ヒロくんのLIVE REPORT '00 PART 8 PAULA COLE BAND

 1997年度グラミー賞最優秀新人賞受賞の女性シンガー、ポーラ・コールの初来日公演を4月8日にラフォーレ・ミュージアム原宿で観て来た。今回のポーラのジャパン・ツアー、東京公演に限っていえば4月8日と9日の両日とも1日に2回ずつ公演を行うという、まるでドサ廻りの演歌歌手を思わせるハードなスケジュールが組まれており、そのうち私が観たは4月8日の2回目のショウ。会場のラフォーレ・ミュージアム原宿は『ミュージアム』と言う名が示すとおり、普段はギャラリーとして利用されているスペース。400席くらいのこじんまりとした会場だ。ポーラが前に日本に来たときには武道館でパフォーマンスしてるというのにそれに比べると随分格下の会場...といっても、ピーター・ガブリエルのワールド・ツアーのバック・コーラスとして武道館の舞台に立ったんだけど(笑)。ピーター・ガブリエルのバック・コーラス時代のポーラの様子はライヴ・アルバム『シークレット・ワールド・ライヴ』にしっかり収められているが、このように下積みを経験してるところも、どこかドサ廻りの演歌歌手を思わせる(笑)。チケットの整理番号66番の私は、前から2列目のステージ向かって左端の席をゲット。会場には意外なほど女性の姿が多い。
 開演予定時間の8時半を5分くらい廻ると客電が落ち、ステージにポーラ・コール・バンドの3人...ギターのケヴィン・バリー、ドラムのジェイ・ベルローズ、そしてポーラ・コール...が現われた。椅子に着席したまま声援を送る観客にポーラは次のように言った。「今、みんなこうして椅子に座ってるけど、ライヴが盛り上がってきたらどんどん立ち上がって、踊ってもいいのよ」 このようなセリフの後、ポーラは「私の好きな曲よ」と言って歌い始めたのがオリヴィア・ニュートン・ジョンの“Jolene”。カヴァー曲でライヴが始まるのも珍しいが、ちょっとしたウォーム・アップの意味合いだろうか? ポーラは胸のところに刺繍の入ったシースルーの長袖にジーンズのスカート姿だった。“Jolene”が終わり、ステージにポーラ・コール・バンドの3人の他に、サポート・ベーシストのダグとキーボード兼バック・コーラスのラキヤが現われたところで、ポーラが観客に「最近出したアルバムのタイトル曲なんだけど、分かる?」と訊ねる。「“Amen”!」と観客から答えが返ってきたところで、ニュー・アルバムのタイトル曲“Amen”が披露された。ラキヤはこの曲ではヴァイオリン担当。ここまでは観客はみんな椅子に座ったまんまだった。
 “Amen”が終わると、ステージ奥のピアノに就いたポーラ、「私は以前、バック・ヴォーカリストとして日本に来たことがあるんだけど、今回初めて自分のバンドで来れてうれしいです。(観客から拍手) 前に来たのは6年前のことなんだけど、今と同じようにサクラが花盛りでした」と話し、観客の声援と拍手を集めた。ここでポーラがピアノを弾きながら歌い始めたのが“Throwing Stones”。ポーラの曲のなかで一番激しい曲だ。私はこの曲を聴いてると『今居る場所からすぐに脱出しなきゃいけないような焦燥感』にいつも囚われてしまうが、このまるで何かを追い立てるかような曲に観客がじぃ〜っとして居られるハズは無く、ここで殆どの客が立ち上がった。先ほどポーラは「立ちたくなったら立っていいのよ」と話してたが、そんなこと言わなくても“Throwing Stones”演ればみんな立ち上がるって!!! これ以降、この日のコンサートは『スタンディング形式』になった(笑)。この観客の反応に「thank you~」とお礼を言ったポーラ、ピアノを離れ、ステージ中央に戻ってヴォーカルに専念。結論からいうとポーラがピアノを弾いたのは1曲だけだった。もっと『激情ピアノ』を聴きたかったな...。
 “Pearl”、“Mississippi”、そして新作からのヒット曲“I Believe In Love”と曲が続く。 ポーラの歌はアルバムで聴けるのと同じ...いや、それ以上に素晴しく、歌声がよくとおってたし、高いところも伸びてたし、 非の打ちどころ無し。(アメリカの実力派シンガーは大概そうだけど)マイクロフォン無しでもいいくらい歌声が大きいところが迫力満点。ポーラの出世作になるアルバム『ディス・ファイアー』のアタマを飾る“Tiger”の後に披露されたのが代表曲のひとつ“Where Have All The Cowboys Gone ? ”。ベースのダグが、手拍子するように観客を煽ったので、観客の手拍子のなか“Where Have All The Cowboys Gone ? ”を歌い上げたポーラ、曲の終わりのほうではタンバリンを振っていた。“Me”を挟んでメンバーをひとりひとり紹介したポーラ。ドラムのジェイのセットはノー・タムの個性的なモノ。セットの数が少ないところや、ドラマーというよりパーカッショニスト...といった感じの多彩なプレイをするところなど、ロン・セクスミスのバンドのドン・カーを思い出した。ドラマーはセットの数じゃないんだよ。メンバー紹介の後、“God Is Watching”を演奏すると、ポーラたちは一度ステージから退いた。
 ファンの「ポーラ~!」コール(笑)に応えて、ステージに戻って来たポーラたち。ポーラはこの日初めてキーボードに就き、“Feelin' Love”をプレイ。曲の終わりから即興演奏みたいな感じになり、ケヴィンが素晴しいギター・ソロを聴かせた。“Feelin' Love”が終わるとキーボードを離れ(ポーラがキーボードに触わったのはこの1曲だけ)、素晴しいギター・プレイを聴かせてくれたケヴィンを観客に改めて紹介。ここでポーラが演った曲は、なんとレッド・ツェッペリンの“Black Dog”!!! ロック史上でも屈指のヴォーカル・パフォーマンスとされている、パワフルなハイトーンのZEP時代のロパート・プラントのヴォーカルと比べても遜色ないヴォーカルを披露してくれたポーラ。歌いながらそれまで履いていた靴を脱ぎ捨てるなど、パフォーマンスも『ロック』してた。意外な選曲ともいえる“Black Dog”が終わると、ポーラたちはステージを去った。ここでも観客はアンコール要求の手拍子をする。だって、まだ『あの曲』を演ってない...。ファンの要求に応えて再びステージに現われたポーラたちがプレイした曲は、やはり『あの曲』だった。“I Don't Want To Wait”! 曲が終わると観客に「thank you!」と御礼を言うポーラ。改めてひとりひとりメンバー紹介した後、最後にメンバー全員横一列に並び肩を組んで観客におじぎをしてからステージを去り、この日のライヴは終わった。
 思ったよりもロック色の濃いライヴで、ポーラの『豪速球』的ヴォーカル・パフォーマンスを堪能出来ました。 

【SET LIST】...'00.4.8 (2nd show) ラフォーレ・ミュージアム原宿
1. Jolene (オリヴィア・ニュートン・ジョンのカヴァー)
2. Amen
3. Throwing Stones
4. Pearl
5. Mississippi
6. I Believe In Love
7. Tiger
8. Where Have All The Cowboys Gone ?
9. Me
10. God Is Watching

(encore 1)
1. Feelin' Love
2. Black Dog (レッド・ツェッペリンのカヴァー)

(encore 2)
1. I Don't Want To Wait

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