『サル軍団』ことスーパーグラス、新作『イン・イット・フォー・ザ・マネー』を引っ提げ2年振り2回目の来日~!!! サルに似た3人(3匹?)のキャラクターが親しみを持たれているのか、ティーンを中心に人気を誇っているスーパーグラスは、2年前にアルバム『アイ・シュド・ココ』でデビュー。ヴォーカル兼ギターのギャズが当時若干18歳だったのを始め、ドラムのダニーが20歳、ベースのミッキーが24歳と、弾けんばかりの若さあふれる勢いあるポップ・ロックを披露していた。日本での評価も高く、音楽雑誌の読者人気投票では『MUSIC
LIFE』誌、『CROSSBEAT』誌とも1995年最優秀新人部門の2位だった。ただし、勢いよすぎるあまり、「オマエらふざけてるのかぁ〜」と言いたくなる部分があったのも事実で、あまりにも『お遊びが過ぎる』部分が鼻についたためイマイチ彼らを高く評価できずにいた私。ところがこの春に出た2ndアルバム『イン・イット・フォー・ザ・マネー』では、その『お遊びが過ぎる』部分が無くなり、『真面目に音楽というものと向き合ってみました』と宣言しているかのような作風。若さと勢いにモノを言わせる部分は確かに後退しているものの、音楽的にはデビュー作と比較して数段レヴェルの上がったモノを披露しているこのアルバムに、「これがホントにスーパーグラスのアルバムかぁ?」と、自分のスーパーグラス観の大幅な修正を迫られ、大いに戸惑った私。デビュー・アルバムのリリース後に行われた前回の来日ツアーでは、演奏時間35分!!! アンコールを含めても50分!!!の突風が吹き抜けるかのようなライヴを披露したという『サル3匹』が、新作での音楽的成長をライヴの場でどう主張しているか確かめるべく、9月13日、『晴れ』との予報が出たにもかかわらず豪雨に見舞われた大阪はIMPホールに行ってきた。
ヴォーカル兼ギターのギャズは女のコたちに「サルみたいでカワイイ〜! 飼ってみたいィ〜」と言われていて人気がある。そのためか観客はハイ・ティーンの女のコが中心。こーゆー客層になるのは少し考えれば分かったことだが、何も考えずに今回のチケットを取った私はあまりの客層の低さにビックリ。私より齢を取っているひとは居なかったんじゃないかと思うくらいで、もしかしたら、あのbisのライヴよりも観客の年齢層は低かったかもしれない...。ここまで客層が低いと『居心地悪ィ〜い』を通り越し、完全に開き直って前から5列目ぐらいで観ていた私。
開演時間予定の6時ちょうどにスーパーグラスの3人が登場。女のコたちの声援に迎えられた『サル3匹』、楽器を構えると演奏し出したのは、“I'd
Like To
Know”。デビュー・アルバムのオープニングを飾るイキのいいナンバーに観客は大喜びで、女のコたちはコーラス部分の「ラ〜ララララララ〜」を合唱したりしていた。2曲目は、2ndアルバムのオープニングを飾る“In
It For The Money”。続く“Mansize
Rooster”はCDよりもリズム・チェンジを強調して演奏されていた。曲の前後にギャズが「コニチワ」とか「アリガト!」と日本語MCすると、女のコたちは『サルが喋った』とばかりに歓声をあげた。
樹木希林に似たベースのミッキーは驚異的な裏声でコーラスをつけ、ダニーは一撃一撃に力を込めて叩く激しいドラミングを見せてた。ステージ上向かって左から、ギャズ、ダニー、ミッキーの順に位置しており、これら正式メンバーの3人の他に、ミッキーの後方にギャズの実兄・ロブが居てキーボードをプレイする総勢4人での演奏。ロブは『サル人間』のギャズとホントに兄弟なの?と思うほど、長髪の似合う真面目そうな青年だった。
ほぼ曲が終わるごとにギャズが「アリガト!」と日本語で挨拶を入れながらライヴは進んでいった。観客の反応の良かった曲は“Alright”や“Lose
It”などデビュー・アルバムの曲で、新作からの曲は“Late In The
Day”のようなスローな曲は勿論のこと、アップテンポの“Cheapskate”、“Richard
III”(邦題は“リチャード3世”)といった曲でさえもオーディエンスの反応はデビュー作からの曲に対するそれ以上のものでは無かった。ライヴ本編の最後はやはりデビュー・アルバムからの“Caught
By The
Fuzz”で大いに盛り上がる観客を背に、3人はステージを去った。
アンコールを求める観客の手拍子に応じ、まずギャズひとりが戻ってきて12弦アコースティック・ギターを構えて演奏し始めたのは“It's
Not
Me”。ギャズの独演中にミッキーとロブがステージ上に戻ってきて、ギャズの独演にキーボードの音を被せていた。アンコールの1曲目にアコースティカルなナンバーを持ってきたのは、一撃一撃に渾身の力を込めて叩くドラマーのダニーをより長く休ませる時間稼ぎの意味合いがあったようで、“It's
Not
Me”の演奏終了後、ようやくダニーがステージに戻ってきた。ギャズとミッキーが観客に「are
you ready ?」と呼びかけ、さらに背後にいるダニーに「are you ready
?」とひと声かけてから演奏し出したのはデビュー・アルバムのなかで一番『お遊びが過ぎる』曲“Strange
Ones”。CDでは『お遊びが過ぎる』ように聴こえても、ライヴでは場を盛り上げる効果的な曲に思えるから不思議なものだ。ギャズが盛り上がる観客にミネラル・ウォーターのペット・ボトルを手渡した後、“Lenny”を披露し、この日のライヴは終わった。
前回の来日ツアーでは演奏を35分(アンコールを含め50分)で切り上げ、インタヴューでは「2ndアルバムが出たらもっと演奏が長くなるよ」と言っていた『サル3匹』だが、今回のライヴでは本編が50分で、アンコールを含めても75分...確かに長くなったが...。最新アルバムよりもデビュー・アルバムからの曲を多く演ったことから、彼らが新作で見せた音楽的成長よりも、デビュー当時の勢いを大事にしているのが窺い知れたが、演奏にライヴならではの『プラスα』があまり感じられず、何か物足りなさを感じたのも事実。でも若いわりには演奏はソツ無くこなしてたし、『文部省推薦』的なライヴだった。ただ一点を除いては...10代の女のコが多かったこのライヴで、『人上水泳』をやった極悪非道なヤツがいた...。女のコたち、つぶれたり、顔面にケリが入ったりして可愛想だったぞ!!!
【SET LIST】...'97.9.13
大阪・IMPホール
1. I'd Like To Know
2. In It For The Money
3. Mansize Rooster
4. Time
5. Cheapskate
6. Richard III
7. Late In The Day
8. Alright
9. Condition
10. Odd?
11. Lose It
12. Sun Hits The Sky
13. Going Out
14. Caught By The Fuzz
(encore)
1. It's Not Me
2. Strange Ones
3. Lenny