2ndアルバム『シュガー・レイのアメリカン・ドリーム'97~爆走街道まっしぐら、俺らに勝る敵はナシ!』(原題は『FLOORED』)から“Fly”が全米で大ヒットし、一躍人気アーティストの仲間入りを果たしたシュガー・レイ。ヴォーカルのマークは女性雑誌で『イイ男ベスト12』に選ばれ、あのマドンナの『新しい恋人』と報じられるなど、アメリカではすでにトップ・アーティスト! まさに『アメリカン・ドリーム』を体現した感じで、日本のレコード会社が『シャレ』で付けた邦題が『マジ』になってしまった訳だが、今年の1月リリースの3rdアルバム『14分59秒』からも“Every
Morning”がヒットして、日本でも人気がブレイクしたシュガー・レイの来日公演を、5月23日に赤坂BLITZで観てきた。
会場で配られていたチラシに載ってたシュガー・レイについての記述...『南カリフォルニアのおバカバンド来日!!』...確かに、2ndアルバム『シュガー・レイのアメリカン・ドリーム'97~爆走街道まっしぐら、俺らに勝る敵はナシ!』の内容はこの邦題にふさわしいバカな内容で、私も彼らのことを「バカのシュガー・レイ」と呼んでいたのだが、新作『14分59秒』の音楽的に充実した内容に、もうバカなバンドじゃない...と思っていた。が...。
会場はほぼ満員の客の入り。会場に流されていたオフスプリングの曲に合わせて騒ぐなど、ライヴ開始前から観客は異様なくらいハイ・テンション。午後6時10分、会場の灯りが消え、ライヴの開始を知らせるBGMが流れる。3分以上もじらしにじらした後、ようやくステージに現われたシュガー・レイの5人。マークは黒色のタンクトップ姿で、ギターのロドニーは暑いのにスーツ姿でサングラスをしていた。オープニング曲は新作『14分59秒』より“Glory”。会場はいきなり大混乱状態でフローティング(『人上水泳』)の嵐。曲が終わるとマークはひざまずいて「トモアリガトゴザイマス」と日本語でお礼を言った。2曲目は2ndアルバム『シュガー・レイのアメリカン・ドリーム'97(以下、略)』から“RPM”。マークはステージ上をスキップしながら右へ左へ動き廻る動き廻る。マークは曲が終わる度にMCを入れていたが、これが結構長くて、平気で2、3分は喋ってた。動き廻ってばかりいるから休みが必要なんだろう...とマークの長すぎるMCをこの時は解釈していたのだが...。「アルバム『レモネード・アンド・ブラウニーズ』からの曲だ」とマークが紹介して始まったのが、デビュー・アルバムからの“10
Seconds
Down”。曲が終わるとマークは自分の腕時計を指差してからタンクトップの裾をめくり上げ、脇腹のロレックスのロゴの刺青を観客に見せつけていた。この他、意味なく腰を前後に振るなど下品な仕草を見せ、「ミンナ、トッテモ、イイデス」など怪しげな日本語を喋っていたマーク。この時点でもう、汗でグッショリ濡れた男や、暑さでヘロヘロになった女のコがステージ前のフロアから、次々と私が居た『安全地帯』へと避難してきた(笑)。
さすがに暑かったのか、ロドニーがスーツからアロハシャツに着替えてきてから、マークもギターを構えて披露されたのが、来日記念シングル“Falls
Apart”。マークが「こうして楽器を構えているとデュラン・デュランのジョン・テイラーになった気分だなあ」とおどけた(←推測。私の英語のヒアリング力では...笑)後も新作『14分59秒』からの“Even
Though”。曲が終わると観客の女のコをひとりステージに上げ、彼女ことを「Shonen
Knife~!」と紹介したマーク(日本の女のコはみんな『少年ナイフ』だと思っているらしい...笑)、D.J.ホモサイドのかける音楽に合わせてストリート・ダンスを踊ってもらう企画を用意してたのだが、肝心の女のコが緊張のためか全く踊れない。代わりにローディーのかたが現われて『お手本』を披露していった(笑)。この後、披露されたのは新作『14分59秒』から“Someday”。このような『なごみ系』の曲の時はドラムのスタンもギターを演奏。その代わりD.J.ホモサイドのターンテーブルのリズムマシーンがリズムをキープしていた。次の曲は2ndアルバム『(略)』からの大ヒット曲の“Fly”。この曲では観客の間から「I
just want to
fly~」の大合唱。最初ギターを弾いていたスタンが曲の途中でドラムを叩き、さらにドラムを降りてギターに戻る...という阪神の遠山投手が投手→一塁手→投手をやった野村采配も真っ青なことを“Fly”ではやっていた(笑)。この後、スタンはドラムに戻り、半袖シャツにネクタイ姿のマーフィーのベースがビンビンくる“Iron
Mic”、そして新作から“Personal Space Invader”がプレイされた。
マークが観客に訊く。「ヘヴィー・メタル・カラオケをやりたいか?」。観客は当然「Yeah!」。「D.J.ホモサイド!、ジャパニーズ・ピープルがヘヴィー・メタル・カラオケをやりたがっている! 何か曲をかけてやってくれ!!!」とのマークの声に、「まいったな、オレのレコード・コレクションにはヘヴィー・メタルなんかないぞ」と頭を掻いたD.J.ホモサイドが、リズム・マシーンをあやつりながら歌い始めたのがトゥイステッド・シスターの“We're
Not Gonna Take
It”(邦題は“ノット・ゴナ・テイク・イット”)。そしたら場内の観客、マジに大合唱で応えたものだから、「もういい、もういい」とストップをかけたマーク(笑)。この後、デビュー作から“Mean
Machine”をプレイするとまたもやマークとD.J.ホモサイドの掛け合いがあり、マークとD.J.ホモサイドが口論になった末、怒ったD.J.ホモサイドがマークにビールをぶっかける...という『演出』があった。さらにヴァニラ・アイスの“Ice
Ice
Baby”をチョロ〜っと演ってみせたところで、ロドニーとスタンが演奏し始めたギターのイントロは大ヒット曲の“Every
Morning”! これには観客は大きな歓声を上げ、マークの歌に合わせて大合唱。“Every
Morning”が終わると、5人はステージを去り、そのままアンコール無しでライヴは終わってしまった。
時間にして約80分のライヴだった訳だが、演奏されたのはたった11曲! 1曲につき3〜4分なので、演奏に費やした時間は40分ほどしかない。じゃあ、80分のうち残りの40分は何をやってたかというと、マークの『トーク』と、いろいろな演出に費やされていた。マークはさかんに英語でアメリカン・ジョークを言ってたようだが、誰も笑わず、観客の間からは「英語で何言ってんのか解らなくて、サムい...」との声も...。マークが「みんな一緒に歌ってくれ!」とアメリカ国歌を歌ったのに観客は誰も歌わないという場面すらあったんだから。彼らが見せたライヴを本国・アメリカで演ればウケることは容易に想像つくが...。『音楽には国境は無い』のに敢えて言葉によるコミュニケイションを重視したら、見事『言葉の壁』に激突・玉砕してしまったシュガー・レイ。新作『14分59秒』ではバカバンドを卒業したかに見えたけど、ライヴではやはりバカだった(笑)。私は『言葉の壁』に玉砕しようとも、本国でのライヴと同じ演り方を日本でも貫いた彼らの意気を買う!!!
【SET LIST】...'99.5.23 赤坂BLITZ
1. Glory
2. RPM
3. 10 Seconds Down
4. Falls Apart
5. Even Though
6. Someday
7. Fly
8. Iron Mic
9. Personal Space Invader
10. Mean Machine
11. Every Morning