ヒロくんのLIVE REPORT '98 PART 9 DANCE HALL CRASHERS

 東京ベイNKホールで行われるグリーン・デイのライヴのチケットを『×××』さんに譲った私が、そのコンサート当日の3月15日にいったい何をやっていたかというと、 横浜ベイ・ホールで行われたダンス・ホール・クラッシャーズのライヴを観ていた(笑)。「オマエはグリーン・デイをフッてまでしてライヴを観に行くくらいダンス・ホール・クラッシャーズが好きなのか?」と訊かれるかもしれないが、その問いにはこう答えるしかない。「そうです!!!」 いいんだよ、グリーン・デイのライヴは前日の3月14日にちゃんと観たし...。
 さて、私が今、グリーン・デイよりも好きなバンドであるダンス・ホール・クラッシャーズ、バンド名を直訳すると『ダンスホール壊し屋』という意味で、コワモテの野郎どもが狂暴な音を出す激烈パンク・バンドを想像してしまうが、実際は2人の女性ヴォーカリストを看板に立てたポップ・スカ・バンド。彼女たちの音楽を言い表すのに「ゴッキゲンな」という表現をつい使ってしまうが、今の世の中「ゴッキゲンな」という言葉は死語に近く、そんな言葉を使う者はセンスを疑われる。だけどホントにダンス・ホール・クラッシャーズの音楽は「ゴッキゲンな」という表現しか思い浮かばないほどそのものズバリの音楽を演ってるんだな、これが。特に彼女たちの音楽の『ウリ』である、エリーズとカリーナの2人のヴォーカル・ハーモニー...CDを聴くぶんでは完璧としか言いようがないが、ライヴではどうなるのか? この点に大いに興味を抱いた私は、グリーン・デイのコンサート・チケットを1枚手放してまで観たかったんだ、ダンス・ホール・クラッシャーズのライヴを!
 横浜ベイ・ホールは横浜ベイブリッジへと向かう本牧インターチェンジ付近にあり、結構不便な場所にある。広さは心斎橋クラブ・クアトロぐらいだろうか。ステージ向かって右側と、フロア中央にゆったり座ってくつろげるスペースが用意された洒落た会場だ。
 今回のライヴ、オープニング・アクトとして日本のスカ・バンドが2組...POTSHOTとYOUNG PUNCH...がつくことになっていた。午後6時15分頃にステージに現われた4人組のほうがYOUNG PUNCHで、その後現われたホーン隊を擁する7人組(うちゲスト・メンバーが2人)がPOTSHOTと思われる。個人的には後から現われたバンドのほうが、ホーン隊(含、女性メンバー)が居るぶんサウンドに幅があり好感持てた。ただし、両方のバンドとも日本語で歌ってるのか、それとも英語なのか判らんくらいバックの音量が大きかった。
 前座の日本のスカ・バンドが2組演奏を終えた後の7時10分頃、女性ヴォーカリストの2人を除くダンス・ホール・クラッシャーズのメンバー...ギターのジェイソン、ベースのミッキー、ドラムのギャヴィン、そしてサポートのギタリスト(正確なところは判らないが、前作まで正式メンバーとしてクレジットされてたスコットに似てた)が現われた。が、エリーズとカリーナの2人以外のメンバーの認知度は低いようで、私の隣に居た客など、彼らがダンス・ホール・クラッシャーズのメンバーとは気付かず「また前座のバンドかよ!」と勘違いしていた(笑)。この後いよいよバンドの華、エリーズとカリーナが登場。カリーナはピンクのワンピース姿。10代の少女のような服装のボディーの上に久本雅美みたいな『濃い顔』が乗ってるのを見てとっても違和感を感じた。黒のトゥー・ピース姿のエリーズは一部で『ブーデー』と揶揄されてるとおりウエストが太めだったが、アメリカ女にはこれくらいの体形の女は掃いて捨てるほど居る(私は、エリーズは『太め』だけど『ブーデー』ではないと思ってる)。それよりも衝撃的だったのはエリーズの荒れた肌!!! インディー・デビューが'89年だからエリーズの年齢はどう考えても...以下、略(爆笑!!!)。オープニング曲はメジャー・デビュー・アルバム『ロックジョウ(破傷風)』より“Go”。続く曲はインディー時代の曲で、輸入盤で簡単に手に入る初期音源集『The Old Record』に収録の曲“My Problem”。この時点でモッシュ・ピットを埋める観客は大暴れ。ステージ場に駆け上がりダイヴを試みる者が多数出た。このバンドのボケ役のベースのミッキーが日本語でボケをカマした後、「ニュー・アルバムの『ハニー・アイム・ホームリー』聴いてくれた?」とカリーナが観客に訊いた。が、場内の観客、みんな「oh! yeah!」と応えるかと思いきや、イマイチ観客の反応が鈍かったような気がする。私は「oh! yeah!」と答えたケド(笑)。ここでプレイされたのは勿論ニュー・アルバムからの“Mr. Blue”。この曲でも、その次の曲の“Enough”でも、そして“I Want It All”でも、殆どの曲でスキあらばステージに駆け上がってダイヴしようと狙う『バカ者』が多数現われるほどモッシュ・ピットは狂乱状態。バンド...特にカリーナ...はこの狂乱を喜んでいたようで、ステージ上をスカートの中身が見えるほど縦横無尽に跳ね廻り、観客をさらに煽っていたカリーナ。その姿は『マチャミ』そのものだった(笑)。ただしカリーナは裾にフリルの付いたピンクのスカートの中にしっかり黒色の短パンか何かを履いていて、下着そのものズバリは見せなかった。もっともカリーナのパンチラを見たってなんにも感じないけどさ、私は(笑)。彼らのギターとベースのチューニングをやってたローディーの女性...彼女も少なくとも20代後半だろうが、あの『10代少女ピンク・ドレス』を着てもあまり違和感のないくらい普通の顔だちだった。が、カリーナがあの格好すると『違和感が服を着て歩いてる』とまで形容したいくらい、とにかく強烈!!! いっぽうのエリーズといえば、マイク・スタンドを支えにして肉付きの良い体を揺らしながらの熱唱。『動』のカリーナと『静』のエリーズ(ただし余分についた贅肉だけは『動』...笑)...と『2枚看板』のキャラクターの違いがしっかり現われていた。
 観客はずぅぅぅっと盛り上がり放しだったが、カリーナが「みんなが喜ぶようなfastな曲よ!」と曲紹介をしたのに、みんな『fast』と『first』とを取り違え、「そうか、デビュー・アルバムからの曲か、なるほどね」といった感じで構えてしまい、しばらく経ってから解釈の違いに気付いて観客が沸く...といった場面があるなど、バンドとオーディエンスの間に擦れ違いも見受けられた。
 ライヴの驚きといったら、エリーズとカリーナのヴォーカル・ハーモニーがCDどおり完璧だったこと!!! カリーナがあんなにステージ上をチョコマカ動き廻ったりしてるのに、2人のハモリは全く揺らぐことはなかった。仮に揺らぐものがあったとしたらそれはエリーズの体についたムダな肉だろう(←しつこい!!!...笑)。これだけ歌が上手かったらこんな音楽をやらずにウィルソン・フィリップスとかアン・ヴォーグといったヴォーカル・ハーモニーを活かしたポップ・グループをやっても成功してるだろうな、エリーズとカリーナの2人は。だけど敢えて自分の気持ちに正気に、演りたい音楽...つまりはパンクの系統をひくスカ・コア...をやってる2人を観てると、こちらまで何だか嬉しくなってしまう。
 ライヴの終わりあたり...“Elvis & Me”をプレイする前だったと思うが...で、「前回来日した時のハイ・スタンダードとのジョイント・ライヴ観てくれた?」と観客に呼びかけたカリーナ。この問いに観客の1/5くらいが反応を見せたが、ちょうどこの時、ミッキーのベースにトラブルが起こった。カリーナは観客に「There's something wrong with the bass guitar tonight~! hahaha!!!」とアッケラカンとバラさなくてもいいようなことを自慢気に話してた。ミッキーは楽器のトラブルを何とか乗り切り、ライヴのほうは“Don't Wanna Behave”(邦題は“イイ子になんか”)と“Queen For A Day”(邦題は“一日だけのクィーン”)の、アルバム『ロックジョウ(破傷風)』からの2曲を披露して、ダンス・ホール・クラッシャーズの5人とサポート・ギタリストは一度ステージを去った。
 あれだけみんな盛り上がっていたから、普通ならここでアンコールを求める熱心な拍手が起こるハズなのだが、何故か弱々しい拍手しか起こらなかった...。サポート・ギタリストが「オマエら、『DHC、DHC(←勿論、Dance Hall Crashers の頭文字)』って呼びかけろよ!」と促しに来たぐらい。そんなシケた状態でもステージに戻って来てくれたダンス・ホール・クラッシャーズの皆さん。 まず“The Truth About Me”を披露した後、カリーナの「次の曲はホントに今夜のラストの曲。とっておきの曲よ!」といった感じの思わせぶりのMCで始まったのは「今宵、アタシたちはダンスホール壊し屋」と歌う彼女たちのテーマソング“DHC”。曲が終わるとメンバーたちはステージを去り、ライヴは終わったが、ライヴが始まったばかりの時あれだけ衝撃的だったエリーズの肉付きのよさと肌の荒れはすぐに目に慣れたけど、カリーナの10代少女ドレス姿だけは最後の最後まで目に馴染むことはなかった...わはははは(爆笑)。
 今回のライヴの観客、ダンス・ホール・クラッシャーズのファンというよりも、どちらかというと「スカのリズムに合わせて暴れられれば何でもいい!」といったスカ・パンクの音楽ジャンルじたいのファンが多かったようで、観客とバンドの間の意思の疎通という面で問題が無かったわけでもないが、バンドのキャラクターがもっと浸透していけばバンドと観客の双方がもっと息のあったライヴがここ日本でも出来るようになるさ、きっと...。

【SET LIST】...'98.3.15 横浜ベイ・ホール
1. Go
2. My Problem
3. Mr. Blue
4. Enough
5. I Want It All
6. Nuisance
7. Over Again
8. Sticky
9. Good For Nothin'
10. Lost Again
11. Keep On Running
12. Buried Alive
13. Next To You
14. Othello
15. Shelly
16. Elvis & Me
17. Don't Wanna Behave
18. Queen For A Day

(encore)
1. The Truth About Me
2. DHC

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