今回、リポートするのは7月13日、名古屋クラブ・クアトロであったシルヴァー・サンのライヴの模様である。皆さんは、シルヴァー・サンって御存知でしょうか? 「それって、今にも息を引き取りそうな女性の御老人のことですよね?」「それは『死ぬ婆サン』(シヌ・バーサン)だろ!!!」...こんなジョークを私なんか言いたくなってしまうが、シルヴァー・サンはそんなブラック・ジョークと無縁の爽やかなサーフ・ロックを演る、イギリス出身の4人組の新人。ところで、シルヴァー・サンといえば、リーダーでヴォーカルとギター担当のジェイムズ・ブロード君が黒縁のメガネをかけていることが何かと話題?になっていて、日本のレコード会社がシルヴァー・サンを売り出すに当たって彼らに付けたキャッチ・フレーズが『唄え!グリグリ眼鏡』...。日本独自の編集盤『ユー・アー・ヒア』のオビ・タタキにも『クルクル眼鏡がグリグリROCK!』ってしっかり載ってるよ...。こーゆーふうに『グリグリ眼鏡のジェイムズ君』のキャラクターだけがひとり歩きしている感もなくはないシルヴァー・サンの初来日ツアーの名古屋公演の観客は男女半々。客の入りは半分ぐらいといったところ。観客の年齢層はこないだのbis同様、ハイティーン中心だった。観客のなかにメガネをかけているひとがいつもより多かった感じがしたのは気のせいでしょうか? 私も黒縁メガネをかけ、グリグリ眼鏡野郎のジェイムズ君たちの登場を待っていた。
7時10分頃、フロアの照明が消え、歓声渦巻く場内に突然、日本語の歌が流れ出した。♪トキオ へ イキタイヨ〜 モウ モトニハ モドレナイケド〜 この歌声の主は紛れもなくグリグリ眼鏡のジェイムズ君。ただし、ジェイムズ君がナマで歌っているのではなく、今回のジャパン・ツアーのためにわざわざ録音したテープを流しているみたいだった。この♪トキオ へ イキタイヨ〜 という曲はまだ正式な音源としてリリースされていないようだが、日本だけでも是非リリースしてもらいたいものである。結構笑えたよ、この曲...。この場内に流れていた笑える曲が終わるといよいよシルヴァー・サンの4人が登場。オープニング曲は“Last
Day”。この曲の演奏途中、女のコが風船をステージに2つ投げ入れた。が、ファンの彼女がよかれと思って投げ入れたこの風船はいきなりベースのリチャード・ケイン(通称『リチャード2号』)に蹴り出されていた(笑)。でも、他の観客がバレー・ボールのパスみたいにして、ステージ上から蹴り出された風船を前に送ってくるものだから、ステージ上のグリグリ眼鏡のジェイムズ君の周りにはいつも風船が漂っていた。ライヴの終盤ならともかく、ライヴ開始直後から風船を投げ入れるのは、演奏する側の立場を無視した暴挙と言わざるを得ない。
“There Will Never Be Another
Me”の後、グリグリ眼鏡のジェイムズ君が「コンバンハ、ナゴヤ」と日本語で挨拶。「ゲンキ?」とこれまた日本語で訊いた後、“Dumb”を演奏。シルヴァー・サンの特徴であるビーチ・ボーイズばりのヴォーカル・ハーモニーはライヴでもしっかり再現されていた。グリグリ眼鏡のジェイムズ君の後ろでバック・コーラスを担当していたのは、ドラムのリチャード・サイス(通称『リチャード1号』)とベースの『リチャード2号』(←オマエらは『パーマン』か?)で、3人によるハーモニーがホントに完璧だったかは、ヴォーカルよりも演奏のほうに重きを置いたミキシングだったため、そこまで窺い知ることは出来なかったが...。グリグリ眼鏡のジェイムズ君のリード・ヴォーカルもほぼCDどおりながら、“Wonderful”の高音の続くパートをかなり端折るなど、やはりギターを弾きながら裏声で高音の続くパートを歌い続けるのはキビシいようだ。もうひとりのギタリストのポール・スミスは黙々とギターを弾いていた。
ライヴのほうは、曲が終わる度にほぼ毎回グリグリ眼鏡のジェイムズ君の英語によるMCと曲紹介を挟みながらテンポよく進んでいった。そんなライヴのハイライトは、何と言ってもデビュー・アルバムのオープニングを飾るナンバー“Golden
Skin”が披露された時。サビの部分♪And she's got golden skin, open the
door, and let light in
~が場内大合唱になったのは勿論のこと、グリグリ眼鏡のジェイムズ君が曲のエンディングの♪and
let light in
~を観客に歌わせて終えるなど、エラい盛り上がりだった。観客がエンディングを歌ってくれたことに対し、グリグリ眼鏡のジェイムズ君が「thank
you!」とお礼を言うと、フロアを埋める10代の女のコたちからは『黄色い歓声』が沸き上がった。メガネをかけていることだけで、10代の女のコたちにアイドル扱いされ、『黄色い歓声』に囲まれるジェイムズ君。私、黒縁メガネかけ始めて9年目になるけど、一度もイイ思いしたことないぞ!!! グリグリ眼鏡のジェイムズ君がうらやましい〜!
女のコたちから『黄色い歓声』が起こった“Golden
Skin”の後、“Nobody”を演って一度シルヴァー・サンの4人はステージを去った。勿論これでライヴが終わるのを『黄色い歓声』を送ってた女のコたちが許すわけがなく、アンコールの手拍子が場内に起こる。すると突然、場内にシンセの音が響きわたる。この音は“Julia”のイントロと観客の誰しもが気付き、起こった歓声に出迎えられたシルヴァー・サンの4人は勿論まず“Julia”を演り、“Thickshake”、“Trickle
Down”と披露した後、観客と次々と握手を交してステージを去った。
バックの演奏の音量がデカかったため、彼らのウリのヴォーカル・ハーモニーの繊細さをイマイチ堪能できなかったものの、こないだのbisのライヴ同様、健康的に盛り上がっていたライヴだった。
シルヴァー・サンの爽快なサーフ・ロック、これからの季節にピッタリなので、今年の夏、あなたのCDラックに彼らのアルバムを揃えてみませんか?
【SET LIST】...'97.7.13
名古屋クラブ・クアトロ
1. Last Day
2. There Will Never Be Another Me
3. Dumb
4. Bad Haircut
5. Wonderful
6. Streets Are Paved With Tarmac
7. Far Out
8. Yellow Light
9. Top Trumps
10. Service
11. Lava
12. 17 Times
13. Golden Skin
14. Nobody
(encore)
1. Julia
2. Thickshake
3. Trickle Down