ヒロくんのLIVE REPORT '03 PART 10 ガガガSP
(めあて企画 vol. 3「春嵐の候」)

 この3月に、メジャー第2弾アルバム『オラぁいちぬけた』をリリースしたガガガSP(以下、ガガガ)が全国ツアーの一環で富山県の魚津にあるライヴハウス・SOUL POWERでギグを行なうというので、観に行って来た。この日のガガガのライヴは、地元の音楽好きの女のコ2名(アカリさんとかずみさん)による『めあて企画』が主催したイヴェント「春嵐の候」の一環として行なわれ、ガガガの他に、セックスマシーン、DYNAMITE SOUND SYSTEM、花団、Seatle standard Cafeの4つのバンドが演奏した。したがって、ライヴ開始は4時という早い時間。200人規模のハコはガガガ目当てのキッズで満杯だ。
 4時から、石川県から来たというSeatle standard Cafeがステージに上り、演奏。ベーシストがリード・ヴォーカルをとる3人編成で、グリーン・デイからの影響が大きいようなポップ・パンク・サウンドを披露。いくらか曲を演った後、ベーシストが「僕たちは石川県から来たんだけど、僕は富山出身なんです。小杉高校に通ってました」などと、MC入れた。このMCの効果はテキメン! 同県人ということで親しみを感じたのか、それまでよりも露骨にキッズの反応が良くなったんだもんなぁ〜(笑)。最後に「カヴァーなんだけど、イイ曲なので聴いて下さい」との紹介で始まった曲は、岡村孝子の“夢をあきらめないで”。キィが致わず、歌うのが苦しそうに聴こえたのは私だけでしょうか?(苦笑)。Seatle standard Cafeは5〜6曲演って、ステージを降りた。
 次にステージに上ったのは、京都から来たという4人組の花団。登場するなり、太めな(笑)ヴォーカルのひとが金髪カツラ被って「月に変わってお仕置きよ!」と一発カマしてから始めたことからも分かるように、かなりお笑いの要素を取り入れたコミカルなバンド。オープニングから♪パッパッパラ〜パラ〜パラ〜パッパッパラ〜パ〜とノリが良い(笑)。音的には、'70年代の歌謡曲を想い出した(笑)。観客に「赤やなぎ、青やなぎ、黄やなぎ、黒やなぎ」と連呼させ(早口言葉?)、「それだけ口が廻るなら、ガガガの歌も歌えるな」(笑)と言ったりして観客を笑わす花団。彼らの前に演奏したSeatle standard Cafeはいかにも北陸の純朴な兄ちゃん...という感じで、MCもぎこちなかったんだけど、彼ら・花団は京都のシーンでもまれてるためか、とっても芸達者。客の笑いを取ることに徹したコミカルな演出や、メンバー間の掛け合い漫才ふうなトークなど、観客の間からは笑いが絶えなかった。あまりにもやり過ぎで、最後のほうではクドさも感じたケド(苦笑)。
 3番目にステージに上ったのは、DYNAMITE SOUND SYSTEM。、ギタ−2本とベースとドラムに、ヴォーカル...というか、MCが2人居るという今ふうの編成。2人のヴォーカルが歌...というか、ライム...を掛け合う。編成こそ今ふうだけど、バンドが出すサウンドは、ロカビリ−風味があったりして、どことなくレトロ調が漂うロック。リーダーのヴォーカルのひとが、ギターのTAKUROがこの日誕生日を迎えたことをみんなに告げ、会場に居るみんなで“Happy Birthday”の合唱。ギターのTAKUROはこの日で25歳になったそうだ。上半身裸で、頭が金髪のリーダー・TOSSYが言う。「オレは34歳なんだ。TAKUROが25で、他の奴らは21だ。おかしいと思うだろ?」 ...リーダー・TOSSYは、このライヴハウス・SOUL POWERのオーナーさんでございました...(苦笑)。この後も「魚津って街は、人口4万人しかいないんだ。そんな小さな街にライヴハウスなんてムリだと言われた。それなのにこのライヴハウスを続けて来られたのは、出演してくれたバンドのお蔭だ」などと言って、「出演してくれたバンドに拍手〜!」と、キッズたちに拍手させた。さらに「(めあて企画の)アカリとかずみに拍手〜!」、「今日来てるお前ら、自分自身に拍手〜!」などとキッズに拍手させていた。オーナー自ら、ステージに上がって地元シーンを活性化させようとする意気込みにはホント、頭が下がります。
  SOUL POWERのオーナーのバンドに続いてステージに上がったのは、セックスマシーン。4人組の彼らは、完全にガガガのお友達バンド。ガガガの新作にもゲスト参加してるし(笑)。メタリカの“Buttery”をオープニングSEにし(笑)、演奏始めたセックスマシーン。ヴォーカルの森田剛史は、ルー大柴に東 隆博(TAKE 2)を足して2で割ったようなルックス(笑)。「僕らセックスマシーンは、曲を演奏する前に丁寧な曲の説明をすることで評判になっている」などと言うとおり、ホントに1曲1曲演奏する度に次に演る曲の丁寧な説明を入れる。その説明も、ルックスどおりルー大柴にTAKE 2の東を足して2で割ったような濃い芸風で、かなりコミカル。お蔭で場内、笑いが絶えなかった。前に演奏した花団もそうだったけど、関西のロック・シーンで鍛えられたバンドは、北陸のローカル・バンドとひと味もふた味も違う。観客を楽しませる術を持ってるね。
 セックスマシーンがステージを降りたのは6時過ぎくらいだったけど、メイン・アクトのガガガの出番ともなると念入りにサウンド・チェックをやるのか、セット・チェンジに時間がかかった。7時前くらいにヴォーカルのコザック前田以外の3人のメンバーが会場入り。フロアを埋める観客の間を縫ってステージに上がる。書き忘れてたけど、SOUL POWERには楽屋が無いので、出演者も観客の居るフロアからステージへ上がり降りする仕組み。バンドの準備が整ったところで、トレードマークの鳥打帽被ったコザック前田が会場入り。「コザック! コザック!」という観客の声援受けながらフロアを抜け、ステージに上った。ステージ上にガガガの4人が揃ったところで演奏始まった曲は“雪どけ”。次に“津山の夜”を演ったところで、ファンから黄色い歓声が(主に、ベースの桑原クンに)とぶ。この歓声に対し。「『キャー』とか『ワー』とかいう声がバンドをダメにするんですよ!」と毒を吐くコザック前田。他にも、「『カッコイイ〜!』って言ってくれるコがみんなオレとセックスしてくれればな〜んも問題ないんやけどな!」というセリフも吐いてたな(笑)。
 コザック前田から「敬愛するメガマサヒデさんの曲」という曲紹介があって始まったのは、“一人ぼっちの世界”。この曲が終わると、ギターの山本クンが「僕は親からもらった『山本 聡』という名前があるんやけど、改名しようと思ってます。だけど事務所から『コミックバンドじゃないんだから!』と止められてるんですよ。みんなから署名が100人分集まったら改名出来るんじゃないかと思ってるんで、物販のところで署名お願いします」などと観客に署名のお願い。すでに山本クンはどういう名前に変えるか決めていて、自分のギターの裏側にペイントしとりました(苦笑)。「ガッタ山本」ですか?(苦笑)
 パンク調全開の“日本語パンクロックの諸君達を語る”が披露されると、会場のステージ前あたりに居るファンが飛び跳ねて盛り上がる。ガガガの出番の前から、SOUL POWERのなかには熱気がムンムン充満してて、その場に居るだけで汗ばむくらいだったけど、ガガガの演奏が始まると、それまで以上に暑くなり、息苦しさすら感じ始めた。この暑いハコのなかには一応冷房が動いてたんだけど、天井の送風口から送られる冷風が、まるでドライアイスからの冷気のようにもやもやと動いてるのが分かったくらいだ。次の曲も、新作『オラあいちぬけた』からの曲“声”。この曲が終わると、桑原クンが観客に言った。「みんな『smart』という雑誌を知ってますか? (ファンから「知ってる!」などと反応がある) その『smart』という雑誌で、『日本一の弱男』を決める企画があるんだけど、『我こそは弱男!』って名乗りを上げるひと、居ませんか?」 こう訊かれて、「自分は『弱男』だぁ〜!」と名乗りを上げるひとがそう簡単に現れるハズも無く、桑原クン、「じゃあ、このなかからひとり選ばせてもらいますいよ」 もしかしたら、自分が選ばれるのでは???...と、私も一瞬ビビったが(苦笑)、「キミなんかどうかなぁ〜?」と、桑原クンが選んだのは、ステージ中央3列目くらいに居た10代男子。ステージに上げられた彼は、桑原クンに名前を訊かれ、彼女が居るか訊かれ(「居ません」との答えに、「(弱男にふさわしいので)いいですねぇ〜」と、ますます喜ぶ桑原クン)、さらに顔写真を撮られていた。「ライヴが終わったらあそこの物販のところに住所と名前を書いていって下さい。もしかしたら、いいことがあるかもしれません」と桑原クンに言われたところで、その10代男子はステージからフロアに戻った。
 『弱男』が決定した後、今度はコザック前田のMC。「実は、僕らはオリコン・チャートのTOP 10に入ったことがありまして(ここで、観客から拍手)、『歌の大辞テン』という番組でですね、徳光というオッサンが発音しにくそうに『がががすぺしゃる』などと言ってたわけです」などと、徳光和夫を皮肉った後(苦笑)、その「オリコン・チャートのTOP 10に入った」曲“晩秋”を演奏。さらに、阪神大震災の鎮魂歌“満月の夕”を「あんたたちには関係ないかもしれないけど、演らせてください」と丁寧な断りを入れた上で演奏。阪神大震災については日本国民すべてが心を痛めてたワケで、「あんたたちには関係ないかもしれない」とまで言う必要は無かったと思うケド...。
 場内の熱狂ぶりにますます暑さが増していく。ただ暑いだけじゃなく、空気が薄いような...。人気曲の“卒業”の演奏中、コザック前田が歌をかなり端折った。空気が薄くて、歌うのすら苦しいのか? 観客から「酸素欲しー」という声も飛び交い始める酸欠状態。「キャパ50人のところに150人入ったことありましたけど、その時より凄いです!」とはコザック前田の弁。ヒット曲“国道二号線”が終わった頃には、状況はさらに悪化。コザック前田はもうヤケクソになっており、(空気が薄くて)「飛騨山脈状態」とか「バンド結成6年目にして初めて酸欠状態になりました!」とか口走ってた(笑)。そしてやってきた最後の曲。「僕は詩集なんかほとんど読まないけど、音楽に上手く詩を載せるひとが居るんです。小谷美紗子さん」 ここまで言えば演る曲は分かる(笑)。私がガガガの存在を知ったキッカケの曲、小谷美紗子のカヴァー“明日からではなく”だ。新作中心のセットだから、この曲は演らないと思ってただけに、この曲が演奏されてうれしかった。曲のエンディング(小谷ヴァージョンにはない歌詞の部分)で♪勿体無いとか〜ムダなことだとか〜僕は思わな〜い〜決して思わな〜い...と、ファンの間から大合唱が起こった。この曲は(小谷カヴァーとしてではなく)ガガガのレパートリィとしてすっかり認知されてるようだ。ここでライヴはお終い。ガガガのメンバーたちはステージから降り、フロアのファンにモミクチャにされながら会場から出ていった。「アンコール! アンコール!」とアンコール・コールするファンも居たけど、あのまま続いてたら、酸欠で倒れるファンも出たんじゃない? 私も、頭の血管ブチ切れて倒れるんじゃあ...と身の危険を感じてたし(苦笑)。

【SET LIST】...'03.5.10 魚津・SOUL POWER
1. 雪どけ
2. 津山の夜
3. 一人ぼっちの世界
4. 日本語パンクロックの諸君達を語る
5. 声
6. 晩秋
7. 満月の夕
8. 卒業
9. 国道二号線
10. 明日からではなく

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