ヒロくんのLIVE REPORT '98 番外編・その3 SHONEN KNIFE

 『世界で一番有名な日本のバンド』こと、少年ナイフ。私が彼女たちの存在を知ったのは'90年のこと。'91年リリースのメジャー・デビュー・アルバム『712』を聴いて彼女たちのファンになった私だが、これまで彼女たちのライヴを観ようと思いつつも、私が自由にライヴを観に行ける週末に限って札幌や福岡のような富山からはとてもじゃないが行けないようなとこでライヴを演り、東・名・阪のライヴは平日が多いという彼女たちのジャパン・ツアーの日程上の都合により、今まで少年ナイフのライヴは観たことがなかった。さらに言うと、『フジ・ロック』に2年連続出演予定だった少年ナイフ、去年は彼女たちの出番は台風により中止で、今年は私自身がガービッジのライヴ目当てでグリーン・ステージに張り付いていたため、ホワイト・ステージでプレイされた彼女たちのライヴを観ることは出来なかった。オマケに言うと、彼女たちが信州大学松本キャンパス大学祭『銀嶺祭』に来て演奏してくれたのは私が卒業してからだった...。このように観られそうでなかなか縁が無かった少年ナイフのライヴだが、今年リリースのアルバム『Happy Hour』に合わせてのジャパン・ツアーの一環としてうまい具合に9月12日の土曜日に渋谷クラブ・クアトロでライヴが行われることになったため、7年越しの夢を叶えに行ってきた。(ちなみに彼女たちはバンド結成の'82年から今までの17年間、富山で演奏したことは一度も無い)
 会場の渋谷クラブ・クアトロはほぼ満員の入り。客層は30代から5歳くらいの幼稚園児まで(←勿論、保護者同伴。彼女たちの曲“バナナチップス”がTVアニメのテーマ曲として使われてるせいだと思われる)。男女比率は『ヒフティ・ヒフティ』といったところ。在英インド人によるユニット、コーナーショップのアルバム『ボーン・フォー・ザ・セヴンス・タイム』が流れる会場で開演を待っていると、'20代前半とおぼしき男性2人組が「少年ナイフって、齢いくつかな?」と話題にしてたので、私は「もう30代だ」と教えてあげた。するとその2人は「そうか、30代前半、32〜3といったところかな」と納得していた。少年ナイフの音楽を誰よりも愛した故・カート・コバーン(ニルヴァーナ)よりも年齢が上なのを知っていたので私はそのように教えてあげた訳だが(カート・コバーンは'67年生まれ)、ライヴ終了後、私は真実を知ってしまうことになる...。
 7時10分頃、会場にニュー・アルバム『Happy Hour』のオープニングを飾るラップもどきナンバー“Shonen Knife Planet”が流れ、これに合わせて直子さん、美智枝さん、敦子さん...少年ナイフの3人がステージに登場。3人はアルバム『Happy Hour』の内ジャケの写真で着てるのと同じく、メイン・ヴォーカルとギターの直子さんはピンク色、ベースの美智枝さんはグリーン、ドラムの敦子さんはオレンジ色のポップな衣装(通称『星ルック』)を着てた。場内に流れるテープに合わせて観客と直子さんが♪宇宙からのメッセージは、ラヴ、ピース、アンド少年ナァーイフ!!!と盛り上がったところで“Konnichiwa”の演奏に突入。 2曲目は早くも最新シングルの“バナナチップス”。この後、“Flying Jerry Attack”、“Lazybone”と曲が続いた。演奏される曲の歌詞の内容がバナナチップスだったり、ジェリービーンだったり、「会社休んで一日中寝ていたい」というものにもかかわらず観客は多いに盛り上がり、モッシュ・ピットが出来てダイヴ敢行者が多数出た。私はステージ向かって左側カウンター前のフロアの最前列3列目のところ(ベースの美智枝さんの前)にあらかじめ避難して、ダイヴ野郎どもの被害に遭わないようにしてた。ここで直子さんがMCし、「次はベースのみちえさんが唄います」と紹介して始まったのが新作からの“Catch Your Bus”。続いては同じく新作からの“クッキー・デイ”、初期ナイフの名曲で♪水金地火木土ッ天海冥〜というフレーズが印象的な“ロケットにのって”。次の“Ice Cream City”は再び美智枝さんがリード・ヴォーカルをとった。ここでまたもや直子さん主導、美智枝さん補足でMCが入った。 少年ナイフの3人は『フジ・ロック』終了後すぐにアメリカ・ツアー に出て、それから帰って来たばかりとのこと。これが通算19回目の海外ツアーとなるほど海外活動経験とミュージシャン人脈が豊富な彼女たち、このツアー中に『アメリカ大統領』の面々、元・ニルヴァーナで現・スウィート75(←ただし直子さんは「スウィート17」とバンド名を間違えていた)のクリス・ノヴォセリック、そしてラモーンズのメンバーと再会を果たし旧交を暖めたことを話した後、ドラムの敦子さんのヴォーカルでラモーンズのナンバー“Pinhead” をプレイ。この後、“Brown Mushrooms”を歌った直子さん、ここでまたもやMC。「美智枝さんが大好きな食べ物があるんですよ。それはギョーザ」 その横で美智枝さんが「そおなのよ、私、ギョーザ大好き!」と合槌を打った後、「そのギョーザについての唄です」と曲紹介しプレイした曲名はそのまんま“Gyoza”。さらに直子さんから「みんな手拍子入れ下さい」との要請があり、『タンタンタタタ』と一度会場みんなで練習をしてから演奏に入った“Sushi Bar Song”と、少年ナイフ18番の『食べ物ネタ・ソング』を連発。この後、モンキーズの曲“Daydream Believer”、彼女たちの初期の名曲“Twist Barbie”、美智枝さんがヴォーカルのカエル恐怖症の歌“Frogphobia”、少年ナイフ随一のヘヴィ・ナンバー“Antonio Baka Guy”と曲が続き、最後に直子さんが「皆さんはどんな1週間を過ごしてますか? この曲は私の場合の1週間です」とMCした後、♪Monday 今日は相撲観戦〜というトホホな歌い出しで始まる曲“一週間”をプレイして少年ナイフの3人はステージを去った。
 少年ナイフの3人がステージを去ってすぐさま、凄まじいばかりのアンコール要求が起こった。これに応えてステージに戻ってきた3人が楽器を構え、演奏体勢に入るとドラムの敦子さんに観客から「アッちゃんも何か喋ってよ!」との声がかかり、「みんな盛り上がってるかな? イェイ!」と恥ずかしげに喋った敦子さん。アンコール1曲目は直子さん曰く「コワい曲」の“悪魔の館”で、リード・ヴォーカルは美智枝さん。次に “E.S.P.”をプレイして少年ナイフの3人はまたもやステージを去ったが、これでもまだ観客は満足せず、場内に少年ナイフ・コールがこだました。この声にステージに呼び戻された3人、「それでは初期ナイフの曲から」と直子さんが言ってからプレイしたのは“Bear Up Bison”。ここまで、少年ナイフの初期にあった曲名からしてトホホな曲...例えば“象のパオパオ”や“人喰いパパイヤ”、“チョコバー食べたいョの唄”とか“亀の子束子のテーマ”といった曲...はあまり披露されていなかった。「日本を代表するロック・バンドなんだから、そーゆー情けない曲を演らないで!」と思っていたが、それらの曲が無いと綺麗にまとまり過ぎ、かしこまり過ぎのような気がして何か物足りなく感じたのも事実。そう思ったのは私だけではなかったようで、場内から「“カッパエキス”演ってェ〜!」と声がかかった。このリクエストに応え、♪カッパのエキスだ チュチュッチューッ!!!...と“カッパエキス”を演奏。これを聴いて情けない気がすると同時にミョーな安心感が心の中に拡がるのを感じた私。“カッパエキス”を披露して3人は三たびステージを去ったが、熱狂した観客はもう一度少年ナイフの3人をステージに呼び戻した。3人は演奏の代わりにラインダンスを披露してステージを後にした。こうして『楽しみ』があふれる、まさに『少年ナイフのWonder World』といえるライヴは終わった。私は危険ゾーンを避けたところに居たからそれほど汗をかかなかったが、Tシャツが搾れるほど汗グッショリになったキッズが山ほど居た(ちなみに、音楽雑誌『CROSSBEAT』編集長・大谷英之氏にソックリなかたが私のすぐ脇のカウンター席に居た。よほど「大谷さんですか?」と声をかけてみようかと思った...笑)。このように大いに盛り上がった今回のライヴ、今まで観たどのライヴよりも楽しかったかもしれない。永年(7年)待ってた甲斐があったよ!
 ところで、会場でステッカーやポスター、CDと一緒に売られていたのが少年ナイフの本『少年ナイフランド』。この本、一般書店でも扱っているハズだが、少なくとも私は書店の店頭で見かけたことが無いので、この機会に購入した。この本によって、今まで謎だった少年ナイフのメンバーの齢が判ってしまったのだ...。勿論、女性だから正確な生年月日はこの本でも明らかにしていないのだが、この少年ナイフの本に載っている、直子さんが中学1年生の時に友達と描いた『ジゲル』というSF漫画の中で、当時13歳の直子さんが「2001年...私は41歳になる」と書いているではないか!!! ということは直子さんは今年38歳ですか...。勿論、年齢なんてもんは数字以外の何物でもないので、私が彼女たちの音楽を聴く上で何らかの妨げになることは絶対無いと断言できるが、ただ、海外のファンのなかには少年ナイフの曲の歌詞を見て「彼女たちってまだ10代なのかな?」と幻想を抱いている者も多いので、「なんだかなあ〜」と苦笑いを禁じ得ないのだ、私は。でも、海外で先に人気に火が点き、日本での人気がそれを後追いしたり、メジャー・デビュー前に海外アーティストによるトリビュート・アルバムがリリースされたり、ニルヴァーナに前座に指名されて4万も5万も入るスタジアムでライヴ演ったり、それまでの日本のバンドの常識をことごとく撃ち砕く『型破り』を続けて来た少年ナイフ、40歳になっても50歳になっても年齢に関係無くこのまま『型破り』を続けていって欲しいと思うんだよなぁ〜。

【SET LIST】...'98.9.12 渋谷クラブ・クアトロ
. (openning SE...“Shonen Knife Planet”)
1. Konnichiwa
2. バナナチップス
3. Flying Jerry Attack
4. Lazybone
5. Catch Your Bus
6. クッキー・デイ
7. ロケットにのって
8. Ice Cream City
9. Pinhead (ラモーンズのカヴァー)
10. Brown Mushrooms
11. Gyoza
12. Sushi Bar Song
13. Daydream Believer (モンキーズのカヴァー)
14. Twist Barbie
15. Frogphobia
16. Antonio Baka Guy
17. 一週間

(encore 1)
1. 悪魔の館
2. E.S.P.

(encore 2)
1. Bear Up Bison
2. カッパエキス

(注意) 彼女たちの歌は日本語ヴァージョンと英語ヴァージョンの2種類あることが多い。従って原則として、日本語で歌われた場合は日本語で、英語で歌われた場合は英語で、それぞれ曲名表記した。

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