『メロコアの大御所』と呼ばれるバッド・レリジョンの3度目となるジャパン・ツアーは昨年5月リリースされた10枚目となるニュー・アルバム『ノウ・サブスタンス』に伴うものである。このうち4月17日土曜日に川崎・クラブチッタで行われたライヴを観てきた。
バッド・レリジョンは、結成が1980年で、今年で活動歴丸19年!!! 『メロコア』と呼ばれる音楽スタイルを確立した大物である。『メロコア』...すなわち『メロディック・ハードコア』とは、その名のとおり耳に馴染み易いメロディーを持つハードコア・パンクのこと。従って、『メロコアの大御所』と呼ばれるバッド・レリジョンは世間的には『パンク・バンド』と思われていて、実際、会場には髪の毛を逆立てた兄チャンや、刺青入れた兄チャンの姿も多々見受けられたが、私はバッド・レリジョンの音楽を『パンク』としてではなく、『もの悲しいメロディーを持つ素晴しい曲を演るバンド』として捉えている。バッド・レリジョンの曲は、うらぶれた寂し気なメロディーが魅力。『男の哀愁』を感じさせる彼らの曲は、長渕剛の曲を3倍の速さで演奏したようで、私は勝手にバッド・レリジョンのことを『速い長渕剛』と呼んでいる(笑)。今回の来日公演、私自身いろいろ多忙を極めてるので『見送ろう』と思っていたのだが、やはりバッド・レリジョンを一度観ておきたい...ということでライヴの1週間前にチケットを購入した。そしたら、客が1000人入る川崎・クラブチッタで私のチケットの整理番号は595番。チケットが相当売れ残ってるみたいで寂しい客の入りを想像していたら、会場はほぼ満員だった。開演時間の6時ちょうどから、前座の日本のバンド、THE
NERVELANDが登場し、5曲演奏。この後、10年以上も活動している日本のパンク・バンド、ラフィン・ノーズが登場して12曲ばかり演奏していった。セット・チェンジが済み、準備が整った8時20分頃、突然ステージ奥に『BAD
RELIGION』のロゴが入ったバック・ドロップ(後幕)がスルスル降りてきて、観客が沸いたところでステージ上にバッド・レリジョンの5人が登場。オープニング曲は(彼らにしては)ミドル・テンポの曲“Against
The
Grain”。この曲は軽い『ウォーム・アップ』だったのだろう。続く“Hear
It”でいよいよエンジン全開。これに合わせて会場に詰めかけたパンクスどもが大暴れし始めた(笑)。髪の毛が相当アブナイ状態になっているヴォーカルのグレッグ・グラフィンを初めて見た印象は『まるで松村邦洋みたい』...。こう書くとグレッグ・グラフィンはデブと思われるかもしれないが、グレッグ・グラフィンはデブではない。ただ、体の隅々まで神経が通っていないような『ニブそう』な感じが松村邦洋を思わせたわけだ(笑)。ステージ向かって右に位置するギターのグレッグ・ヘトソンも額が後退し、短く刈り揃えた頭を金髪に染めていたので、最初見たときスキン・ヘッドにしたかと思った。グラフィン、ヘトソンの2人のグレッグは揃って『理学修士』の学位を持ち、また揃ってアタマが薄いので、「髪が薄いのはアタマがいい証拠」と言われてる(笑)。ライヴのほうは3、4曲演奏する度にMC(時たま日本語の「ドモアリガト」も混じる)を入れながらポンポンと曲を披露する感じで小気味良く進んでいった。グレッグ・グラフィンの右隣のベースのジェイ・ベントリーとそのまた右のギターのブライアン・ベイカーの2人はバック・コーラスも担当。もっとも、2人がコーラス付けなくてもファンがしっかり歌っている。背が異様に高いジェイは“21st
Century (Digital
Boy)”で少しリード・ヴォーカルも担当。ブライアンは金髪のロンゲになり、メガネを外して『イイ男』になっていたので、会場の女性客の視線を集めていた(と思う...多分)。ドラムのボビー・シェイアーは、曲の合間にスティックをクルクル廻したり、観客からの声援(というかヤジに近いもの)にその都度ボケたリアクションを返し、その愛敬ある体型・風貌(彼は間違いなくデブ!)どおりの人柄を見せていた。
「これは政治的な内容の曲だ」といった感じのMCで始まった“Sowing The
Seeds Of
Utopia”、アルバム『アゲインスト・ザ・グレイン』収録の名曲“Anesthesia”、グレッグ・グラフィンの「これは16年前にジェイと書いた曲だ」といったMCで始まった“Part
III”...といった具合にライヴには色々と見せ場があったが、一番の見せ場は、ボビーの刻んだファンには耳馴染みリズムで会場が大いに沸くなか、「みんな、♪fafafafa〜とコーラスを付けてくれ!」というグレッグ・グラフィンからの要求にファンが応え、♪fafafafa〜
fafafafa~ raise your voice〜!と大合唱になった“Raise Your
Voice!”の時だろう。その余韻醒めやらぬうちに“No
Control”、そして名曲“American
Jesus”が披露され観客は大いに沸いた。「今夜の最後の曲に、特別なこの曲をプレイしよう」とグレッグ・グラフィンが言って、静かに歌い始めた曲は“Generator”。ひとりで歌い始めたグレッグ・グラフィンの歌にバックの4人も少しずつ音を重ねていき、最後にはちゃんと『ロック』になった。“Generator”の後、グレッグ・グラフィンはファンに御礼を言い、ボビーはドラム・スティック、ジェイはギター・ピックを観客に投げ入れ、バッド・レリジョンの5人はステージを去った。全28曲、アンコール無しの『70分1本勝負』だった。
ファンの盛り上がりかたは、フツウのパンク・ロックのそれと同じで、私のように音楽に浸りたい者にとってはシチュエイション的にツラいモノがあったが、数々の名曲をナマで堪能でき、収穫ある楽しいライヴだった。このリポートで彼らに興味を持ったひとには、曲に速さを求めるならアルバム『アゲインスト・ザ・グレイン』を、うれぶれたもの寂しいメロディーに浸りたいならアルバム『グレイ・レイス』をオススメします。
【SET LIST】...'99.4.17
川崎・クラブチッタ
1. Against The Grain
2. Hear It
3. I Want To Conquer The World
4. 21st Century (Digital Boy)
5. Do What You Want
6. Atomic Garden
7. Come Join Us
8. A Walk
9. Ten In 2010
10. Change Of Ideas
11. Suffer
12. Sowing The Seeds Of Utopia
13. Watch It Die
14. All Fanstatic Images
15. Anesthesia
16. Stranger Than Fiction
17. The Hippy Killers
18. Along The Way
19. Turn On The Light
20. Part III
21. Modern Man
22. You Are (The Goverment)
23. Raise Your Voice!
24. No Control
25. American Jesus
26. Recipe For Hate
27. Fuck Armageddon...This Is Hell
28. Generator