ヒロくんのLIVE REPORT '97 PART 11 BIS

 今年デビューした新人で一、二を争うセールスをあげているのがスコットランド出身の『ティーンエイジャー・バンド』bis。デビュー・アルバム『ニュー・トランジスター・ヒーローズ』は日本で20万枚ぐらい売れているものと思われる。何でこんなに売れるの?
 bisは男2人の兄弟に女のコ1人の3人組。ギター、ベース、キーボードのシンプルな編成で3人ともヴォーカルをとる。ドラマーがいないかわりに彼らはドラム・マシーンを使っている。そんなbisの顔といえば、マンダ・リン。bisのCDのジャケット・デサインの殆どを手がけていて、絵の才能もある彼女はデビュー前から「デブだ!」とか「ブスだ!」とか「歌うピザマン」とか「モリマンや山田花子のほうがマシ!」とか散々な言われようで、確かにマンダ・リン本人が描く自画像ほど可愛くないが、そこまで言われる程ひどくないように思うんだけど、私は。そんなわけで、bisの初来日ツアーを観に、6月15日、心斎橋クラブ・クアトロに行ってきた。
 話題のbisの初来日公演ということで、会場はフル・ハウス状態。客層はやはりと言うべきか、高校生とおぼしき女のコが多く、チケットの整理番号が65番だったため最初はフロアの最前列付近に陣取ってた私だが、あまりに自分がこの場に場違いなのに気付きカウンターの方まで避難したぐらいである。女のコのなかにはマンダ・リンと同じ髪形にしてきているコもいたが、どちらかというと『天上の憧れのスターを観に来ている』という感じの女のコよりも、「マンダ・リン程度のルックスでもポップ・スターになれるなら、いっつかアタシだって!!!」という幻想を抱いてる女のコが多そうだった。
 7時を少し廻った頃、bisの3人が登場。オープニング曲は“Tell It To The Kids”で、場内は「tell it to the kids, tell it to the kids, hey you!」の大合唱で、いきなり盛り上がる。曲が終わるとステージ向かって右側にいるキーボード兼ヴォーカルのマンダ・リンが日本語でメンバー紹介を始めた。「コチラガ、じょん・でぃすこデス」 ステージ向かって左側の、モミアゲが長く、緑のシャツを着ているのがベース兼ヴォーカルのジョン・ディスコ。「コチラガ、さい・ふぁい・すてぃーhんデス」 ギター兼ヴォーカルのサイ・ファイ・スティーヴンは、bisのアメリカでのレコード会社の『Grand Royal』のロゴ入りの赤のTシャツを着てステージ中央に。「ワタシガ、まんだ・りんデス」とメンバー紹介を終えたマンダ・リンはブルーのチャイナ・ドレス姿だった。
 5曲目に早くも“Kandy Pop”が披露され、曲が終わると、最前列の観客の女のコがステージに日本のアニメ・キャラクターもののチビTを投げ込んだ。マンダ・リンはこのチビTを拾いあげて日本語で「カワイイ〜」と喜んでいたが、マンダ・リンの体型じゃあ、チビTは着られないんじゃないの? プレゼントをあげるときは相手の体型を考えよう!
 bisの3人はずーっと同じ場所に張り付いていた訳ではなくて、曲によっては場所と担当楽器を入れ替えていた。例えば10曲目に披露した“Monstarr”では、ステージ向かって左からサイ・ファイ・スティーヴン、マンダ・リン、ジョン・ディスコの順で、ジョン・ディスコがキーボードを担当し、マンダ・リンは拡声器を手にして歌っていた。“Monstarr”の演奏が終わるとマンダ・リンが「次の曲はサイ・ファイ・スティーヴンがリード・ヴォーカルよ」とMCし、“This Is Fake D. I. Y.”へ。マンダ・リンがよく喋るのは予想どおりだったが、ライヴではジョン・ディスコが一番よく喋り、盛り上げ役だった。
 ライヴも後半に差し掛かるとアルバム・デビュー前に出していたEPからの曲?が多く、よほどのbisマニアでもない限り、曲を知らないんじゃないかと思われるが、ハイ・ティーン中心のフロアはそんなことお構いなしに盛り上がっていた。だけど、ダイヴやらサーフやら過激な行為に及ぶ者はおらず、あくまでも健康的な盛り上りだった。この健康的な盛り上りに気を良くしたのかジョン・ディスコ、ミネラル・ウォーターのペット・ボトルを観客に手渡し、『差し入れ』をした。
 早いうちに代表曲の“Kandy Pop”を演ってしまったため、どういうふうにライヴを締めるのか心配したが、bisの曲には合唱を誘うフレーズを持つ曲が多く、そんな心配は無用だった。「hi-fi, low-fi, sci-fi's my fi」の合唱の起こった“Dinosaur Germs”で一旦bisの3人は引っ込んだ。
 アンコールでは、1曲目(曲名判らず)ではマンダ・リンがリコーダーを吹いた。続いて“Sweet Shop Avengerz”を演奏し、最後まで盛り上がり続ける観客にサイ・ファイ・スティーヴンとジョン・ディスコの兄弟はミネラル・ウォーターを振りかけ、マンダ・リンは最前列の観客の伸ばす手と何本も握手して、ファンからアニメ・キャラクターもののうちわを受け取り、それでパタパタ仰ぎながらステージを後にした。
 ライヴの感想を言うと、企画・運営に一切教師どもが関わっていない、生徒自身にやりたいようにやらせた高校の学園祭を観ているみたいだった。盛り上がりも健康的で、bisの曲にあるとおり『School Disco』状態で、bisのモットオである『D. I. Y.(do it yourself)』をそのまんま体現したライヴだった。でも、『ティーンエイジャー・バンド』といいながらも、実はメンバー3人のうち2人がもはや20代となっているbis、『Grand Royal』とはあと5枚のレコード契約があるが、5年後も今の芸風で続けるつもりなのか?

【SET LIST】...'97.6.15 心斎橋クラブ・クアトロ
1. Tell It To The Kids
2. School Disco
3. Popstar Kill
4. Everybody Thinks That They're Going To Get Theirs
5. Kandy Pop
6. Poster Parent
7. Team Theme
8. ?
9. Starbright Boy
10. Monstarr
11. This Is Fake D. I. Y.
12. Rebel Soul
13. ?
14. X-Effect
15. ? (←もしかしたら“Cliquesuck”だったかもしれない)
16. ? (←もしかしたら“Wee Love”だったかもしれない)
17. Popyura
18. Dinosaur Germs

(encore)
1. ?
2. Sweet Shop Avengerz

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