ヒロくんのLIVE REPORT '00 PART 12 THE SMASHING PUMPKINS

 突如、解散宣言をし、ファンを大混乱させた『爆裂カボチャ』こと、スマッシング・パンプキンズ(以下、スマパン)。今回のジャパン・ツアーで、スマパンの姿は日本においてはこれが見納め...ということになった。私が足を運んだのはその最後のジャパン・ツアーの最終公演日である7月2日の東京公演。文字どおり、last live in Japan となったライヴ。 そもそも今回のスマパンのジャパン・ツアーが当初発表された頃にはまだ解散表明されておらず、東・名・阪での公演が平日ばかり組まれてたため、「会社を休んでまで観に行くのはツラい。土・日に追加公演が出るまで待ってよう」とのんびり構えてた私。そんなうちにビリー・コーガンが「ブリトニー・スピアーズやバックストリート・ボーイズと同じ土俵で闘うのに疲れた...」と解散宣言! 最初は冗談か?と思っていたが、ビリーがマジなことを知り、ホントにスマパンが終わってしまうことがヒシヒシと感じ取れるようになってきた。そんななか『私の希望どおり』の日曜日に追加公演が出たので、即チケットを押さえた私。偶然にもそれが last live in Japan に当たってしまった。だから、私はスマパンの日本での最後の姿を見よう!と力入れてたワケじゃなく、日程の都合上こうなったということをまず、おことわりしとく。また、私が彼らのライヴを観るのはこれが初めてだ。
 会場へ向かう途中、『rockin' on』8月号を買う。そこに載ってたビリーの最新インタヴューのリード文で山崎洋一郎氏が今回のジャパン・ツアーに関して「既に命を失ってしまったバンドの『さよなら会』だった」と表現してるのを読んで、「ああ、これからオレが観るのはスマパンであってスマパンじゃないのか...」とミョーな刷り込みを与えられてしまった私。こんなもん、ライヴ前に読むんじゃなかった...。
 会場の東京国際フォーラム(昔、都庁が建ってたとこ)のホールAは当然のことながらファンで埋め尽くされており、チケットもSOLD OUT。私の席は1階の最後列。そのホールAで観客が開演を待ってると「本日の公演はスマッシング・パンプキンズとしては日本で最後の公演となります」とのアナウンスが入り、これに過剰反応示していきなり大いに沸いた観客。今回のライヴは途中15分の休憩を挟んで(アコースティックな第1部とエレクトリックな第2部との)2部構成で行われる旨もアナウンスされた。
 5時10分頃、ステージにひとりポツンとスキンヘッドの男が現れた。ビリー・コーガンだ。映画『マトリックス』を思わせるラメ入りの黒いコートを羽織ったビリーに観客から声援と拍手が送られた。ビリーはギター1本の弾き語りで“Today”などを演奏。2nd『サイアミーズ・ドリーム』収録の懐かしの“Today”の登場には一緒に歌って応えるファンも多数居た。3rd『メロンコリーそして終わりのない悲しみ』からの“Muzzle”を演奏した後、ビリーはこう言った。「thank you for coming our last concert in Japan !」 これにファンが歓声で応えたところでビリーが「僕のフェイヴァリット・ソング」と言って演奏始めたのが4th『アドア』からの“Once Upon A Time”。続く曲は最新作『マシーナ』からの“The Imploding Voices”で、まるで自らの歩みを確かめるかのように、リリース順にアルバムから1曲ずつピック・アップして弾き語りしたビリー。
 “The Imploding Voices”を演奏し終わったところでステージに白いスーツを着た(!)ジェイムズ・イハが現れた。イハの姿を見て「イハ、白いスーツ着てるぜ!」とファンがザワついた(笑)。さすがはバンド一の伊達男!(笑) ビリーとイハの2人でまず“To Sheila”をプレイ。アルバム収録ヴァージョンよりもテンポ・アップしての演奏だ。さらに同じく『アドア』からの“Shame”など、ビリーとイハの2人で計3曲をプレイ。
 ここでドラムのジミー・チェンバレンとベースのメリッサ・アウフ・ダ・マウヤーもようやくステージに登場。ジミーは黒いタンクトップで、ビリーと同じく黒い衣装。メリッサは白色のドレスにズボンで、イハと同じく白ずくめ。『黒組』と『白組』の対比が面白い。4人揃ったところで、新作からの長い曲“Glass And The Ghost Children”を演奏。新作からのヒット曲“Stand Inside Your Love”もここで披露された。ビリーはとても陽気で、わざとイントロのギターをトチったりして、何回か弾き直した末、“Stand Inside Your Love”がようやく始まった。曲のサビの部分の声を張り上げるところをビリーは流すような感じでサラッと歌ってしまい、「おやっ?」と思った私。スマパンというと、弾き直しなどとは無縁で、ビリーのヴォーカルはいつも全力投球というイメージをそれまで持ってたから...。“Stand Inside Your Love”の次に演奏されたのは、2nd『サイアミーズ・ドリーム』収録の、サビの部分の♪used to be a liitle boy~が印象に残ってる曲。「おおっ〜! 懐かしい〜!!!」と喜びつつ、曲のタイトルがどうしても思い出せなかった私、ライヴ終了後にようやく思い出した...。タイトルは“Disarm”(邦題は“武装解除”)...。解散を決めて、もう『アホな音楽ギョーカイや無理解な世間との闘いが終わった』から“武装解除”が登場した...と考えるのは穿ち過ぎだろうか? 確かにハナシが出来過ぎですね(笑)。この“Disarm”に、ファンが大いに喜んだところで、ビリーたちは「またステージに戻ってくるから」と言い残してステージを去り、第1部は1時間余りで終了。
 15分ほどの休憩を挟んで始まった第2部のエレクトリック・セットは新作のアタマを飾るヘヴィーなナンバー“The Everlasting Gaze”でスタート。次も、タイトルどおりヘヴィーな“Heavy Metal Machine”。そして“Blue Skies Bring Tears”...と、新作『マシーナ』からの曲が続く。ステージ奥には『マシーナ』のジャケットに通ずる絵が写し出されていた。デビュー作『ギッシュ』から“I Am One”を披露しすると、「『マシーナ』からの曲、“Raindrops〜”!」てな感じでMC入れたビリー、“Raindrops + Sunshowers”を演った。“Raindrops + Sunshowers”が終わると、メンバー紹介を始めたビリー、メリッサ、ジミー、そしてイハの順に紹介し、そのままイハがヴォーカルをとる曲になだれ込む。イハのソロ・アルバムの曲か?と思ったりもしたが、実際のところイハが歌ったのはB面曲&未発表集『パイシーズ・イスカリオット』からの“Blew Away”。イハのヴォーカルに『イハ・ギャル』(笑)たち中心に?盛り上がったところで“Tonight, Tonight”。『マシーナ』から“I Of The Morning”は私の好きな曲で披露されてうれしかったッス。
 昔の曲を次々演ったり、イハにリード・ヴォーカルを取らせたり...とファン・サーヴィスに心を砕いてる感じのビリーだったが、肝心の“Bullet With Butterfly Wings”のキメの部分♪despite all my rage i am still just a rat in a cage~!では声を張り上げず、サラッと流した感じで歌い、曲の魅力が半減してしまった。何しろ、“Bullet With Butterfly Wings”だと判るまで30秒ほど要したほどユルんだヴァージョンだったんだもん。先ほどの“Stand Inside Your Love”でもそうだったけど、解散を決めて、闘いが終わった以上もう叫ぶ必然性が無くなったってことかい? ビリー...?
 第2部のエレクトリック・セットが終わり、4人がステージを去ると、ファンが熱い手拍子でアンコール要求。これに応えてステージに戻って来たスマパン、アンコールでは“Perfect”をまず演奏。この後、ジミーが叩いたマーチング・ドラムはあの曲のイントロ! “Cherub Rock”(邦題は“天使のロック”)だ! “天使のロック”でファンが大いに盛り上がると4人はステージを去り、イハは去り際に「ドウモアリガトウ!」と日系人らしい達者な発音でファンに挨拶していった。
 これで最後の最後だから、これくらいじゃ収まりつかないファンの熱心なコールに呼び戻された4人。ドラムのジミーまでギターを構え、4人一列になって和気あいあいと演奏したのが“1979”。ジミーがドラムを叩かない分、代わりにリズムボックスが、そして会場を埋めるファンの手拍子が、リズムを刻んでた。もしかしたらダーシーもステージに現れるのでは...と思ったほど(笑)『さよなら会』がクライマックスに達した“1979”が終わると、ステージの左端から右端までゆっくりと、最前列のファンと次々握手しながら移動したビリー。日本のファンと最後の別れを惜しんでた。その際、ファンのひとりからキティちゃんの(ように見えた)人形か縫いぐるみをもらったビリー、その人形を自分の「ハゲ頭」の上に乗せ、つる〜ッと滑る仕草をするギャグまで披露していった(笑)。
 こうして約3時間に及ぶ last live in Japan は終わったんだけど、『rockin' on』山崎氏が言うとおり、『もう終わったバンドのお別れ会』でしかなかったライヴでしたね、確かに。でもそれが悪かったかというとまた別の話で、文中にあるように演奏中数々の不満を覚えながらも、『解散コンサート』特有の演る側と観る側双方が『優しく』なってる独特の雰囲気にやられ、もう少しで涙が出そうになり、すっかり何でも許す気分になってた私です(笑)。ああ〜、エガった〜!(恍惚)。長い間素晴らしい音楽をアリガトウ、スマパン!

【SET LIST】...'00.7.2 東京国際フォーラム・ホールA
(acoustic set)
1. Speed Kills
2. Today
3. Muzzle
4. Once Upon A Time
5. The Imploding Voices
6. To Sheila
7. Shame
8. Drown
9. Glass And The Ghost Children
10. This Time
11. Stand Inside Your Love
12. Disarm

(electric set)
1. The Everlasting Gaze
2. Heavy Metal Machine
3. Blue Skies Bring Tears
4. I Am One
5. Raindrops + Sunshowers
6. Blew Away
7. Tonight, Tonight
8. I Of The Morning
9. Rock On
10. Bullet With Butterfly Wings
11. Once In A Lifetime

(encore 1)
1. Perfect
2. Cherub Rock

(encore 2)
1. 1979

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