今年デビューした新人バンドで、洋楽ロック雑誌が総絶賛していたのがイギリスの4人組、クーラ・シェイカー(以下、クーラ)。スゴいものになると「クーラを聴かずして、今のロックは語れない!!!」とまで言い切っているぐらいで、ここまでメディアが絶賛するものだから、この9月に発売された彼らのデビュー・アルバム『K』は発売1週間で10万枚のセールスを記録した。これは大都市圏に限った話ではなく、ここ富山でもフクロヤの9月のCD売上げチャート(洋楽)のTOP10にランクされるなど、新人ロックバンドとしては異例の爆発的売上げを記録した。メディアのもつ影響力はスゴいとしか言いようがないが、アルバムの爆発的売上げの余韻醒めやらぬうちに、今度は絶妙のタイミングで来日まで決まってしまった。当然、チケットはあっという間にソールド・アウト。私はうまくこの『プラチナ・ペーパー』を手にしたわけだが、正直に言うとチケット取れてもあまりうれしくなかった。というのは私にはクーラが『世間』が言うほど素晴らしいバンドとは思えないからで、アルバム『K』も特別に革命的なことをやっているようには私の耳には聴こえん。確かにこのバンドの演奏はタイトで、新人バンドらしからぬところも垣間見せるが、「クーラがロックのすべてを変える!!!」とリキむメディアの絶賛を目にするたび、バンドに対する興味が醒めていくのを覚えたりもした。「そんなアーティストのチケット、どうして取ったんだよ」と言われそうだが、チケットが発売された頃、まだ私にはクーラというバンドが海のものとも山のものとも判断つきかねていたので、とりあえずチケット取っておこう...てな感じだった。(ただ、チケット取ったことは後悔していない)
てなわけで、今までライヴ・リポートで取り上げてきたのはみ〜んな私が好きなアーティストだったわけだが、今回は初めて「好きでもないアーティスト」のライヴを観に行くことになった。クーラのファン、気を悪くしないでね・
私が観に行ったのは11月30日の名古屋公演。この日は冬型の気圧配置が強まったため、車のタイヤ交換を済ませてから名古屋へ出発。国道41号線の数河峠の積雪を想定してのタイヤ交換だったわけだが、これは大正解だった。なにしろこの日は富山でも初雪降ったわけだから...。会場のクラブ・クアトロの入っている名古屋パルコに着いたのは午後3時過ぎ。この時点で開場を待つ行列が階段に出来ていたのだが、クラブ・クアトロのある8階から4階まで行列が続いていた...。列についているのは9割がた女性で、これを見てクーラのアルバム『K』のセールス20万枚の原動力が何であったか納得。クーラのヴォーカルはとても美形なんですよ。
6時になり、ようやく客入れ。野郎どもが開演間際にやってきたため、会場の男女比は3:7くらいまでに改善された。が、やたら女のコの多いライヴには変わりない。私は会場の後ろのカウンターでクーラの登場を待っていた。会場の前のほうのフロアは熱心なファンのための場所で、私のようなクーラに冷めた視線を送っている者の場ではないからだ。
7時10分頃いよいよクーラ登場! オープニング曲はデビュー・アルバムと同じく“Hey
Dude”。この曲ではサビの部分で大合唱が起こっていた。ステージ上には向かって左からオルガン奏者のジェイ、ヴォーカル兼ギターのクリスピアン、ベースのアロンザがいて、ステージ奥でドラムのポールがタイトなリズムを刻んでいた。このバンドのリズム・セクションが英国の若手バンドとしては例外的に上手いのはCDでも分かっていたが、ライヴでも余裕でCD以上のものを演奏していた。ライヴではCDよりも低音がビンビン響いてくるせいで、アロンザとポールの上手さがいっそう際立っていた。
2曲目の後、女性客のお目当ての美形・クリスピアンが「アルバムには入っていない曲だ」と言って“Under
The
Hammer”を演奏、この後「スリー・オー・スリー」と叫んで“303”を披露。途中でオーディエンスに歌わせたりしてライヴが盛り上がっていく。“303”のあとクリスピアンは「too
hot」と言って上着を脱ぎ、白い長袖シャツ姿になった。体にピチピチの白い長袖シャツ姿のクリスピアンは体型のせいもあり、お笑いコンビの『松本ハウス』(大川興業所属)のハウス加賀谷の服装みたいだった。これで薄紫のズボン履いてたらホントにハウス加賀谷だ。クリスピアンのことを王子様・と思っている女のコには悪いが、クリスピアンの服装はカッコイイどころかミョーに笑えた。
5曲目は“Grateful When You're
Dead”。こんな美味しい曲、5曲目に演るとは勿体ない気がした。CDどおりの流れで“Jerry
Was
There”を演った後披露した“Tattva”はサンスクリット語によるマントラを織り込んだ曲。ここまでの客の盛り上がりに気を良くしていたクリスピアン、いい気になって曲の途中でマントラの部分を客に合唱させようと「one,
two, three,
four」とフった。ところが客の誰一人として歌ってくれる者はいなかった...。あ〜、やっちゃったよ、名古屋...。クーラの特徴のひとつに露骨なまでのインド趣味が挙げられるが、ファンのなかにもインド趣味を「ウサン臭い」と思っている者がいることをクーラは知るべきだ。
「これは悲しい歌だ」と言ってクリスピアンは“Start All
Over”のイントロを弾いたが、ドラムのポールがワザと演奏に加わらずイジワルする。クリスピアンは「オイ、コラ」という感じでドラムのポールのとこへ行き、ひとことふたこと話した。ポールは「今のジョークだよ〜」ってな感じで笑ってた。“Start
All
Over”を演奏し直した後、私の知らない曲とディープ・パープルの“Hush”が披露されたが、クリスピアン、先程のお返しとばかり、バス・ドラムの上に乗ったりしてポールの演奏の邪魔をしていた。
「インドについての歌だ」とクリスピアンが紹介した曲は“Govinda”。この曲もマントラを織り込んだ曲。この曲で本編の部分が終了した。
アンコールの1曲目は“Into The
Deep”。この曲はCDよりキーを上げて演奏されたが、高音部でクリスピアンは声が出ず、フェイクしていた。フェイクするぐらいなら最初からキー上げるなよ! この後“Ragey
One”、“Smart Dogs”を演奏してこの日のライヴは終わった。
演奏がCD以上にしっかりしていたこともあり、期待していた以上のものを見せてもらったような得した気分の1時間5分だった。
【SET LIST】...'96.11.30
名古日クラブ・クアトロ
1. Hey Dude
2. Knight On The Town
3. Under The Hammer
4. 303
5. Grateful When You're Dead/Jerry Was There
6. Tattva
7. Hollow Man Parts 1 & 2
8. Start All Over
9. ( ? )
10. Hush (ディープ・パープルのカヴァー)
11. Govinda
(encore)
1. Into The Deep
2. Ragey One
3. Smart Dogs