ヒロくんのLIVE REPORT '98 PART 8 GREEN DAY

 悪夢の『FUJI ROCK FESTIVAL '97』2日目中止から半年あまり、グリーン・デイが再びこの日本の地を踏んだ。今回のジャパン・ツアー、当初東京ベイNKホールの1公演のみがアナウンスされていたが、結果的には東京公演が3日分、名古屋公演が2日分、そして大阪公演が2日分追加され、大規模なツアーとなった。『FUJI ROCK 2日目中止』の復讐戦に燃える私が今回観たのは、当初、この日限りの公演だよ!...とされていた3月14日の東京ベイNKホールでのライヴ。東京ベイNKホールはあの有名な東京ディズニーランドの隣にある建物で、日本武道館をふたまわりくらい小さくしたような広さだ。
 4時から開場が始まっていたようだが、取れたチケットが座席指定のスタンド席だったため、4時半くらいに会場に来た私。会場の入り口ではパンク系バンドのライヴでは当り前のボディー・チェックと持ち物検査が行われてて、しかもチェックする係員が日本人ではなく、黒人の大男だったので、予備知識のないひとは相当ビビッたかもしれない(笑)。
 開演予定時間は5時とのことだったが、実際にオープニング・アクトのサマイアムが登場したのは5時15分くらいだったろうか。サマイアムはスキンヘッドの大柄なヴォーカリストを擁する5人組のパンク・バンドで、ヴォーカルの彼は『ステージ・アクション』とは言いはばかれるようなヨタヨタした『ドン臭い動き』を見せ、何度も日本語MCをしたりして愛想をふりまいていた。サマイアムの音楽は結構ポップなんだけど、ただガナってるだけのヴォーカルがせっかくの楽曲の持ち味を殺してると思った。もっとも、それが彼らの狙いなんだろうけど....。サマイアムの皆さんは7〜8曲演奏してステージを去った。
 セット・チェンジが終わり、ステージ上にグリーン・デイの3人が現われたのは6時を少し廻った頃。場内の灯りが消えて、グリーン・デイ登場のBGMが流れ、まずベースのマイクとドラムのトレ・クールが登場。ベースのマイクはいきなり観客にピックをバラ撒いてた。そしてワン・テンポ遅れていよいよヴォーカル兼ギターのビリー・ジョー登場。オープニング・ナンバーはインディー時代の“Going To Pasalacqua”。続く曲は“Welcome To Paradise”。グリーン・デイの代表曲ともいえるこの曲に観客は大いに沸き、私の隣に居た男は「チョ〜、カッコエエ~!!!」と興奮し、私の席の真後ろに陣取っていた女のコたちはサルの鳴き声の如き黄色い歓声を「キィィィーッ!!!」とあげ、♪welcome to paradise ~と合唱していた。スタンド席から下のフロアを見下ろすと、ひとが跳ね飛び、コロコロ転がっていくのがよ〜く見えた(笑)。曲が終わるとビリー・ジョーが「コニチワ」と日本語で一度挨拶。そして次の曲を紹介した。「“Geek Stink Breath”!」。“ギークはパンク・ロッカー”という邦題がついたこの曲を演奏した後、新作『ニムロッド』から“Nice Guys Funish Last”、“Hitchin' A Ride”、“The Grouch”...とアルバムの頭の3曲を順番通りに披露。特にアルバムからのシングル・ヒット曲の“Hitchin' A Ride”ではサビの部分や、♪1,2,1,2,3,4~の部分で観客大合唱。“The Grouch”でも♪fuck you~! の大合唱。ニュー・アルバムからの3曲をプレイした後、ビリー・ジョーがまた、次の曲を紹介した。「“Chump”!」。メジャー・デビュー・アルバムの『ドゥーキー』からの曲に観客は大いに沸いた。そのままアルバム通りの流れで“Longview”を披露し、またもやビリー・ジョーの曲紹介によって始まった“2000 Light Years Away”では、演奏中ビリーがギターを置き、立派な体格をしたセキュリティーたちに守られながら、ステージからゴッタ煮状態のフロアに降り、熱く燃える観客たちにペットボトルの水を振りかけて廻った。だけど、ビリー・ジョーがフロアに降りたせいで、観客の興奮により拍車がかかり、ペットの水を振りかけたくらいじゃ醒めそうもないくらい観客は『熱く』なっていた(笑)。
 ビリー・ジョーがステージに戻り、続いて披露されたのはアルバム『インソムニアック』から“Brain Stew”、そしてこれまたアルバム通りの流れで“Jaded”。次にプレイした“Knowledge”では、またも演奏中にビリー・ジョーがステージ上から姿を消した。「今度はスタンド席に乱入か?」と思ってたら、暫くの間の後、女性通訳を引き連れてステージに戻ったビリー・ジョー、通訳女史にこんなことを言わせたようだ。「オレの代わりにギター弾きたい奴、居るか?」。ここら辺のやりとりは私には一切聞き取れなかったのだが、このビリー・ジョーからの申し出には多くの観客が「オレが! オレが!!!」とばかりに手を挙げた。ホントにオマエらギターが弾けるのか?とツッコミ入れたくなるくらいの数で、多分、彼らの殆どは私同様ビリー・ジョーの申し出の内容が聞き取れなかったにもかかわらず、「何でもいいから手を挙げちゃえ」という安易な発想で手を挙げたものと思われる(笑)。結局ビリー・ジョーが手を挙げた客のなかから、長髪の男性客を御指名。彼をステージに上げ、自分が使ってるギターを手渡し、さらに“Knowledge”の曲で使われているコードを直接手ほどきしたビリー・ジョー。ラッキーな(のかどうかよく分からんが、一応、ラッキーだったということにしておく)この客は無難にギターを弾きこなし?ビリー・ジョーの代役を終えたが、彼がず〜っっっとつっ立ったまま演奏したのが不満だったのだろう、ビリー・ジョーは「こんなふうに飛び跳ねなきゃ」と、彼にステージ・アクションの指導までしてみせていた(笑...でもね、突然グリーン・デイの3人と一緒に同じステージで、プレイしたことないような曲をいきなりギターで弾いてみろ!!!と言われたひとが、ステージ・アクションまで完璧にやっていくほどの精神的余裕を持てるワケないだろ!!!)。この長髪の男性客がステージから降りる際、観客からは大きな拍手が贈られた。
 自分たちと一緒に演奏を楽しんでもらう...という大ファン・サーヴィスを1人のファンのみに施した後、今度は会場を埋める全てのファンにアルバム『ドゥーキー』からの人気ナンバー...“Basket Case”、“She”、そして“F. O. D.”を演奏し、プレゼントしたグリーン・デイ。アルバム『ドゥーキー』からの曲に対する観客の反応はモノ凄くて、特に“Basket Case”では殆どの客が大合唱に加わったのを始め、どの曲も観客大合唱と、モッシングの嵐と『人上水泳』で応えていた。アルバム『ドゥーキー』がいまだに(他のアーティストの)ヘタな新譜よりよほど売れているのもよく解るほどの盛り上がりぶり。曲中ビリー・ジョーと観客との間で『奇声』の掛け合いがあった“Paper Lanterns”の後、グリーン・デイの3人は一度ステージを去った。
 観客からのアンコールの求めに応じステージに戻って来たグリーン・デイの3人。まず新作から“Scattered”を演奏。続いて“Prosthetic Head”を演った後、アルバム『ドゥーキー』からまたもや人気ナンバーの“When I Come Around”を披露。曲のエンディングで突然、トレ・クールがドラムを乱れ打ちし始め、やがてドラムセットに体を預けるようにしてドラムセットごとドラム台から転落!!! 立ち上がったトレ・クールは今度はシンバルやアンプをなぎ倒し始めた。ドラムセット崩しが終わるとトレはステージの前のほうに寄り、足元にミネラル・ウォーターのペットボトルを並べ、「思いっきりペットボトルを踏みつける 」→「ペットボトルが破裂」→「水が観客に飛び散る」...といった乱暴な方法で観客に水をかけた。べースのマイクも乱暴にベースを放り投げると、アンプ類をなぎ倒し、観客に水をかけまくる。このようにトレ・クールとマイクの乱暴者2名が狼藉の限り?を尽くしステージを去っても、暫くビリー・ジョーはステージの袖に隠れてギターをかき鳴らしていた。が、突然、ビリー・ジョーのギターが単なる雑音から耳慣れた旋律に変わった。 “Good Riddance (Time Of Your Life)”だ。トレ・クールとマイクが大暴れした『嵐』の後の静寂...といった感じのビリー・ジョーのギター1本の弾き語りの“Good Riddance (Time Of Your Life)”で、グリーン・デイのライヴは『幕引き』となった。
 ビリー・ジョーはマイクと比べると頭1つ分くらい背が低い小柄な男なのだが、そんなビリー・ジョーが「もっと腕を挙げるように!!!」とか「もっと声を出すように!!!」とか、しきりに観客を煽っていたのがとても印象的だった。そんなに煽らなくても観客は充分盛り上がってるのに、ビリー・ジョーが観客を煽りまくってたのは、より観客と一つになりたいという気持ちの表れだろう。観客と『奇声』の掛け合いをやったのも、観客にギターを弾かせたのも、そして、大ヒット・アルバム『ドゥーキー』からどのアルバムよりも多く曲を披露したのもファンの盛り上がりに心を砕いた結果に違いない。ステージでの動きを見てると、実際の体の大きさ以上に存在感があったビリー・ジョー。そんなビリー・ジョーの気遣いもあって、今回のライヴ、始まりから終わりまで盛り上がりっ放しのライヴだった。今回のライヴ・リポートを見て、やたら『大いに盛り上がってた』とか『観客が飛び跳ねてた』といった表現が何度も登場し、「ホントに観客はず〜っと盛り上がりっ放しだったのか?」という疑問を持つ向きもあるかと思うが、そういう疑問には「ハイ、観客はず〜っと盛り上がりっ放しでした」としかホントに答えようがない。今回、私は座席指定のスタンド席だったため、体を揺らすくらいの動きしかしていなかったのにもかかわらず、汗ばんだくらい。これは会場内、モノ凄い熱気に満ちあふれていて気温が高かったせいで、勿論この熱気の発生源はフロアのスタンディング席でモッシングの嵐を起こしてた観客。スタンド席で『高見の見物』を決め込んでいられたから汗ばむ程度で済んだが、もし、フロアのモッシングの嵐のなかに身を投じていたらあまりの熱さに汗ビッショリになり『動悸・息切れ・めまい』がしてたに違いない!!! いや、グリーン・デイのライヴだから『ドゥーキー・息切れ・めまい』かな?(笑)。

【SET LIST】...'98.3.14 東京ベイNKホール
1. Going To Pasalacqua
2. Welcome To Paradise
3. Geek Stink Breath
4. Nice Guys Finish Last
5. Hitchin' A Ride
6. The Grouch
7. Chump
8. Longview
9. 2000 Light Years Away
10. Brain Stew
11. Jaded
12. Knowledge
13. Basket Case
14. She
15. F. O. D.
16. Paper Lanterns

(encore)
1. Scattered
2. Prosthetic Head
3. When I Come Around
4. Good Riddance (Time Of Your Life)

INDEX