『白塗りのオバケ』といえば、日本には鈴木その子(爆笑!)、アメリカにはマリリン・マンソン!!! ということで...ヒロくんのLIVE REPORT 新春SPECIAL!!!

ヒロくんのLIVE REPORT '99 PART 1 MARILYN MANSON

 『白塗りのオバケ』マリリン・マンソン(以下、マリマン)の襲来と同時に『雪地獄』に見舞われた日本列島。雪に行く手を阻まれつつも何とか1月9日土曜日午後4時前にJR京葉線舞浜駅に降り立った私。舞浜駅にはマリマンのコスプレをしたファンが居たりしたが、あまりそれに違和感を覚えなかったのはここが『悪の牙城・千葉のねずみ園』(← 西原理恵子...笑)の最寄駅だからだろうか? 会場の東京ベイNKホールに入ると、午後5時開演という早過ぎる開演時間が災いしてか、観客はまばら。『本日器材トラブルのため、開演が遅れます』というアナウンスが繰り返されてたが、実は客足が揃うまでの時間稼ぎだったりして(笑)。ということで、ショウが始まったのは観客が揃った5時45分頃だった。
 暗転した場内に不気味なBGMが流れ、ステージに用意されたスクリーンにマンソン氏のシルエットが浮かび上がる。背中に羽根を着けているので『デビルマン』か『千手観音』のようだった(笑)。この影を見て、観客が悲鳴のような歓声を上げるなか、演奏が始まると同時にスクリーンが落ち、マリマン御一行が姿を現わした。オープニング曲は前作『アンチクライスト・スーパースター』より“The Reflecting God”。黒い羽根を生やした『暗黒の天使』の降臨...だったが、曲の半ばで早くも黒い羽根を取ってしまったマンソン氏。2曲目は新作『メカニカル・アニマルズ』の頭を飾る“Great White Big World”。マンソン氏は黒を基調にした衣装を着ていたわけだが、この衣装、何故かお尻の部分だけくり抜かれておりケツが丸見え。3曲目の“Cake And Sodomy”の演奏中、この丸見えのお尻を観客に突き出す...というお下劣な仕草を見せたマンソン氏(笑)。ドラムのジンジャー・フィッシュは別にして、スカートを穿いたベースのトゥイギー・ラミネズはステージ上を所狭しと動き廻り、キーボードのマドンナ・ウェイン・ゲイシー(愛称『ポーゴ』)は必要以上に不気味に頭を振り、時にはポータブルのキーボードを持ち出してステージ上を動き廻り、『不気味な音楽集団』としてのマリマンをしっかりアピール。新加入のギターのジョン5 は『新入り』だから遠慮がちなのかアクションが少なかったが...。次に披露された新作からの“Posthuman”がアルバムのヴァージョンと違う感じで演奏されたためだけではないだろうが(女性コーラスの♪hey! hey! hey!〜が無かったら“Posthuman”だと気付かなかったな...多分)、ここまで、立見のアリーナ席はともかく、私の居たスタンド席ではイマイチ盛り上がりに欠け、イスに座ったままの客も多く見受けられたのだが...。
 5曲目にプレイされた“Mechanical Animals”でマンソン氏は両足に長〜い義足を装着し、両手には長〜い杖を持ち、頭には銀色のヘルメットを被り、文字どおり『メカニカル・アニマル』となってステージに現われた! このマンソン氏の姿にいままでノリきれていなかったファンも大いに沸き、会場が一気に熱くなった。竹馬をやっている状態に近いながらも、マンソン氏、ノシノシとステージ上を右へ左へ自由自在に動き廻っていた。よほど練習したんだろう(笑)。その姿はカニかクモのようだった。両手がふさがっているため、マンソン氏はヘッドセットを着けて歌っていたようだ。残念ながら『メカニカル・アニマル』姿はこの1曲だけで見納めで、次の“Sweet Dreams”ではまた別の衣装に変身!(ただし、ステージ上に灯りが無いに等しい状況だったためどーゆー服装かは判らなかった) ギターの演奏だけをバックに歌われた1stヴァースでは場内ギターの音色に合わせて手拍子が始まり、バンド演奏が加わった2ndヴァースからは一部ファンの合唱が起こっていた。ユーリズミックスの'83年の全米No.1ソングのカヴァーであるこの曲、今やマリマンの持ち歌として完全に定着しているようだ。続く“The Speed Of Pain”ではマンソン氏の衣装はトレンチコートにシルクハット。この曲からマリマンの5人の他に、バック・コーラス兼任の女性ダンサーが1人、ステージ向かって右端にある『お立ち台』に現われた。金色のキラキラのワンピースを着たこの女性ダンサー、次の“Rock Is Dead”では激しく腰を振るだけの踊りを披露(笑)。この時のマンソン氏の衣装はピンクのキラキラのハイレグのレオタードで、背中に赤い羽根を着けていた。“Rock Is Dead”が終わると赤い羽根を外したマンソン氏。“The Dope Show”を披露した後、英語でいろいろと観客に語りかけた。が、その内容は私が聴き取れた部分が「my big dick!」だったことから判るとおりお下劣極まりない『下ネタ』(笑)。次にデビュー・アルバムから“Lunchbox”。新作で'70年代のデイヴィッド・ボウイそっくりのヴォーカルを披露して、ファンをアッと言わせ、それまでマリマンに全く興味を示さなかったロック・ファン(←私もだ)を多くひきつけたマンソン氏だが、こうしてインダストリアル全開のデビュー作の曲を聴くとマンソン氏のヴォーカルはトレント・レズナー(ナイン・インチ・ネイルズ)のようにも聴こえる。
 「Japanese people love tonight〜!」と言った後、自分の股間をクネクネいじくり廻した(笑)マンソン氏が次にプレイしたのは“User Friendly”。この曲では例の女性ダンサー、ステージ中央に降りてきて、大きく開いた股を観客に突き出すような形で激しく腰を振る踊りを披露(笑)。ステージ上にはいつの間にか小児科医の診察台ほどの大きさのベッドが用意されており、その上で女性ダンサーと2人でお互いを愛撫し合い、カラミまくっていたマンソン氏。曲が終わると場内とステージが完全に真っ暗になったなか、マンソン氏の「アア〜ン!」という喘ぎ声のみがこだましていて、あまりにもワザとらしい喘ぎ声に場内のあちこちから笑いが起こった(笑)。
 日本人は皆、仏教徒だと思ってるのか「仏教徒たちよ、ヤクやってるか? LSDやってるか? いいファックしてるか?」とMCしたマンソン氏。観客はみんな「yeah!」と応えてた(←オイオイ、いいのか?...笑)。ここで披露された“I Don't Like The Drugs (But The Drugs Like Me)”では『DRUG』の文字の巨大ネオンサインがステージに登場。今回のジャパン・ツアー、全米ツアーで使っている大がかりなセットをかなり持ってきているようだ。“I Don't Like The Drugs”では例の女性ダンサーがバック・ヴォーカルで大活躍。腰を振る踊りしか能の無いネエチャン...かと思ってたら、ヴォーカリストとしてもそこらのJ-POPアーティストよりよっぽど歌が上手かった。ここらへんに『ショー・ビジネス大国』アメリカの底力を感じ取った私。ハイレグのレオタードが股間に喰い込んでいるので、お尻が丸見えのマンソン氏。時折この丸見えのお尻を観客に突き出して見せびらかしていたが、マンソン氏がこうする度に歓声を上げて喜ぶ観客(笑)。この後、マリマンがプレイしたのはパティ・スミスのカヴァー曲“Rock 'N' Roll Nigger”。この曲ではギターを構えていたマンソン氏、曲の終わりにギターを床に叩きつけてステージを去った。トゥイギーやポーゴ、ジョン5とジンジャー・フィッシュの4人は激しく演奏し、最後を締めっていった。特にジンジャー・フィッシュのドラム乱れ打ちは圧巻!!!
 ステージ上の灯りが消え、マリマン御一行様が一度ステージを去った後、場内にはアンコール要求の手拍子が起こった。この間にステージ上では密かにセット・チェンジが行われており、ステージに再び灯りがともった時にそこにあったのは、まるでナチスの演説台のようなセットだった!!! 演説台とバックドロップ(後幕)には、ナチスの『ハーケンクロイツ(鈎十字)』のマークの代わりに『アンチクライスト・スーパースター』のマーク(←『落雷矢印』マーク...『アンチクライスト・スーパースター』のCDの盤面に刻まれている)があしらわれており、軍服にネクタイ姿のマンソン氏はまるでヒトラーのように拳を振りかざす。クィーンの“We Will Rock You”と同じ♪ドン、ドン、チャ...のリズムに合わせ、観客も拳を振り上げ、「hey! hey! hey!」と声を張り上げる。曲は勿論“Antichrist Superstar”だ。曲の半ばには聖書を取り出し、ページを次々と破り取って客席に投げ捨てていたマンソン氏、曲の終わりには上着を脱ぎ捨て上半身裸になっていた。この1曲だけでまたステージを後にしたマリマン御一行、観客のアンコールの手拍子にすぐさま応えて再びステージに戻ってきた。2回目のアンコールで披露されたのは“The Beautiful People”。マリマンの代表曲に場内は大いに盛り上がった。これが終わると再びバンドはステージを去り、そしてアッケなくライヴの終了を告げる客電が灯いてしまった....。全部で15曲、1時間15分でライヴ終了...。あまりにも短すぎる...。
 よく「腹8分目くらいで、もうちょっと聴きたい...と観客に思わせるのが良いライヴ」と言われることがあるが、今回のライヴに関して言えば「腹6分目くらいで、まだまだ聴き足りない」としか感じられなかった。そういう意味でいうと去年のオアシス in 武道館に近い。ま、『竹馬』やったり(笑)、ドラムのジンジャー・フィッシュなんかアルバムではドラムマシン使っているようなところをほとんど生ドラムでプレイしたりして、体力使う疲れるライヴであることは解らんでもないけどサァ...。個人的には、新作『メカニカル・アニマルズ』のなかで私の一番のお気に入りの“Coma White”や、前作『アンチクライスト・スーパースター』収録でトゥイギーのベース・リフが主役の“Tourniquet”や“Munite Of Decay”なんかも聴きたかったんだけどネェ...。アメリカでは、キリスト教団体から『社会に害毒を流している』と目の仇にされ、排斥運動が起こっている『反キリスト・スーパースター』の一端には触れられたような気はするが、「全貌を見た!!!」とまでは言い切れないライヴ...ということにしておきますか...。

【SET LIST】...'99.1.9 東京ベイNKホール
1. The Reflecting God
2. Great Big White World
3. Cake And Sodomy
4. Posthuman
5. Mechanical Animals
6. Sweet Dreams (Are Made Of This)
7. The Speed Of Pain
8. Rock Is Dead
9. The Dope Show
10. Lunchbox
11. User Friendly
12. I Don't Like The Drugs (But The Drugs Like Me)
13. Rock 'N' Roll Nigger

(encore 1)
1. Antichrist Superstar

(encore 2)
1. The Beautiful People

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