7月26日、27日に予定されていた『FUJI
ROCK FESTIVAL
'97』が台風9号の直撃を受け、2日目が中止になるなど『悲惨なイヴェント』に終わったことは以前お伝えしたとおりだが、あの場に居合わせた者としての一番の心残りは何といっても中止になった2日目に登場する筈だったアーティストのライヴ・パフォーマンスが観られなかったことである。というわけで8月のウィーザーに続き、『FUJI
ROCK
2日目復讐戦』の第2弾として、11月2日、ザ・シーホーセズのライヴに出掛けることになった。
さて、ザ・シーホーセズといえば、元・ストーン・ローゼズのギタリストのジョン・スクワイアが新たに組んだバンドである。このジョン・スクワイアというひと、運命の定めなのか、ストーン・ローゼズ時代から来日が決まる度にトラブルが起きたりする。ストーン・ローゼズ時代の'95年には、一度来日が決まっていながらジョン・スクワイア本人がスケボーで遊んでいて肩の骨を折ったため来日が延期。そして先のFUJI
ROCK
FESTIVAL2日目中止...と、来日が決まる度にトラブルに見舞われるジョン・スクワイアだが、今回も来日直前になってドラムのアンディ・ワッツが突如脱退。後任のドラマーが決まったとのハナシも一切無く、「会場へ着いたら『ザ・シーホーセズのライヴは中止になりました』との貼り紙でもあるんじゃなかろうか?」と半ば覚悟して、会場の赤坂BLITZに向かうと、心配していたライヴのキャンセルは無かったようで、入場待ちの列がちゃんと出来ていた。
赤坂BLITZのフロアを埋める観客は、ジョン・スクワイアのスタンディング・ポジションであるステージ向かって右側に厚く陣取っていて、4:6くらいで女性のほうが多かった。カリスマ的人気を誇るジョン・スクワイアだけに、この状況には納得いくが。
場内にかかっていた開演前のBGM...カーディガンズの“Carnival”が突如フェイド・アウトし、客電が消えた7時10分頃、まずベースのスチュアート・フレッチャーがステージ上に登場。続いてヴォーカルのクリス・ヘルムとサポート・メンバーのドラマーが現われ、いよいよジョン・スクワイア御大が登場。観客の大声援を受け、演奏し始めたオープニング・ナンバーは“Round
The Universe”。いきなり盛り上がる観客に“Suicide Drive”、“I Want
You To
Know”と彼らの曲の中でもアップ・テンポの曲を続けて披露し、観客の盛り上がりに拍車をかけた後、ヴォーカルのクリスもここでアコースティック・ギターを構え、“The
Boy In The
Picture”を演奏。クリスはCDで聴かれるとおり、それほど歌が上手くないので「ライヴではもっと酷いだろう」と予想していたが、意外に歌えてた。といってもCDで聴かれるレヴェルを維持している程度だが。“Blinded
By The
Sun”の後、ギター交換のついでに黒の革ジャンを脱いで、日本のアニメ(いわゆる『ジャパニメーション』)のキャラクターもの...ナースの柄のTシャツ1枚になり“Love
Me And Leave
Me”を披露したクリスは次に演る曲名を叫ぶだけで、MCは多くなかった。が、無愛想な印象は無く、なんか客前に立つのが嬉しくも恥ずかしい...という感じだった。
そんなクリスの「new song~!」との紹介で新曲を演った後“ Happiness Is
Eggshaped”と“Standing On Your
Head”を披露したザ・シーホーセズ。リーダーのジョン・スクワイアは黒のシャツにジーンズ姿。たまに口元に微笑を浮かべる程度で、目立つこと無く『いちギタリスト』に徹していた。勿論、ファンの声援を一番集めていたのは彼だったが。
ライヴのほうは特別過激な客が出る訳でもなく、女性が多い客層とクリスの朗らかで明るい性格を反映し、健康的な盛り上がりで進んでいったが、一瞬だけ空気が変わった場面があった。“1999”を演った後、観客の外国のかたが英語でクリスに声をかけた。内容は聴き取れなかったのだが、冗談にしては結構キツイことをその外国人客は言ったみたいだった。温和な性格のクリスは「it's
a joke
~!」と言って困惑しながらも、笑顔を見せながら軽く受け流していたが、その外国人客、なおもシツコくクリスにからんでいた。すると、このやり取りを見ていて不快に思ったのだろう、ジョン・スクワイアがステージの端からクリスのそばにやって来て、その外国人客に激しい口調で何か喋った後、左手の中指と人差し指を立てた。中指だけ立てるとおなじみ『fxxk
you
~!』だが、指2本立てるといったいどういう意味になるのだろうか? ここらのやり取りはすべて英語で、私には一切中身は聴き取れなかったのだが、ジョン・スクワイアは著しく機嫌を損ねたようだ。といったように、緊張が走ったことが一瞬あったものの、すぐに元の雰囲気を取り戻してライヴは進んでいき、“Blinded
By The Sun”のシングル収録曲の“Kill Pussycat
Kill”を演奏すると、ザ・シーホーセズの3人とサポート・メンバーのドラマーは一旦ステージを去った。が、フロアを埋めるファンはこれでライヴが終わるのを許す訳が無く、アンコールを要求する手拍子を始めると、暫くしてクリスだけが戻って来て、彼のアコースティック・ギター一本で“Hello”を熱唱した。これでザ・シーホーセズのデビュー・アルバム『ドゥ・イット・ユアセルフ』収録曲全11曲のうち、10曲を演奏したことになった。まだ演っていない1曲こそが今夜最後の曲で、その曲はライヴを締めるにふさわしい曲でもある。ステージ上にメンバー全員戻って来て演奏した曲はやはりあの曲だった...アルバム『ドゥ・イット・ユアセルフ』からの1stシングルで
『POPS '97』のチャートでもランク・インした“Love Is The
Law”。この曲ではアルバム・ヴァージョンで聴かれるように曲の後半にギター・ソロが延々と続いたのだが、予想していたほどしつこくギター・プレイを目立たせることは無く、意外にアッサリとプレイを切り上げたジョン・スクワイア。曲が終わると観客に手を振り、御礼を言ってザ・シーホーセズの皆さんはステージを去り、この日のライヴは終わったのだが、演奏時間は1時間程で、観客の間からは不満の声もチラホラ。だけどアルバムからは全曲演った訳だし、ライヴの最後を“Love
Is The
Law”で締めたいとするジョン・スクワイアの『美学』(音楽哲学)を解ってあげようよォ〜、皆さん。
ライヴを観た後の私のひとこと...クリスが着ていたTシャツの柄の『ジャパニメーション』のナースが、どのアニメのキャラクターだったか思い出せず、エラく悩んだよ、私。
【SET LIST】...'97.11.2 赤坂BLITZ
1. Round The Universe
2. Suicide Drive
3. I Want You To Know
4. The Boy In The Picture
5. Blinded By The Sun
6. Love Me And Leave Me
7. You Can Talk To Me (新曲)
8. Happiness Is Eggshaped
9. Standing On Your Head
10. 1999
11. Kill Pussycat Kill
(encore)
1. Hello
2. Love Is A Law