デビュー・アルバム『ジャグド・リトル・ピル』が全世界で2,800万枚ものセールスを記録し、'95年度のグラミー賞を総ナメにするなどミュージック・シーンに大きなインパクトを与え、『'90年代型女性シンガー』と呼ばれる女性シンガーの在り方さえも作り上げてしまった'90年代を代表する女性アーティスト、アラニス・モリセットの2年半振り3回目のジャパン・ツアーは、去年の11月にリリースされた待望の2ndアルバム『サポーズド・フォーマー・インファチュエイション・ジャンキー』に伴う大がかりなワールド・ツアーの一環として行われるもの。そのハイライトは勿論、4月24日・25日の『武道館
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days』であることは衆目の一致するところだが、「何もわざわざ武道館で、豆粒ぐらいの大きさになって見えるアラニスを観ることもないだろう」ということで、4月18日に神奈川県民ホールでのコンサートのチケットを取った。ら...私の取った『3階・14列・25番』という席は文字どおり、会場の最後の列。これより後ろには客席は1つも無く、壁しかない...というホントに会場の一番後ろの席だった...。これなら、武道館で観たほうが良かったかも...(笑)。
当日の横浜の天気は雨。それなのに開場時間の5時半になっても会場への『客入れ』は始まらない。この日がジャパン・ツアー初日ということもあり念入りにリハーサルをやってるようで、『客入れ』が始まった6時前まで、ファンは雨のなか待たされるハメに...。
アラニスのコンサートが始まったのは、開演予定時間の6時を30分近くも押した6時半頃。会場内の灯りが消え、ファンの歓声のなか、バック・バンドが現われ、エスニック風味あふれるイントロを演奏。しばらくしていよいよアラニス登場! オープニング曲は新作より“Baba”。長い髪を三ッ編みにしていた(←多分)アラニスの出で立ちは、上が黒系統のTシャツで、下は深緑色のスカート。さらにその下にズボンを履いていた。アラニスはステージ上を円を書くようにしてクルクル走り廻りながら歌っていた。続く“Would
Not
Come”でもステージ上をクルクル廻っていたアラニス。彼女のステージ上の動きは『踊り』というよりも、インド風味が散りばめられている新作からの曲と相まって、まるで『祈りを捧げている』かのようだった。
動き廻ってばかりいたら疲れるので、ここで一息...といったところか“Joining
You”ではエレキ・ギターを、“Hand In My
Pocket”ではハーモニカを、“Are You Still
Mad”ではアコースティック・ギターを演奏したアラニス。この後、新作からの“Sympathetic
Chalactor”ではアラニスはまたもや、ステージ上をグルグル廻りながら歌っていた。バック・バンドはギター2人に、ベース、ドラムス、キーボードの総勢5人編成。キーボード・プレイヤーはエスニック風味が強い曲では、パーカッションも叩いていた。アラニスの歌はCDで聴かれるものと全く同じ。
女のドロドロとした情念のヴォーカルで、歌う...というよりは『叫ぶ』という感じ。加えてアラニスは声量が大きく、マイクが要らないんじゃ?と思えるくらい。以前、シェリル・クロウのライヴでも感じたが、アメリカのショウ・ビシネス世界を勝ち抜く『超一流アーティスト』は声の大きさからして違うネ...。
アラニスがエレキ・ギターをプレイした最新ヒット曲“So
Pure”の後、アラニスがハーモニカをプレイした“All I Really
Want”、そしてCDとは違ったエスニックなパーカッションを多用したアレンジでプレイされた“You
Outta
Know”...と大ヒットしたデビュー作からのおなじみのナンバーに大いに沸く観客。“You
Outta
Know”が終わると、キーボード奏者とアラニスを残して、他のバンド・メンバーはステージを去り、キーボード奏者がピアノ・ソロを始めた。披露される数々の技に会場が沸くなか、アラニスはステージ中央でしゃがんでジッとそれを見ていた。5分近くピアノ・ソロが続いた後、バンド・メンバーがステージに戻って来て始まったピアノがイントロの曲は、映画『シティ・オブ・エンジェルズ』の主題歌“Uninvited”。この曲を歌い終わるとアラニスは手を振ってステージを去り、バック・バンドも演奏を終えるとステージを去った。
勿論、ファンはここでライヴが終わるのを良しとせず、アンコール要求の手拍子をし、今や洋楽のコンサートでは絶滅した『アンコール・コール』も飛び出した(笑)。ファンの熱心なアンコール要求に応えてステージに戻ってきたアラニス、日本語で「ドモアリガト!」と御礼を言ってから、バンド・メンバーの紹介をした。その後プレイされたキーボードのメロディーはアラニス・ファンなら誰もが知るあの曲のイントロ...“Thank
U”だ! 最新アルバムからの大ヒット曲にファンは歓声を上げて大喜び!!! この後、デビュー・アルバムからの大ヒット曲“Ironic”を披露してアラニスたちはステージを去った。
ここまでアラニスの代表曲といえる曲は全てプレイされていたので、ここでライヴが終わっても不思議じゃなかったが、ファンの熱心な手拍子と『アラニス・コール』で再びアラニスたちをステージに呼び戻した。アラニスはたくさんの缶ジュースを携えてステージに戻り、ステージ最前列に座るファンたちに缶ジュースを配って廻るなど、この日一番オチャメな仕草を見せた(笑)。この『缶ジュース配り』の際、ファンから花束を贈られたアラニス、「thank
you~!」と御礼を言って、始めた曲はデビュー作からの“Wake
Up”。最初は例のようにクルクル廻りながら歌ってたが、曲の中盤からはエレキ・ギターを構えてジャカジャカ弾いたアラニス。この後、これまたデビュー作からの“I'm
Not Doctor”を披露し、1時間40分、全18曲でライヴを締めくくった。
ステージ奥のスクリーンにイメージ映像を次々と流すなど、視覚効果も計算されていた今回のライヴ、アラニスのCDそのまんまの情念ドロドロのヴォーカルをナマで聴けてそれなりに収穫はあったのだが、私自身が帰りの電車の時間が気になって気になって、心ゆくまでライヴを楽しめる精神状態では無く、時間を気にするあまり演奏途中に度々、ウワの空になったことをアラニスに対し非常に申し訳なく思う次第であります...。
【SET LIST】...'99.4.18
神奈川県民ホール・大ホール
1. Baba
2. Would Not Come
3. Joining You
4. Hand In My Pocket
5. Are You Still Mad
6. Sympathetic Chalactor
7. Perfect
8. You Learn
9. Forgiven
10. I Was Hoping
11. So Pure
12. All I Really Want
13. You Outta Know
14. Uninvited
(encore 1)
1. Thank U
2. Ironic
(encore 2)
1. Wake Up
2. I'm Not Doctor