァー・プロデュース気味で、ライヴで再現するにはテープ類を使う必要があるが、このフット・スウィッチはそのテープ類をスタートさせたり、切り替えたりするものらしい。そのフット・スウィッチにはこんな紙が貼ってあった。

QUEER

2

LOVERS

8

TRIP

4

HEAVEN

3

FIX

9

MILK

8

ONLY

3

KICK

2

NMI

0

SUPER

6

VOW

1

GIRL

0

DOG

1

STUPID

4

SUB

5

 この紙は、どの曲のとき何番のスウィッチを踏むかの一覧表のようだ。つまり“Queer”のときは2番のスウィッチを踏むことを示しているわけだが、この紙はセット・リストでもあり、この時点でどういう順番でどの曲を演るか判ってしまった...。7時を5分くらい過ぎた頃、天変地異か宇宙人による地球侵略を思わせるSEを伴い、シャーリィを除くガービッジのメンバー3人とサポートのベーシストが現れて演奏し始めた曲は、案の定“Queer”。そしてそのイントロに乗って、マイク片手にシャーリィ登場! 
 最近髪を切ったのか、髪形がセミ・ロングになっていたシャーリィのいでたちは黒のタンクトップに皮のミニスカート・。お御脚は白の編みタイツで包まれており、さらに黒のブーツ。“Fix Me Now”ではCDどおり、マイクに息を吹きかけるような発音で歌ったりして、CDや写真でイメージするとおりの妖しい女性・シャーリィ。シャーリィはミニスカートの中身が窺えるスキをいくらでも作るほど激しいアクションが多いのだが、照明の関係でなかなかズバリ見る機会はなかった。でも3曲目の“Not My Idea”でついに見てしまいました...。白でした...。そんなお色気ムンムンのシャーリィは“My Lover's Box”ではギターの腕前も披露した。
 場内からシャーリィへの声援が多いのは当然として、ドラムのブッチ・ヴィグ先生への声援も多かった。そのブッチ、テープに合わせてドラムを叩かなきゃいけないため、へッドフォンでクリック音をモニターしながら演奏。私の目の前ではスティーヴ・マーカーが汗をしたたらせながらギター・ノイズを撒き散らし、曲の合間には例のフット・スウィッチを踏み、デューク・エリクソンは黙々とギターを奏でていた。
 デュークが奏でるシンセをバックにシャーリィがシットリとした歌を聴かせた“Milk”の後、CDよりもロック色の濃い激しい演奏でアルバムのオープニング曲“Supervixen”やヒット曲“Stupid Girl”が演奏されたころから客のテンションは高まり、“Only Happy When It Rains”では男性客を中心に大合唱となった。この曲のサビの部分♪pour your misery down on me〜(あなたの苦悩を私に注いで)を大合唱する野郎どもの姿はさながらシャーリィ女王様にひざまづくM男といった趣。私もその『M男』のひとりだった訳だが...。次の“Vow”でも野郎どもから♪I nearly died〜という合唱を引き出したシャーリィ女王様は曲が終わると素っ気なくステージを後にし、ブッチ、スティーヴ、デュークの30代のオッサン3人と若いサポート・ベーシストは深々とおじぎして、ステージを去った。
 『M男』どもの要求に応えたアンコールでは、シャーリィ女王様はヴィック・チェスナットのカヴァー曲“Kick My Ass”をシットリと歌いあげ、“Only Happy When It Rains”のシングルに収録されている“Girl Don't Come”を披露した。シャーリィはホントに妖しくも、可愛い女性でした。

【SET LIST】...'96.10.17 名古屋クラブ・クアトロ
1. Queer
2. Fix Me Now
3. Not My Idea
4. Dog New Tricks
5. My Lover's Box
6. Milk
7. Supervixen
8. Stupid Girl
9. Trip My Wire
10. Only Happy When It Rains
11. Vow

(encore)
1. Kick My Ass (ヴィック・チェスナットのカヴァー)
2. Girl Don't Come

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