ヒロくんのLIVE REPORT '97 PART 18 VERUCA SALT

 『爆裂火山娘』ようやく来日〜! ヴェルーカ・ソルト(以下、『べるそる』)、待望の初来日ツアー! 何故『ようやく』とか『待望の』とか言われるのかというと、『べるそる』の『初来日ツアー』は1stアルバム『アメリカン・サイズ』発表後の'95年7月に決定しながら全日程中止。さらに、今回決まった初来日ツアーも当初5月に行われる予定でチケットも発売された後、突然9月に延期に...。このように呪われてるとしか思えない『べるそる』の『初来日ツアー』だが、彼女たちの来日に合わせるかの如く、台風19号が日本に接近。「大雨のため中止になるのでは...」との不安を胸に、そして『5月31日(土)』と書かれたチケットを懐にして、9月15日敬老の日、新宿リキッド・ルームに行ってきた。
 この2月にリリースされた2ndアルバム『エイト・アームズ・トゥ・ホールド・ユー』がここ日本でもそこそこのヒットを記録したせいで、会場はほぼフルハウス状態。開演前のBGMはクィーン。開演予定時間の6時を少し廻った頃、『べるそる』の4人が登場。開口一番「ゲンキィ?」とルイーズ・ポストが日本語MCした後、演奏し出した1曲目はルイーズがヴォーカルを取る“Straight”。2曲目はニナ・ゴードンが歌う“Awesome”で、曲中、会場からの「ニ〜ナ!」との声援に「ナニィ?」と日本語で反応を示したニナ。ドラムのステイシー・ジョーンズは上半身ハダカでタイトなリズムを叩き出し、ベースのスティーヴ・ラックはうじきつよしがヒゲを生やしたようなアヤシい風貌で存在をアピールしていた。が、やはりフロントのギター兼ヴォーカルの2人...ルイーズとニナの存在感にはかなわない。金髪で、黒のパンツに黒のタンクトップ姿のニナは、右腕に『V』、左腕に『S』の文字を入れ墨していた。一方、ダーク・ヘアのルイーズは黒のロング・スリーヴのシャツを着ていて肌を見せず。(ただし、ルイーズは後で大胆に肌を露出することになるが...) 2人とも底のブ厚い靴を履いていた。ライヴはこの2人がほぼ交互にリード・ヴォーカルを取るような曲順で、“Spiderman '79”や“Forsythia”、“Seether”といった1stアルバムの曲を時折交えながら、新作からの曲を中心に進んでいった。観客の盛り上がりは、ニナが日本語で「スゴーイ!」と言う程のモッシュの嵐。観客の「give me watar ~ !」との叫びに応えて、ルイーズがミネナル・ウォーターを客に振り掛けるなど、観る側は熱くなっていた。だけど観客の誰もが待ち望んでいるあの曲がまだ残っている...。
 ステイシーがハイハットで馴染みのリズムを刻む。“Volcano Girls”(邦題は御存知“気まぐれヴォルケーノ・ガール”)のイントロに観客から悲鳴に近い歓声が沸くが、ルイーズとニナの2人はなかなか演奏に入らず、暫くお互い向き合い、ステイシーの刻むハイハットのリズムに合わせて踊りを踊った。こうして30秒くらい踊ったところでようやくニナが「♪leave me lying here ~」と歌い出だすと観客も合わせて歌い出し、盛り上がりは頂点に...。必殺技“Volcano Girls”を繰り出したところでライヴは終わりと思いきや、アルバム『エイト・アームズ〜』の日本盤のみのボーナス・トラック“One More Page Of Incenserity Please”を演奏。この曲の演奏がほぼ終わり、メンバー全員が袖に引っ込んで、ステージの照明が消えてもニナはステージの袖でギターをずーっと弾き続けていた。ステージ上から4人の姿が消えてもギターが鳴り続けているものだから、観客はこれでライヴが終わったのかどうか分からないので、アンコールの手拍子をしていいものやらどうやらで悩んでいた(笑)。暫くするとようやくギターの音も途切れ、観客がアンコール要求の手拍子および足踏みをすると、まずニナが登場。暫くしてルイーズが登場したのだが、何と上半身はブラジャーだけの悩ましい御姿。ウエストが太めのクセにヘソ出しルックのプロモ写真が多いルイーズ、いよいよライヴでもやっちゃいました。私の廻りにいた女のコたちは露骨に「デブのくせにウエスト見せるな!」とか言ってたが、ルイーズは太めだけど、デブじゃないと思う。この2人で“The Morning Sad”を演奏すると、曲の途中でスティーヴとステイシーの男2人も戻ってきて演奏に加わった。曲が終わるとニナはポラロイド・カメラを持ち出し、観客に向かってシャッターを切る。ルイーズはというと...。ブラジャーのなかに予め仕込んであったキャンディなどのお菓子を観客にバラ撒いた。そんなに胸が大きくないはずのルイーズがEカップかFカップのブラをしていたので、何かを詰めているとは思っていたが、まさかそんなものを仕込んでいたとは...。先ほどやたらニナがギターをしつこく鳴らしていたのは、ルイーズがブラジャーにお菓子を仕込むための時間稼ぎのためだろう。この趣向に観客は男性客中心に大いに盛り上がった。
 この後、ルイーズのヴォーカルで“Shutterbug”を演った後、スティーヴ・アルビニ・プロデュースのEP『Blow It Out Your Ass It's Veruca Salt』より2曲“I'm Taking Europe With Me”と“Shimmer Like A Girl”を披露。これらの2曲はニナとルイーズがヴォーカルの掛け合いをするハードな曲で、“Shimmer Like A Girl”の演奏中には、ルイーズが観客の女のコたちを20人位ステージに上げ、その女のコたちを踊らせた。ニナは途中ギターを傍らに置き、女のコたちと一緒に踊った。こうしてこの日のライヴは終わった。
 ライヴの終盤に観客を大いに盛り上げる趣向が用意されていたため、エラく盛り上がったが、『文学少女』から『体育会系ネェチャン』に変身した新作の勢いをそのままもちこんだ骨太な演奏を披露した『べるそる』、そんな趣向無しでも演奏だけでも観客は充分盛り上がったことだろう。個人的には『アメリカ版LUSH』と呼ばれた1stアルバム収録の繊細さのある曲も聴きたかったが、そんな不満も吹き飛ぶくらい楽しいライヴだった。

【SET LIST】...'97.9.15 新宿リキッド・ルーム
1. Straight
2. Awesome
3. Don't Make Me Prove It
4. With David Bowie
5. Spiderman '79
6. Benjamin
7. Forsythia
8. One Last Time
9. Victrola
10. Seether
11. Venus Man Trap
12. Earthcrosser
13. Volcano Girls
14. One More Page Of Insencerity Please

(encore)
1. The Morning Sad
2. Shutterbug
3. I'm Taking Europe With Me
4. Shimmer Like A Girl

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