ヒロくんのLIVE REPORT '00 PART 2 NINE INCH NAILS

 『ミスター自己破壊』こと、トレント・レズナー率いる『可愛い憎悪機械』ナイン・インチ・ネイルズは今回が待望の初来日! 前週のレッド・ホット・チリ・ペッパーズのライヴを観に行った時の移動を『青春18きっぷ』に頼ったせいか(苦笑)風邪を引き、1月13日には39.0 ℃ の熱が出た。その風邪を薬で抑え、私は1月15日、大阪城ホールに足を運んだ。
 会場に足を踏み入れると、開演前のステージには暗幕がかかっていた。演奏開始前にステージにかかっていた幕が、開演と同時に落ちて演奏が始まる...というライヴはありがちなようで実際のところは少なく、私が観たなかでは、去年の今頃のマリリン・マンソンのライヴくらい。あの時は背中に羽を生やした『異形』のシルエットを見せつける演出のため白色の幕をステージにかけてたが...。そういやNINのトレント・レズナーといえば、あのマリリン・マンソンをデビューさせた人物としても知られているが...と両者の関連性について考えたりしながら開演を待ってると、場内のBGMがE.P.『ブロークン』の“Pinion”に変わり、同時に会場の客電が消えてステージの暗幕が落ちた。演奏始まったイントロは新作『ザ・フラジャイル』の1曲目を飾る“Somewhat Damaged”のモノ。ステージ上にはギターを構えたトレントのほか、ギター、ベース、キーボード、そしてドラムスのバック・ミュージシャンが居た。トレントは曲の途中、ライヴは始まったばかりというのにいきなりステージ前の観客のなかに飛び込んだ!!!。2曲目の“Terrible Lie”からはトレントはギターを置いてヴォーカルに専念。トレントのヴォーカルも、バック・ミュージシャンのパフォーマンスもやけに挑戦的で、曲中、ミネラル・ウォーターのペットボトルが客席に投げ込まれる。次に“Sin”をプレイすると、トレントは観客を「pig! pig! pig! pig!」と罵倒。“March Of The Pigs”の始まりだ。ステージ上のパフォーマーはアグレッシヴに動き廻り、全く脈絡のなく動いているようなのに、演奏上必要となる小型キーボードをいつの間にかきちんとスタッフがステージに用意しているなど、芝居の舞台変更を思わせる準備周到さ。曲によってギタリストとベーシストも小型キーボードをプレイするなど、曲に合わせてバック・ミュージシャンの担当楽器も変わってた。“March Of The Pigs”から『ブタ』の流れで(笑)プレイされた“Piggy”ではトレントは途中から、そのいつの間にかきちんとセットされてた小型キーボードを演奏。“Piggy”からそのままピアノの調べで“The Frail”をひとり奏でてたトレント。そのままアルバムどおりの流れで“The Wretched”に突入。続いては“No, You Don't”。もう不要になったトレントの小型キーボードは、まるでアタリマエのように、ステージから撤去されている。アップ・テンポの“Gave Up”で場内盛り上がったところで、一度ステージに白色の幕が落ちた。
 白色の幕...スクリーンにはニュー・アルバム『ザ・フラジャイル』のアートワークに通じるような映像が映し出され、場内には“La Mer”が流れた。一旦ステージからみんな出払ったようで、最初はテープでも流しているように感じたが、キーボード・プレイヤーによる生演奏だったかもしれない。この後、スクリーンを降ろしたままトレントたちがステージに戻って来て、アルバムの曲順どおり“The Great Below”をプレイ。スクリーンの後ろに隠れてトレントたちの動きはかすかなシルエットでしか見えない。スクリーンにはミジンコみたいな微小生物の顕微鏡映像が延々と流れていた。このくらいの映像なら私は大丈夫だが、女のコのなかには虫類が苦手で生理的嫌悪感を抱いたひとも居たかもしれない。“The Great Below”が終わり“The Way Out Is Through”が始まると、スクリーンには炎の映像が流れ、まるで炎で焼け落ちるかのようにしてスクリーンが上がった。“The Way Out Is Through”の次はE.P.『ブロークン』より“Wish”。“La Mer”からの静かな展開に座る客も多く居たが、これで再びみんな総立ちになる。“Wish”では結構盛り上がって、歌詞の♪fist fuck! ~というところに合わせ、拳を振り上げた客が大勢居たように見えたが、これはオレの錯覚か?(笑) また演劇の舞台セット・チェンジのような周到さでステージにいつの間にか用意された小型キーボードを、バック・ミュージシャンのひとりがステージ床に叩きつけて破壊した“Head Like A Hole”の演奏が終わると、トレントは「thank you~!」と観客に御礼を言って一度ステージを去った。
 観客のアンコール要求に応えて、ステージにトレントが戻って来てギターを構えた。“The Day The World Went Away”だ。 この曲の歌詞の♪the day the whole world went away~ をトレントが歌うと観客が沸く。次の“Even Deeper”で、またトレントがステージ前の観客のなかに飛び込み、続く挑発的な“Starfucker, Inc.”ではサビの部分の♪starfucker〜が連呼されるところで多くの客が一緒に叫んでた(笑)。次の“Closer”では、ずっと据え置かれてた大型キーボードをなぎ倒し、またも小型キーボードをステージ床に叩きつけて破壊したバック・ミュージシャンたち。このステージの混乱が収まってから、ギターを構えたトレントが歌い出だした“Hurt”。代表曲の“Hurt”でライヴは本物の演劇のように大団円を迎えた。曲が終わると観客から起こった拍手にミネラル・ウォーターのペットボトルを次々投げ込んで応えてから、トレントたちはステージを去った。
 今回のライヴ、(“March Of The Pigs”や“Piggy”というタイトルの曲があるためとはいえ)観客に向かって「テメェら、ブタだ! ブタだ! ブタだ!」と毒づいたり、観客に対して終始攻撃的なパフォーマンスを繰り広げたり、派手なセットこそ無いものの演劇を思わせるほど周到に準備されている点など、マリリン・マンソンのライヴそっくり!!!(笑) ナイン・インチ・ネイルズのライヴを観て、「この師匠(トレントのこと)にして、あの弟子(マリリン・マンソンのこと)あり...か」とちょっぴり納得した(笑)。そして...ライヴでイイ汗かいたせいだろうか、帰りの電車のなかで体温を計ったら、36℃台に下がってた(笑)。

【SET LIST】...'00.1.15 大阪城ホール
. Pinion
1. Somewhat Damaged
2. Terrible Lie
3. Sin
4. March Of The Pigs
5. Piggy
6. The Frail
7. The Wretched
8. No, You Don't
9. Gave Up
10. La Mer
11. The Great Below
12. The Way Out Is Through
13. Wish
14. Please
15. Get Down, Make Love (クィーンのカヴァー)
16. Head Like A Hole

(encore)
1. The Day The World Went Away
2. Even Deeper
3. Starfucker, Inc.
4. Closer
5. Hurt

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