季節外れのハリケーン、日本に初上陸~! 今年7月に日本先行でデビューしたイギリス出身の新人バンド・ハリケーン#1は元・ライドのギタリストの肩書きを持つ男・アンディ・ベルが新しく組んだバンドである(『はりけーん・しゃーぷ・わん』と読まないように)。ライドといえば『'90年代最初の大型新人』と'90年のデビュー当時騒がれたバンド。4人の親友同士が音楽に目覚めて組んだバンドから発展して、メンバー・チェンジ無しで友人関係もそのままでプロ・デビューにこぎ着けた彼らは、『世界一幸せなバンド』とさえ呼ばれていた。そんなライドがおかしくなってきたのは、アルバム4枚リリースしていく過程でメンバーがどんどんミュージシャンシップに目覚めていってから。当初「4人のメンバーは皆平等だ」と発言してたお友達バンドがいつの間にやらバンド内の主導権争いをするようになり、2人の主要メンバー...アンディ・ベルとマーク・ガードナー...の戦いに敗れたマーク・ガードナーがバンドを去ったことをキッカケに、ライドは解散。主導権争いの覇者・アンディ・ベルの「ライドは最初から僕のバンドだった。マークは僕のバンドに居ただけだ」との発言に「4人のメンバーは皆平等だ」と発言してた昔のアンディはどこにいったんだあ?と悲しくなってしまった私。結局、観たい観たいと思っていたライドのライヴ・パフォーマンスを観ることは出来なくなってしまった。ライドの解散から早1年半、アンディ・ベルが新しいバンドで戻って来たとの報に、喜び勇んでデビュー・アルバム『ハリケーン#1』を買い、聴いてみた感想はというと「オアシスみたい」...。これが他のバンドなら高く評価出来るのかもしれないが、かつて時代をリードしていたバンド・ライドのアンディ・ベルが、まるで時代のトレンドを追っかけているかのようなサウンドに寂しさを感じずには居られなかった。某音楽誌で『(オアシスのマネなんかして)志が低すぎる!!!』と酷評されていたが、この酷評は私の心境を見事に代弁してくれていた。そんな訳で、今回のハリケーン#1の初来日公演も行くかどうか大いに迷った末に「かつて大好きだったライドのアンディ・ベルの姿を一度見ておくのも悪くはないかぁ...」といった思いっきり後ろ向きな動機で観に行った。
11月8日土曜日、名古屋クラブ・クアトロで行われた来日公演初日。5時半頃、クアトロが入ってる名古屋パルコの階段で開場を待ってると、アンディ・ベルらハリケーン#1御一行様がショッピングに出掛けて行った。アンディの愛妻・イーダの姿は見えなかった(笑)。やがて開場になりフロアに入ると、こちらの予想をはるかに上回るほど客が入っていてほぼ満員。観客はごく一部に『波ライド(←ライドの1st『ノーホエア』のジャケット柄)』のTシャツを着た20代半ばの女性客など、私のようなライドを引きずった客も見受けられたが、殆どはライドを聴いたこと無さそうな10代後半〜20代前半のキッズで占められてた。彼らにとってハリケーン#1は『元・ライドのアンディ・ベルの新しいバンド』というよりも『ロック界の暴れん坊・オアシスのリアム・ギャラガーを殴った男・アレックス・ロウが居るカッコいいバンド』なのだろう。ハリケーン#1のもう一人の顔・アレックス・ロウは、父親が失踪したため学業を途中で諦めて働きに出る傍ら、ボクサーとして金を稼いでいた苦労人。確かに、新世代のロック・ファンに解り易いキャラクターの持ち主ではあるが。というふうに、開演前まで、ネガティヴィティーの塊で居た私だったが...。
開演予定時間を過ぎた7時10分頃、BGMが突如、セックス・ピストルズの“Anarchy
In
U.K.”に変わる。曲が終わるとドライアイスの冷気と共に場内に漂ったギター・フレーズは“Step
Into My
World”のイントロ(どうやらこれはテープのようだ)。そしていよいよハリケーン#1の4人が登場。1曲目は“Step
Into My World”かと思いきや、アルバムの出だしを飾る“Just Another
Illusion”。ステージの真ん中に立つアレックス・ロウはギターを弾きながらパワフルなヴォーカルを披露。その右にギターとバック・ヴォーカルのアンディ・ベル、左にはベースのウィル・ペパー、そして奥にはドラムのギャレス・ファーマーが居たが、私の位置からは彼の姿はよく見えなかった。さて、今回のライヴの主役は何といってもアレックス・ロウ。ギター持って飛ぶわ跳ねるわ、意味無く「ぐはははは!!!」と高笑いするわ、典型的な『ロック馬鹿』。その姿はグリーン・デイのビリー・ジョーのようだった(といってもビリーみたいに『尻見せ』はしなかったが)。高笑いする姿はせんだみつおみたいだった(といってもせんだサンみたいに『ナハナハ笑い』はしなかったが)。アレックスが勢いに任せて力技のヴォーカルで押しまくる姿はとてもロック的で、CDでは弱々しい印象があった“Let
Go Of The
Dream”といった曲がライヴではアレックスのヴォーカルで力強く生まれ変わってゆく様は圧巻でさえあった。
次に演奏する曲の紹介をするなど、ライヴを仕切るのはあくまでもアンディ。『ロック馬鹿』のアレックスをやりたい放題させてるアンディは『猿回し師』といったところか。 観客に水を振りかけたり、客席に飛び込んだり、セット・リストを客に投げ入れたり、『馬鹿』をしたい放題やり尽くしていったアレックス。ライヴのほうは2度のアンコールがあり、最後はデビュー・アルバムと同じく“Stand
In
Line”で終わった。キーボード・パートをテープを使って再現していた...とか細かい事、言いっこ無し。アレックス・ロウの『ロック馬鹿』なキャラクターに大いに感銘を受けた。彼、大物になるよ、きっと。
ハリケーン#1を観てようやく『ライドの幻影』から解放された私は、アレックス・ロウに成り代わり、こう宣言する!!!
「ライヴも観ないで、ハリケーン#1を悪く言う奴は、この俺が許しやしねぇ!!!」
【SET LIST】...'97.11.8
名古屋クラブ・クアトロ
1. Just Another Illusion
2. Touchdown
3. Strange Meeting
4. Let Go Of The Dream
5. Mother Superior
6. Chain Reaction
7. ( ? )
8. Monday Afternoon
9. ( ? )
10. Lucky Man
11. Smoke Rings
12. ( ? )
13. Never Mind The Rain
14. Step Into My World
(encore 1)
1. ( ? )
2. Face In A Dream
(encore 2)
1. ( ? )
2. Keep Walking
3. Stand In Line
。翌11月9日、愛知淑徳大学学園祭でジッタリン・ジンのライヴを観てから富山に戻る。