ヒロくんのLIVE REPORT '02 PART 22 天野月子

 2nd『MEG LION』リリース間近の天野月子のツアー『Private Lion Tour 2002』を12月1日に金沢・AZホールで観て来た。開演予定時間10分前くらいに会場入りしたら、フロアは8割方埋まってる。天野月子というアーティストじたいの人気、ハッキリ言って「まだまだこれから」というところなので、正直この客の入りには驚いた。入場時に渡されたチラシの中に、天野月子直筆のセットリスト(をコピーしたもの)『おしながき』が入ってた。この時点で、ライヴでどういう曲が、どういう順番で演奏されるかが分かってしまった。新作リリース直前に演るライヴというタイミングの悪さをフォロウするための苦肉の策だろうか? 確かにこれなら、新曲演る度に「新曲です」っていちいち説明する手間は省けるし。ステージにはイミテーションの木が立てられて、まるで森のようになっていて、その『森』の奥の壁に天野月子の自画像が飾られている。その自画像の左右には『天野軍』の軍旗が1つずつ掲げられて、まるで南米のジャングルに逃れたナチス残党の拠点のよう(笑)。開演前のフロアに流れてたレトロな昭和歌謡(戦前モノ?)がフェイド・アウトし、代わりにフロアに流れたのがディジタル化された“菩提樹”のインストゥルメンタル・ヴァージョン。この曲に天野月子本人の喋りが乗る。「本日は『Private Lion Tour 2002』へようこそ。(中略...ここにバンド・メンバーの紹介アリ) 焼きイモを買いに走る季節になりましたね。みなさんはもう買いに走りましたか?」などと喋ってた(笑)。天野月子本人の喋りが終わると、ステージに『天野軍幹部』(バックバンド)の4人と天野月子(以下、つっこ)が登場。全員軍服姿だ。つっこがギターを構えたところで演奏始まったのが“菩提樹”。イントロなどのストリング・セクションを演奏するメンバーが不在のぶんをテープを流して補ってるのか、ドラマーの武並"J.J."俊明はヘッドフォンでクリック確認しながらドラム叩く。次の曲の“スナイパー”でもイントロのキーボード・セクションをテープ使ってるので、J.J.はヘッドフォン離せない(苦笑)。この“スナイパー”のサビの部分で、熱心なファンは手拍子入れてた。♪もしあなたが(チャチャ)〜わたしを狙い(チャチャ)〜...って感じで(笑)。“スナイパー”のエンディングで、つっこが右手人指し指でピストルを打つ仕草をすると、その動きに合わせて銃声の効果音が「パ〜ン☆!!!」。
 「今回は『Private Lion Tour 2002』ってことで、アーミールックでキメてみました」と、軍服姿のつっこがMC入れる。「今回のツアーのために1枚絵を描いて来ました。『アーマー司令官』です」 そう言ってステージ奥の壁に飾られた自画像を紹介したつっこ、「次曲、“B. G.”」と曲紹介。私の大好きな曲“B. G.〜Black Guitar + Berry Garden〜”が早くも登場。この曲のイントロでも、CDどおりのアレンジを再現するため、エフェクトかかったつっこのヴォーカル+シンセのテープ流してた(J.J.は勿論ヘッドフォン着用)。ファンはサビの部分で「berry garden!」、「baby girl!」と合唱。バンドはドラムのJ.J.の他、ベースの山田章典、軍帽が似合うプリティーな女性バック・コーラスのRie、そしてギターは'80年代のジャパニーズ・メタル・シーンを牽引したアースシェイカーの石原慎一郎氏。その石原さん、“HONEY?”の時はギターソロ弾くくらいしか出番がないので、曲の演奏中しっかり水飲んだりして休憩取ってたな(笑)。つっこから「12月4日に出るニュー・アルバム『MEG LION』からの曲」と紹介のあった“時計台の鐘”でも、イントロのピアノの旋律の部分などテープ流してた...。こんなにテープに頼るんならキーボード/サンプラー奏者を加え、『天野軍幹部』を1名増員したほうがイイよ!
 ここで、『本日のアコースティックコーナー』。水色のアコースティック・ギターを構えたつっこを真ン中にしてバンド・メンバーが横一列に椅子に座った(J.J.は簡易ドラムセットに就く)。石原さんはエレキ演奏の時と違い、帽子をかぶってる。ここでつっこが「『MEG LION』(のジャケット)ではジャージ着てるんですけど、『Sharon Stones』(のジャケット)で十二単着た時から、2ndアルバムではジャージにしようと思ってました」と喋る。レコーディングに出発する前の晩にみた夢に、ジャージを着るよう『お告げ』があったようで、レコーディング中にもジャージ着てたらしい(笑)。「『MEG LION』は栃木県の黒磯市の黒磯市文化会館でレコーディングしたんですけど、宿泊してたペンションから黒磯市文化会館へ通う途中にカワイイ洋品店があって、そこで買ったジャージです。栃木県黒磯市厚崎中学校のジャージです。(場内爆笑〜!!!) もし(厚崎中関係者に)友達が居たら、見せてもらって下さい」と、つっこ。黒磯に友達居るひとは、このAZの客には居ないよーな気が...(苦笑)。トークがウケた後の和やかな雰囲気のなか演奏されたのは“HONEY?”のカップリング曲の“BOGGY!”。このジャズィーな雰囲気を持つ曲が終わると、またもつっこのトーク。「“人形”って曲を書いた時、『私って、ちっちゃいころこういう子供だったんだなぁ』と昔を思い出すことがありまして。幼稚園に上がる前まで、私はガスタンクのことを『恐竜の卵』だと思ってました...」 これに、場内は再び爆笑〜!!! 一句一句慎重に言葉を選んでるのか、途切れ途切れになりがちなつっこの喋り。このライヴ・リポート読んだら、澱むことなく言葉が流れてったように思うかもしれないけど、つっこが言葉を選んでる間の沈黙の時間については表現をすべて省略しております(笑)。「それでは、次曲、“刺青”」と、つっこが曲を紹介。つっこは「次の曲」とは言わず「次曲(じきょく)」って言うんだよな。巷間言われてるほど、楽曲/ヴォーカル・スタイルは椎名林檎にソックリとは私は思わないけど、やたら文語的表現を使いたがる点に林檎っぽさを感じてしまいました(苦笑)。ここで演奏された“刺青”では、アコースティックコーナーだというのに1人+4人で再現しきれない部分(すなわちキーボード・セクション)をテープ流してる。そこまでCDで聴けるアレンジの再現にこだわらなくてもいいのに...。“刺青”の後、今回のツアーで大阪廻った際にメンバーと入ったうどん屋のお品書きの「ごぼう天」の表記が「ごぼぅ天」になってたのがツボにハマった話をしたつっこ、改めて『天野軍幹部』を紹介。前髪を立ててるJ.J.のことを「リーゼントというか、ちょっと『クリームソーダ』が入ってます」と紹介してた。「リーゼント」に「クリームソーダ」って発想...つっこ、歳バレるよ(苦笑)。私と歳があまり離れていないとみた!(笑) この後、アコースティックコーナー最後の曲として“カメリア”が演奏されたけど、やっぱりキーボード・セクションのテープ流してるんだよなぁ...。アコースティックなんだからさぁ(苦笑)。
 アコースティックコーナーが終わると、一度ステージの灯りが消える。灯りが点いて始まったのが秘密サークル『タイガーマシーン』のテーマ“進め☆タイガー〜第2章〜”。J.J.が青いツナギに黄色いスカーフして、『仮面ライダー』などの特撮ヒーローっぽいカッコウしてヒーロー役になりきってる。つっこも他のメンバーみんなメガネやグラサンしてて、つっことRieさんが振り付きで“進め☆タイガー〜第2章〜”熱唱。一部のファンもつっこたちの動きに合わせ、振り付きで踊ってた(笑)。石原さんと山田さんはちゃんと楽器演奏してたけど(笑)。バカバカしくも楽しいこの曲が終わると、最新シングルの“人形”。軍服姿にペイントギター...“人形”のジャケットそのまんまのつっこ。この曲でもイントロやアウトロのオルゴールのS.E.のテープ流してたと思うけど、もうここらあたりになると、テープ流してるのは気にならなくなった(苦笑)。♪笑って〜笑って〜と 「激唱」した“人形”が終わると、ギターを交換し、暑くなったのか軍服の上着を脱いでTシャツ姿になったつっこ。次の曲は“人魚”。さらにはハード・ロッキンな“Butter Fingers”が続いた。「ナツメロカバー〜!」と、つっこが叫んで始まったのは、山口百恵の“秋桜”。原曲のイメージに似つかわない激パンクなアレンジ(苦笑)。「“トムパンクス”!」と、つっこがぶっきらぼうに曲名を叫んで始まった“トムパンクス”はその名のとおりパンクな曲。新曲にもかかわらず、サビの部分は観客も♪トムパンクス〜!と盛り上がってた。“人形”からのロックな曲を連チャンで演ったあたりがこの日一番盛り上がった。“トムパンクス”が終わったところでギターを降ろしたつっこ、「昔から私はライオンが好きで...。逆風吹いた時なんか(ライオンの)たてがみ邪魔じゃないかと思うけど、切ることも取り外すことも出来ない。ライオンのたてがみのように切ることも取り外すことも出来ないような特徴を持ったひとが、私は、好きです」などと、好みの人物像(好みの男性像かな?...笑)を語ったつっこ。新作から“ライオン”を披露。「最後の1曲になりました。“巨大獣”」と曲紹介して、そのままギター無し/ヴォーカル専念で“巨大獣”を歌ったつっこ、自分の歌うべきヴォーカル・パートがすべて終わるとバンドが演奏中にもかかわらず観客に深々とおじぎする。観客のほうもつっこがこれでステージを去るのを察知し、つっこに拍手。この観客の拍手に送られて、つっこはステージを去っていった。バンドも演奏終えてステージを去ると、フロアにはオープニングに流れた“菩提樹”のインストが流れた。そのインスト・ヴァージョンの“菩提樹”に合わせながら観客が手拍子してるところに、「以上をもちまして、本日の公演はすべて終了いたしました」などと、つっこ自身のアナウンスでライヴの終了が告げられた。会場で販売されてるTシャツなどグッズの宣伝をひととおりすると、つっこから最後のメッセージ...「12月4日発売の『MEG LION』よろぴくね☆」(笑)。「よろしくね」じゃなく、「よろぴくね☆」(笑)。
 CDで聴けるサウンドの再現にこだわるあまり、テープ類多用してたのがずごく気になった。こんなの気にするの、私だけ?(苦笑) CDでのアレンジにこだわらず、ライヴならではのナマナマしさを前面に出し、もっとロックロックしたほうが良かったかな。ファンもつっこにそれを期待してるハズさ。

【SET LIST】...'02.12.1 金沢・AZホール
1. 菩提樹
2. スナイパー
3. B. G.〜Black Guitar + Berry Garden〜
4. HONEY?
5. 時計台の鐘

〜本日のアコースティックコーナー(3品)〜
6. BOGGY!
7. 刺青
8. カメリア

9. 進め☆タイガー〜第2章〜
10. 人形
11. 人魚
12. Butter Fingers

〜ナツメロカバー〜
13. 秋桜 (山口百恵のカヴァー)

14. トムパンクス
15. ライオン
16. 巨大獣

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