いきなりですが、「サラ・マクラクラン」と4回繰り返して言ってみてください。「さらまくらくらんさらまくらくらんさらまくらくらんさらまくらくらん」...と、このとおり名前が早口言葉になっているサラ・マクラクランだが、セリーヌ・ディオンと並び、現在のカナダを代表する女性シンガーとして、絶大な人気を誇っている。ただし、北米でのハナシだが...。ここ日本では「セリーヌは知ってるけど、『早口言葉のひと』は知らん!」といった受け止めかたが殆どだと思う。でもね、北米ではサラの人気はモノ凄くて、去年、サラが主宰した女性アーティストばかりの祭典『リリス・フェア』は40万人もの動員を記録。日本であれだけ人気のあるカーディガンズもリサ・ローブも、アメリカではサラの前座でしかない。ではどうして日本ではセリーヌと人気でこうも差がついているのか? 演ってる音楽の中身にそんなに大差なく、ルックス的にも互角かそれ以上のだということを考えると...サラとセリーヌの日本での人気の差の原因は所属レコード会社の力の入れ方の違いにあるとしか思えない。ま、とにかくサラは日本での現状からは想像できないほど、本国カナダとアメリカで人気があることだけはアタマに入れておいて下さい。
今回のサラの来日は東京と大阪で1回ずつの公演日程。私が観たのは、大阪・MBS毎日放送にあるギャラクシー・ホールでの2月7日の大阪公演。400席ぐらいのこじんまりした会場だ。整理番号12番の私はステージ真ん前の2列目の席をゲット。『リリス・フェア』とは違い、客の男女比は半々だった。
開演時間の6時、客電の暗転と同時に場内に新作『サーフィシング』のラストを飾るインスト“Last
Dance”が流れ、ステージに現われたサラ・マクラクラン御一行。アコースティック・ギター(以下、アコギ)を構えたサラが演奏し始めた曲は、新作から“Building
A
Mystery”。曲が終わると「ドモアリガトゴザイマス」と日本語で挨拶したサラ、続いてこの日開会式だった長野五輪のハナシに触れた後、「今日は夫と私の1st
anniversaryなのよ」と嬉しそうに話す。ホントに2月7日が結婚記念日なのかは判らないが、会場からはサラとサラの夫に惜しみない声援が「ヒューヒュー」と向けられた。ちなみにサラの夫とは、ドラムのアッシュ・ソードで、文字どおり、サラを常に後ろから見守ってる。そのほか「スシを山ほど食べたい!」などと言ってみたり、このようなサラのトークを挟みながら“Wait”や“Hold
On”といった前作『エクスタシー』からの曲が披露されていった。 バンドはギター2人にベース、キーボード、バック・コーラスの女性に、『旦那』...とサラを含めると7人編成。そのバンドが一度席を外し、サラのキーボードのみの演奏で披露された“Angel”。次はサラがアコギを弾いた“Ice”で、バックの抑えた演奏がよりサラの歌を引き立たせていた。明るく朗らかな“The
Path Of
Thorns”(邦題は“愛のシルエット”)、再びキーボードに戻って“Witness”、“Adia”と曲が続き、ここで披露されたのが“Fear”(邦題は“おそれ”)。だけど1オクターブも下げて歌が始まり、「アレッ!」と思わさせられた。が、キーボードから離れて歌に専念し出すと、CDどおりの驚異的ハイトーンを披露。サラのハイトーン・ヴォイスは透明感にあふれ、彼女の故国・カナダの雄大な自然を想わせる。身振り手ぶりを交え、情感たっぷりに歌うサラはホント素晴しい。
ナマのサラを観て感じたのは「眼が綺麗なひとだな」ということ。情感たっぷりに歌い上げるためサラの眼はいつも潤んでウルウル状態で、彼女の眼を見てたらあまりの美しさに気後れし、「もっと後ろの席で観ときゃよかった」と思ったくらい。私より1つ年上で1月生まれのサラはついに『大台』に到達したが、眼つきだけは少女のようで、笑顔を見せてる時のサラは、眼もとだけは中江有里に似てると思った。
“Elsewhere”(邦題は“どこへでも”)の後、サラが「How many Canadians
?」と場内に声をかけると会場の1/3くらいから「ウォォォ〜」と歓声が上がった。外国のかたが数多く見受けられたのは「母国の国民的人気歌手のサラが来た~!」と応援に多くのカナダ人が駆けつけていたためようだ。ちなみに今回のライヴ、大阪の地元FM局の他に、カナダ大使館までもが後援についていた。大使館が後援のライヴ...このことからもいかにサラがカナダの人たちに愛されてるかお解り戴けるかと思う。そんな母国の人たちの声援に「応援してくれてありがとう」とお礼をし、“Vox”と“Possession”を披露したサラは日本語で「ドモアリガトゴザイマス」と恥ずかしげに挨拶し、ステージを去った。
それまで観客は席に座って観てたが、ここで総立ちになり、アンコールの手拍子。ステージにサラひとりが戻って来て、アコギを構えると、最前列の女性客がサラにユリの花束を手渡した。優雅な仕草でユリの香りを確認した後、ユーモラスな“Ice
Cream”を独奏。ここでバンド・メンバーが戻って来て、メンバー紹介。「my
husband」との一言をしっかり付け加えてドラムのアッシュを紹介したサラに、観客は惜しみない拍手を贈った。ベーシストはブライアン・ミナトという名前で、日系人のようだ。ここでサラが「今、エアプレイ・チャートでヒットしてる曲です」と紹介して始まった“Sweet
Surrender”は曲に合わせて場内から自発的に手拍子が起こった。次に“Fumbling
Towards
Ecstasy”(邦題は“エクスタシー”)を情感たっぷりに歌い上げ、サラは観客に手を振ってステージを去った。だけど観客は再度のアンコールを要求し、再びひとり戻って来たサラ、観客に御礼を述べた後、キーボードを弾きながら“Do
What You Have To
Do”を歌い、曲が終わると「ドモアリガトゴザイマス」と何度も観客に御礼を言ってステージを去った。
アルバム『エクスタシー』中心の選曲で、新作からのファンは肩透かしを喰ったかも知れないが、サラがそれだけこだわるのも解るほどアルバム『エクスタシー』は傑作だ。
『大台』に乗ったとは思えないくらい『カワイイ若奥さん』といった感じ(実際、新妻だけど...)のサラの内面から沸き上がる『人間美』に触れ、私、すっかりメロメロです。
【SET LIST】...'98.2.7
大阪・MBSギャラクシー・ホール
1. Building A Mystery
2. Wait
3. Hold On
4. Good Enough
5. Angel
6. Ice
7. The Path Of Thorns (Terms)
8. Witness
9. Adia
10. Fear
11. Elsewhere
12. Vox
13. Possession
(encore 1)
1. Ice Cream
2. Sweet Surrender
3. Fumbling Towards Ecstasy
(encore 2)
1. Do What You Have To Do