ヒロくんのLIVE REPORT '98 PART 11 METALLICA

 今現在『世界で一番人気のあるロック・バンド』であるメタリカの5年振り5度目の来日公演を、私は4月29日『みどりの日』に名古屋・レインボーホールで観て来た。私がヘヴィー・メタルのライヴを観るのは実はこれが初めて。ヘヴィー・メタルのライヴというと...バンドの信者ともいえる熱心なファンが大勢居て、みんなヘッド・バンギングしたり、拳振り上げたり、唸りを上げたりして、その輪に加わらぬ者は肩身を狭い思いをするどころか、「何でオマエは俺たちと一緒に盛り上がってくれないんだあ?」と説教される...というイメージが強いため、最初からスタンドのA席のチケットを取ってた。ハッキリ言うとビビってたわけです(笑)。会場のレインボーホールは定員10,000人の大規模ホール。この大ホールがファンで埋め尽くされていた...と書ければ良かったのだが、アリーナ席はともかく、スタンド席は半分しか埋っていなかった。'96年リリースのアルバム『LOAD』と新作『RELOAD』で脱・ヘヴィー・メタルを謀ったメタリカに、ファンの一部から『裏切り者!』とまで言われるほど否定的な意見もあることが動員に影響していたのだろうか?
 開演予定時間の5時を15分くらい廻った頃、客電が落ちる...といった前触れも何もなく、メタリカのメンバー4人が登場し、演奏したオープニング・ナンバーは“So What”。メタリカが演奏し始めても館内の灯りは点いたままで、曲の途中になってようやく灯りが消え、ライヴの始まりらしくなる...という、なんとも締まらないオープニングだった。だけど観客は最初から熱心に声を張り上げたり、拳を振り上げたりいきなり盛り上がる。2曲目は“Master Of Puppets”で、観客みんな「master ! master !」と大合唱。ジェイムズ・ヘットフィールドもそこら辺はわきまえているようで、観客が合唱してくれそうなところはワザと歌わず、観客に歌わせていた。ステージには右端から左端まで全部で5箇所にマイク・スタンドが用意されており、ジェイムズは次々と場所を変えて歌い、多くの観客の目の前で歌うよう心掛け、ステージの端に来た時は、スタンド席に居る客を煽り立てるなど、より多くの観客とコミュニケイトしようとしてた。そのジェイムズに押し出される形?でカーク・ハメットとジェイソン・ニューステッドも次々場所を変えて演奏してた。メンバーの服装は4人とも黒ずくめ。カークとジェイソンは黒のTシャツに黒のパンツ。ジェイムズは黒のトレーナー姿だった。黒のタンクトップに黒の短パン姿でドラムを叩いていた『メタリカの指令塔』ラーズ・ウルリッヒは、曲が終わる度にドラムキットを離れて(多分)水を飲みにステージの袖に引っ込んでいた。時折立ち上がって観客を煽りながら激しくドラムを叩くため休憩が必要なのだろう。そんな間を利用してカークが少しギター・ソロを演った後始まったのが、新作の頭を飾る“Fuel”。この曲はCDよりもテンポアップして披露された。“Fuel”の後、ラーズはタンクトップを脱ぎ、短パン...それも競泳用海パン型...のみになった。ラーズのこの姿を見て、『オレたちひょうきん族』の“フラワーダンシングチーム”や『北野ファンクラブ』の“海パン刑事”を思い出した(笑)。ここで披露されたのは“The Memory Remains”。CDではマリアンヌ・フェイスフルによるコーラス「ら゙ら゙ら゙ら゙〜ら゙ら゙ら゙〜ら゙〜ら゙ら゙ら゙ら゙ら゙〜」がとても印象的な曲だが、ライヴではあのババア(マリアンヌ)の代わりに観客がマリアンヌのコーラス・パートを「ララララ〜ラララ〜ラ〜ラララララ〜」と合唱。次に“Bleeding Me”を披露した後、ステージにはジェイソンのみが残ってベース・ソロを披露。そこへカークも加わり、2人で“My Friend Of Misery”と“Welcome Home”の曲のイントロだけを思わせぶりに演奏し、ファンの歓声を引き出していた。ここでジェイソンとカークの2人は“Nothing Else Matters”のイントロを弾き出す。「またイントロだけだろ」と思ってたら、ジェイムズとラーズも“Nothing Else Matters”の演奏に加わり、最後まで曲をプレイした。
 マシンガン連射のSEとヘリコプター旋回のSEが場内に響き渡ると観客は何が起こるかすぐさま察知し、歓声を上げた。戦場で両手両足・視聴覚・言語器官を失って帰還した男の唄“One”のイントロのギターが入るとこの日観客の歓声が一番大きくなったと思う。この後、デビュー作『キル・エム・オール』から“Seek And Destroy”を披露し、ファンから「捜し出して殺せ!」の合唱を引き出してからメタリカの4人はステージを後にした。
 観客がアンコール要求の手拍子をしている間、ステージ上では椅子が3つとアコースティック・ギター、そして台車の上にセットされた可動式ドラムセットが準備された。ステージに戻って来た4人がまず観客に見せつけたのはアコースティック・セットによる演奏だった。まず新作『RELOAD』より“Low Man's Lyric”。この曲はCDでもそーゆー曲だから違和感は無かった。が、驚いたことに、次に『世界最速のスピード・メタル』と呼ばれた頃の曲“The Four Horseman”と“Motorbreath”の2曲もアコースティックでプレイしたメタリカ!!! 見事にアコースティックで消化しきったアレンジでプレイしたものだから、私の後ろに居た客などはそれと気付かなかったほど。ここでアコースティック・セットを終了し、エレクトリックに戻ったメタリカ、チョコッと“Ronnie”のイントロをプレイした後、2ndからの“Creeping Death”を演ると場内は♪die ! die !~(死ね! 死ね!)と大合唱。“Enter Sandman”で一度ライヴを締めたメタリカ、ステージの前のほうにメンバー全員歩み寄り観客に御礼を述べる。このままライヴは終わってしまうかと思いきや、また思い出したかのように楽器を構えた4人、『最終兵器』として“Battery”をプレイして、会場にヘッド・バンギングの嵐を呼び込んだ後、またまたメンバー4人は観客に御礼を言い、ラーズはドラム・スティックを投げ入れてステージを去った。
 アコースティック・セットまで用意され、もはやメタル・バンドの枠を飛び出したバンドである『新型メタリカ』をしっかりファンに御披露目したライヴでした。

【SET LIST】...'98.4.29 名古屋・レインボーホール
1. So What
2. Master Of Puppets
3. King Nothing
4. Sad But True
5. Fuel
6. The Memory Remains
7. Bleeding Me
8. Nothing Else Matters
9. Until It Sleeps
10. For Whom The Bell Tolls
11. Wherever I May Roam
12. One
13. Seek And Destroy

(encore 1)
1. Low Man's Lyric
2. The Four Horseman
3. Motorbreath
4. Creeping Death
5. Enter Sandman

(encore 2)
1. Battery

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