ヒロくんのLIVE REPORT '98 PART 19 VAN HALEN

 ヴァン・ヘイレン(以下、VH)の2代目ヴォーカリストのサミー・ヘイガーが突然バンドをクビになり、その後釜に元・エクストリームのゲイリー・シェローンが加入することが決まった時の世間の拒絶反応は凄かった。すでにエクストリーム時代から『ヘタクソ』とか『欠陥部品』と呼ばれ、酷い扱いを受けていたゲイリーの加入に「天下のVHがそんなヤツ入れてどおする!!!」と非難中傷の雨あられ。ところが今年の春、ゲイリー加入後初のアルバム(通算13枚目)の『ヴァン・ヘイレン。』がリリースされたところ、ゲイリーの歌がバンドにあまりにもフィットしてるので、ゲイリーに対する誹謗中傷の声は小さくなってしまった。 そんなわけで、批判を実力で封じ込めたゲイリーを『表敬訪問』しに10月24日、新生VHの3年ぶり5度目の来日公演のあった名古屋レインボーホールへ行ってきた。
 6時40分過ぎ、会場の客電が落ち、ほぼ満員の観客の大歓声に迎えられステージに姿を現したVHの4人。エディ・ヴァン・ヘイレンがギュィィィ〜ンンン!!!とギターを鳴らして始まった1曲目は4thアルバム『戒厳令』より“Unchained”。いつの間にか金髪に染めていたゲイリーは黒のジャケット姿。2曲目は新作からのヒット曲の“Without You”。新加入のゲイリーと他のメンバーの仲はうまくいってるようで、ステージ上でゲイリー、エディ、そしてマイケル・アンソニーは楽しそうにじゃれ合い、曲の終わりには3人揃って♪life is very short, and there's no time~と、ビートルズの“We Can Work It Out”(邦題は“恋を抱きしめよう”)のフレーズを綺麗にハモり、曲を締めた。次も新作から“One I Want”を披露。この後、ゲイリーが「コンバンワ、ナゴヤ!」と日本語MCし、“Mean Street”をプレイ。エクストリーム時代から『クネるシアトリカル(演劇的)ヴォーカリスト』と呼ばれていたゲイリー、ドラム台から飛び跳ねたり、クルクル廻ったり、床に寝そべったり、マイク・スタンドをクルクル廻したり放り投げたり、マラカスを振ったり...と踊る踊る、クネるクネる。『シアトリカル』というだけあって、ゲイリーは激しい動きの合間に芝居がかったポーズを決めて暫く静止してみせたりもしてた。彼のステージ・アクションについて、クィーンの故・フレディ・マーキュリーみたいだ...とか、欽ちゃんがロック・ミュージシャンになったみたい...と評する声があったが、実際にゲイリーの動きを観て、そう呼ばれるのがよく解った(笑)。激しい動きをするためかゲイリーは4曲目にしてジャケットを脱ぎ、客席に投げ入れるフリをした(笑)。5曲目はサミー時代の名曲“When It's Love”で、PAの調子が悪く、演奏中断しアタマから演奏し直すトラブルもあった。
 「ゲンキデスカ?」...ゲイリーの日本語MCに観客が「yeah !」と応え、始まった“Why Can't This Be Love”。1コーラス目はゲイリーが歌ったが、2コーラス目はエディとマイケルがヴォーカルを分け合い、サビの部分は観客大合唱。次に3rdアルバム『暗黒の掟』より“Romeo Delight”をプレイした後、アレックス・ヴァン・ヘイレンのドラム・ソロがあり、残りの3人はステージを去った。黒のTシャツと短パンにハチマキ姿のアレックスが華麗な技の数々を見せつけたドラム・ソロの後、ステージに戻って来たエディは上半身裸。前回の来日の時には『角刈りにヒゲ面』でファンを驚かせたエディだが、今は昔のように長髪で、若々しい。 サミーが歌っていたのと同じ高音をゲイリーが無事に歌いきった“Dreams”の後、プレイされたのは映画『TWISTER』のサントラ盤よりサミーのVHでの最後の仕事“Humans Being”。サミーはVHのライヴでこの曲を一度も歌うことは無かったが、ゲイリーがしっかり代役をこなしてた。曲が終わるとマイケルが観客を次々に煽る。『歌えるベーシスト』マイケルのヴォーカルで“Somebody Got Me A Doctor”を短めに披露した後、ニュー・アルバムから“Year To The Day”をプレイ。曲の途中でエディ以外のメンバーはステージを降り、エディのギター・ソロ・タイムに突入。ギターの歴史を変えたスーパー・ギタリスト扱いされるエディだが、私はギターを演らないので、エディのプレイの凄さがサッパリ解らず退屈だった。アレックス、マイケル、そしてギター・ソロの間にTシャツに着替えたゲイリーがステージに現われ、再び“Year To The Day”の演奏に戻った。この後、曲のエンディングでアレックスがドラを10数発鳴らした“Right Now”、デビュー・アルバムから“Ain't Talkin' 'Bout Love”(邦題は“叶わぬ賭け”)をプレイ。ゲイリーが名古屋の観客に御礼を言い、VHの4人はステージを去った。
 アンコールの手拍子を受け、ゲイリーとアコースティック・ギターを携えたエディがステージに現われ、2人並んで台に腰掛け披露したのは、新作から“Josephina”。クィーンを思わせる美しい曲だ。この後、リズム隊の2人も戻って来て、エディもギターをエレキに持ち替え、アルバム『1984』から“Panama”を披露。この後、ゲイリー、マイケル、エディが指を1本立て「もう1曲聴きたいか?」のサイン。ゲイリーが「名古屋、もう1曲聴きたいか!?」と観客に尋ね、大歓声を受けて披露したのはヨーロッパの“The Final Countdown”と並ぶほど有名なキーボード・リフを持つ曲“Jump”(もっともこの日のライヴのシンセは全てシークェンサーによる自動演奏のようだが)。VHの最大のヒット曲に観客は大いに沸き、ゲイリーはTシャツの裾を胸までまくり上げ、飛び跳ね踊りまくっていた。こうして必殺技“Jump”をもって、2時間余りに亙るライヴは終わった。
 今回のライヴ、最も心配されたゲイリーのヴォーカルはまったく問題無し。初代ヴォーカリスト、デイヴ・リー・ロス時代の曲を歌うとちゃんとデイヴのように聴こえ、サミー・ヘイガー時代の曲を歌うとサミーそのものに聴こえるゲイリーの歌に、違和感を抱いたファンは殆ど居なかったハズ。そして『シアトリカル・ヴォーカリスト』の本領発揮のゲイリーの観て飽きがこないステージ・パフォーマンス。会場には車椅子で来られたファンが多数居たが、彼らも今回のライヴ、大いに楽しめたに違いないと私は信じる。

【SET LIST】...'98.10.24 名古屋レインボーホール
1. Unchained
2. Without You
3. One I Want
4. Mean Street (←たぶん?)
5. When It's Love
6. Fire In The Hole
7. Why Can't This Be Love
8. Romeo Delight
9. (Alex Van Halen's drum solo)
10. Dreams
11. Humans Being
12. Somebody Got Me A Doctor
13. Year To The Day ~ (Edward Van Halen's guitar solo) ~ Year To The Day
14. Right Now
15. Ain't Talkin' 'Bout Love

(encore)
1. Josephina
2. Panama
3. Jump

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