(special guest : SEPTEMBER 67)
ギター奏者がいない、ピアノ、ベース、ドラムスの3人という変則的バンド編成で、'95年のデビュー直後から注目を集め、ここ日本で一躍人気者となったベン・フォールズ・ファイヴ(以下、BF5)の、この2月に発表した2ndアルバム『ワットエヴァー・アンド・エヴァー・アーメン』を引っ提げての待望の再来日ツアー。私が観たのは5月11日の大阪公演。
5時過ぎ、スペシャル・ゲストとしてこのツアーに同行してるセプテンバー67が登場。今年1月29日に日本デビューを果たしたセプテンバー67は、ギター兼ヴォーカルのシャノン・ウォレルとドラムのクリスティン・アズベリーの女性2人組。1曲目の“Poor
Boy”を披露し終わると、観客の拍手に対し、ドラムのクリスティンが「オオキニ。ワタシタチハ、クガツロクジュウシチ(9月67)デス」と関西弁混じりで挨拶し、会場を沸かせた。
セプテンバー67の音楽を説明すると『スザンヌ・ヴェガの声を高くして、田舎に移住させたような音』となるだろうか。シャノンのヴォーカルの息使いはスザンヌ・ヴェガのそれを思わせる。全部で7曲演奏したが、わざわざアメリカから来たわりには早く終わり過ぎの感がした。デビュー・アルバム『ラッキー・シュー』の曲をあまり多く演らなかったし...。彼女たちの演奏も期待していた私にはチョット喰い足りない気もした。
セット・チェンジが行われ、時計の針が6時前を指すと、いよいよBF5の登場だ。
ベースのロバート・スレッジとドラムのダレン・ジェシーが現れ、2人が演奏を始めるとベン・フォールズが登場。ベースとドラムだけをバックにデビュー作から“Best
Imitation Of
Myself”を歌った。この曲を歌い終わるとピアノに着き、上着を投げ捨て白のTシャツ1枚になったベン・フォールズ、「Let's
rock!!!」と叫び、いきなり鍵盤を叩き始めた。2ndアルバムのオープニングを飾る“One
Angry Dwarf And 200 Solemn
Faces”だ。ベン・フォールズは鍵盤を無造作に叩いてるにしか見えないのだが、アルバムどおりのピアノの旋律を奏で、歌もきちんと歌っていた。オマケに殆ど鍵盤見てないし...。話には聞いていたがここまでベン・フォールズのピアノが凄いとは...。いきなりド胆を抜かれた私。
5曲目に披露された“Kate”では場内大合唱になり、続くインスト・ナンバー“Theme
From‘Dr.
Pyser’”では3人がジャズのピアノ・トリオばりの凄まじい演奏を聴かせた。
写真で見るよりずっと立派な体格なロバートがベースをチェロに持ち替えて演奏した“Brick”の後、ピアノを離れたベン・フォールズが、手に鍵盤ハーモニカを持ち披露したのが“Steven's
Last Night In
Town”。この曲はCDではホーンを導入しているが、そのパートをベン・フォールズが鍵盤ハーモニカで再現してた。鍵盤ハーモニカでもベン・フォールズの指は、当然ながら、余裕を持って動いていた。
ベン・フォールズがピアノに戻って奏で始めたフレーズはBF5の衝撃的デビュー作の1曲目の“Jackson
Cannery”で、これには場内から悲鳴に近い歓声が上がり、大合唱が渦巻いた。この曲を超える大合唱が場内に起こったのは『POPS
'97』のチャートでもライク・インした“Song For The
Dumped”の日本語ヴァージョンに相当する“金返せ”が披露された時。1コーラス目と2コーラス目はベン・フォールズの歌に合わせての合唱、3コーラス目はというと...突然ベン・フォールズがピアノの椅子の上に立ち、指揮者に変身。観客はベン・フォールズの指揮に合わせて大合唱で応えた。♪金を返せ! 金を返せ! you
bitch!~ ライヴを大いに楽しんで不平不満が無いにもかかわらず、推定2000人の観客が「金を返せ!」と合唱する様は、考えてみればチョット不思議な感じがしなくもない。
「金を返せ!」の合唱の後、ドラムを離れたダレン、ドリンク入りのコップを手にステージ中央のマイクに歩み寄り、次のように日本語MCした。「ミンナ、おなら~!!!」 すると場内には「プゥゥ〜!」とオナラの音が響き渡った。ピアノのとこに居たベン・フォールズの足がしきりに動いてたことからすると、ベン・フォールズがオナラの音を出すペダルか何かを踏んだに違いない! オナラの音で場内のウケをとった後、“Underground”を披露し、BF5の3人はステージを去った。
アンコールの求めに応じ戻って来た3人。ベン・フォールズはピアノに着くといきなり「コンニチワ、べんチャンデ〜ス」と日本語で挨拶。アンコールの1曲目は“Smoke”。この曲ではベン・フォールズは脇に鍵盤ハーモニカを置き、右手で鍵盤ハーモニカ、左手でピアノを弾くという器用なマネを披露してた。もっとも、これくらい彼にとっては朝飯前のことだろうが...。次に“Julianne”を披露し、この日のライヴは終わったのだが、ベン・フォールズとロバートはステージに残り、再前列の観客が差し出す手に握手で応えた。ロバートは暫くするとステージを去ったが、ベン・フォールズは場内に『客出し』の音楽が流れても、スタッフが止めに入っても、ファンとの握手を止めず、気が済むまで握手してからステージを後にしていった。
BF5の3人の演奏はモノ凄く上手で、ヴォーカル・ハーモニーも完璧だった。しかも音楽技巧を一方的に見せつけるだけの『音楽鑑賞会』ではなく、観客と一体となった『ロック・コンサート』を演ったところにBF5の凄さがある。技術とハートが伴った『ホンモノのミュージシャン』による『ホンモノの音楽』を目の当たりにした貴重な一夜だった。
【SET LIST】...'97.5.11
大阪・IMPホール
《SEPTEMBER 67》
1. Poor Boy
2. ?
3. What's Wrong With Alice
4. ?
5. Don't Break
6. Giant
7. ?
《BEN FOLDS FIVE》
1. Best Imitation Of Myself
2. One Angry Dwarf And 200 Solemn Faces
3. Philosophy
4. Selfless, Cold And Composed
5. Kate
6. Theme From‘Dr. Pyser’
7. Missing The War
8. Brick
9. Steven's Last Night In Town
10. Jackson Cannery
11. Fair
12. The Last Polka
13. ?
14. Cigarette
15. Battle Of Who Could Care Less
16. 金返せ
17. Underground
(encore)
1. Smoke
2. Julianne