ヒロくんのLIVE REPORT '97 PART 14 FUJI ROCK FESTIVAL '97

 日本初の画期的野外ロック・フェスティヴァルという謳い文句で大々的に宣伝されていた『FUJI ROCK FESTIVAL '97』。会場となったのは山梨県の河口湖から南西に10 km程のところにある天神山スキー場だ。台風9号の影響が心配されたが、開演前は小雨がパラつく程度で、これくらいならライヴを観るのに支障はないな...とひと安心していたが...。

《SOUTHERN CULTURE ON THE SKIDS》
 メイン・ステージの一番手は、アメリカはノース・カロライナ州出身のサザン・カルチャー・オン・ザ・スキッズ(以下、SCOTS)。『落ち目の南部文化』という自虐的バンド名を持つSCOTSは、女性ベーシストを含む3人組。開演時間の11時にSCOTSがステージに登場し、演奏を開始すると、開演を待ち望んでいたキッズが早速大暴れし始めた。あまりの凄まじさに3曲目の“Greenback Fly”の時、演奏を中断してキッズの興奮を抑えなきゃいけないくらいだった。SCOTSはメジャー・デビューこそ'95年だが、インディー時代が長いためほとんどベテランと言ってもいいくらいのキャリアを持つ。ステージに女のコ2人を上げて、観客にフライドチキンをバラまかせたりして、ライヴを上手く盛り上げていた。勿論、演奏のほうもタイトだった。小雨の中でSCOTSを観るハメになったが、彼らのカラッとした音楽はやはり太陽輝く青空の下で聴きたかったなぁ...。

《SUMMERCAMP》
 続いては7月25日、すなわちライヴの前日に日本デビューした新人・サマーキャンプ。彼らが登場した頃から雨が本格的に降り始めた。サマーキャンプはカリフォルニア州出身の4人組で、チープ・トリックに影響を受けた爽快感あふれるロックを演る。演奏はアルバムどおりのものをキチンと披露していたが、芸達者なSCOTSの後ということもあり、彼らの演奏があまりに優等生過ぎて物足りなく感じた。ただし、彼らのストレートなロックに観客は大いに盛り上がっていたが...。

《THIRD EYE BLIND》
 雨が相変わらず降り続くなか登場したサード・アイ・ブラインドもデビュー間もない新人。サンフランシスコ出身の彼らの音楽はどこか醒めた感覚のあるロックで、ライヴでもこの醒めた感覚を出せるか否かで彼らの実力が判断できる。オープニングはスロウな“Thanks A Lot”で、観客のノリが一瞬悪くなったが、次の“Losing A Whole Year”からはいよいよ本領を発揮。ヴォーカルのスティーヴン・ジェイキンスが激しい動きで観客を煽り、“Narcolepsy”をCDよりアップ・テンポで演奏し観客をノせた後、ヒット曲“Semi-Charmed Life”、そして最新シングル“Graduate”で一気にたたみかけたところなどライヴ・バンドとしての実力を感じた。彼らは7曲演奏してステージを去ったが、「もう終わりなの?」と思わせたところは流石さすが『大型新人』といったところだ。

《↑THE HIGH-LOWS↓》
 元・ブルーハーツの2人が新たに組んだバンド、ハイロウズの演奏中またもや観客が盛り上がり過ぎて中断が入った。全部で9曲演奏した後、甲本ヒロトは観客に「最後まで楽しんでいってくれ!」と声をかけた後、スボンを降ろし、チ×ポを見せていった...。

《FOO FIGHTERS》
 元・ニルヴァーナのドラマー、デイヴ・グロールがヴォーカルとギターを担当するバンド、フー・ファイターズがステージ上に登場した頃には会場にはモヤが立ちこめていた。デイヴ・グロールの姿も「ステージに白いロング・スリーヴのTシャツの奴がいる」ぐらいにしか見えなかった。フー・ファイターズの音楽は『明るいニルヴァーナ』といった感じ。あのニルヴァーナの悲劇を乗り越えて頑張るデイヴに観客はとても好意的で、「デイヴ〜」の歓声がかかっていた。相変わらずテンションが高い観客に「このままだと危険だからみんな一歩ずつ下がるように」と観客の身を気づかうデイヴ、“Alone + Easy Target”の演奏中、「ボクノ カサ ドコ?」と日本語で喋ったり、ホントにいいひとだった。ただし、デイヴのヴォーカルは激しいシャウトをするときはCDどおりながら、普通に歌うときは声がかすれ、不安定だった。全部で16曲演ってフー・ファイターズの4人は会場に圧倒的なポジティヴィティーをふりまいてステージを去った。

《RAGE AGAINST THE MACHINE》
 今回が初来日となるレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(以下、RATM)。会場には相変わらずモヤが立ちこめていて、RATMのメンバーの姿はよく見えなかったが、そのうちモヤが晴れてきてステージ上が何とか見えるようになった。メンバーは皆、黒ずくめの服装で、ヴォーカルのザック・デ・ラ・ロチャはまるで拳法の使い手の如くジャープな動きでステージを動き廻っていた。彼らの曲は政治や社会に対する怒りがテーマで、そんな歌詞の内容のせいもあるのだろうか、会場のノリはコンサートのそれよりもデモ集会のそれだった。RATMのステージのハイ・ライトは13曲目に披露された新曲?でスペシャル・ゲストとしてプロディジーの『逆モヒカン男』のキース・フリントとマキシム・リアリティーの2人が乱入したことだろう。27日のトリに決まっているプロディジーの2人は、ザックと激しいヴォーカルの応酬をステージ上で繰り広げていった。

《THE YELLOW MONKEY》
 流石に疲れてイエモンは観なかった。ステージ前では黄色い歓声が沸いていたようだ。

《RED HOT CHILI PEPPERS》
 レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(以下、レッチリ)が例によってメンバー4人全員上半身裸(ベースのフリーは短パンだけ)で登場したころから激しい雨に加えて、風が強くなってきた。レッチリはこれが'92年以来5年振りの3度目の来日。新ギタリスト、デイヴ・ナヴァロを加えての久しぶりのライヴに期待するものはみんな大きく、オープニングの“Suck My Kiss”から過熱するするものだから、前のほうに殺到する観客にヴォーカルのアンソニーが後ろに下がるように指示した。観客が立っているスキー場の芝生の斜面はぬかるんで非常に滑りやすい状態になっていた。ライヴのほうはアンソニーがスパイス・ガールズの“Wannabe”をチョロッと歌ったり、いろいろMCで客を沸かせたりして見せ場を作っていた。もっともそんなギミックが無くても、アンソニーの声量の多いヴォーカルやペキパキいうフリーのベースに象徴されるようにライヴに定評のあるレッチリらしいパフォーマンスは流石だった。が、6曲目の“Backwoods”の後突風が吹き、ステージの一部が破損してしまった。結局レッチリはたった8曲演ってステージを去った。納まりつかない観客がステージ前で騒いでいたが、ステージが破損した以上、これ以上の演奏は無理とのこと。だけど8曲でも観られただけでも良しとせねばなるまい...。
 何故なら2日目の7月27日日曜日は、台風によるステージの破損と、会場の足場の悪さを理由に全てのイヴェントが中止になったからだ。従ってこの日の出演アーティスト...少年ナイフ、ウィーザー、ザ・シーホーセス、BECK、グリーン・デイ、プロディジーら...のコンサートはぜ〜んぶ中止になってしまった...。「腹わた煮えくりかえる思いがする!!!」と吐き捨てる男のコや、「BECK観たかったよお〜」と拭っても拭っても涙があふれて止まらない女のコなどが居たが、私は正直言って中止になってホッとした。もう1日全身ズブ濡れの上、ドロまみれになってライヴを観るのカンベンしてくれヨォ〜!!!
 というわけで、日本初の画期的イヴェントは、日本最悪のとんでもねぇイヴェントになってしまったのだった...。

【SET LIST】...'97.7.26 山梨県鳴沢村・天神山スキー場

《SOUTHERN CULTURE ON THE SKIDS》
1. ? (インスト曲)
2. Daddy Was A Preacher But Mama Was A Go-Go Girl
3. Greenback Fly
4. ?
5. Soul City
6. White Trash
7. Nitty Gritty
8. ? (新曲“Trouble”?)
9. 8 Piece Box
10. New Cooter Boogie
11. ? (新曲“Hero”?)

《SUMMERCAMP》
1. On Her Mind
2. Mountain Size
3. Nowhere Near
4. The Bright Side
5. Pure Juice
6. Keep An Eye On You
7. Should I Walk Away
8. Drawer
9. With Your Blessing

《THIRD EYE BLIND》
1. Thanks A Lot
2. Losing A Whole Year
3. Jumper
4. Narcolepsy
5. Semi-Charmed Life
6. Graduate
7. London

《FOO FIGHTERS》
1. Wind Up
2. Wattershed
3. Hey, Johnny Park!
4. Monkey Wrench
5. Alone + Easy Target
6. Doll
7. See You
8. My Poor Brain
9. For All The Cows
10. Enough Space
11. Big Me
12. Up In Arms
13. Weenie Beenie
14. Everlong
15. This Is A Call
16. I'll Stick Around

《RAGE AGAINST THE MACHINE
1. People Of The Sun
2. Vietnow
3. Bombtrack
4. ? (新曲?)
5. Tire Me
6. ? (←もしかしたら“Darkness”だったかもしれない)
7. Without A Face
8. Know Your Enemy
9. Bulls On Parade
10. Bullet In The Head
11. ? (新曲?)
12. Killing In The Name
13. ? (新曲“Shout Up”? : with Keith Flint & Maxim Reality of PRODIGY)
14. Freedom
15. ? (ending theme ?)

《RED HOT CHILI PEPPERS》
1. Suck My Kiss
2. Aeroplane
3. Wannabe〜Stone Cold Bush
4. Walkabout
5. Power Of Equality
6. Backwoods
7. Blood Sugar Sex Magik
8. Give It Away

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