消えた『幻の名盤』を追って

File #3

MR. MISTER--Welcome To The Real World
Mr. ミスター『ウェルカム・トゥ・ザ・リアル・ワールド』
(1985年、国内盤 : BMGファンハウス BVCP-7357)
1. Black/White 2. Uniform Of Youth 3. Don't Slow Down
4. Run To Her 5. Into My Own Hands 6. Is It Love
7. Kylie 8. Broken Wings 9. Tandent Tears
10. Welcome To The Real World

 '80年代の音楽をふだん聴くかというと、まず聴かない。私にとって、いわゆる『青春時代』とリンクする大切な時代の音楽だから、嫌いじゃあないけど、1980年代特有のきらびやかなシンセサイザーの音が今の耳にはとても恥ずかしく響いてくる。「うわっ、恥ずかしい〜! やめてくれよォ〜」というのが'80年代のサウンド・プロダクションに対する今の私の偽らざる本音だ(笑)。
 で、今回取り上げたMr. ミスターはその'80年代の中頃に登場し、一世を風靡したアメリカの4人組。メンバーは
 Richard Page (vo. b.)、Pat Masterotto (ds.)、Steve Farris (g.)、Steve George (key.)
 ペイジスなるグループで活躍してたリチャード・ペイジが核となったこのバンド、1984年にデビューした時は、その奇妙なバンド名がたまに物笑いのネタとして登場したくらいでサッパリ話題にならなかった(それでも、『Billboard』のHOT 100 singles にランクインしてる)。が、1985年リリースの本作(2nd)で大ブレイク。“Broken Wings”と“Kylie”の2曲が全米No.1に輝き、“Is It Love”もアメリカでTOP 10ヒットを記録。この飛ぶ鳥を落とす勢いでもって、このアルバムも最終的には全米No.1を獲得し、天下獲りを果たした!!! 当時、洋楽に興味がない友達からも言われたもんな。「最近、洋楽にはヘンな名前のヤツらばかり出て来るなァ...。a〜haにMr. ミスター」って(笑)。これには私、「ザ・ザってのも居るよ〜」って返しておいたけど(笑)。ま、当時は『洋楽興味無し人間』にも名前が轟くほど、勢いがあったんだよなあ...。
 ただ、あまりにも急激に売れたため、当時は他の同業者のインタヴューで、『悪い音楽を演ってる例』として、フォリナーと並んでよく引き合いにだされてた。今から振り返っても「kylie eleison」という文句が連呼される“Kylie”(“キリエ”ね)はアザといと思うし...。ただ、売らんがためのアザとさが目に付くのは“Kylie”くらいだし、“Is It Love”は当時、大好きだったよ、私。ただ、今現在は、先ほどの述べたのと同じ理由で「ダサくて聴けない」けど(笑)。あと、“Broken Wings”はキーボードが抑え気味のため、2000年の今でも十分に聴くに耐えるサウンド・プロダクションしてると思う。“Broken Wings”のように時代を越えても古臭さを感じさせない曲こそ名曲だよ!
 で、肝心のMr. ミスターの演ってる音は...というと、アメリカのバンドにしてはどこか陰をもった(夜のイメージ)オーソドックスな歌モノ・ロック。当時、イギリス出身ながらアメリカでのみ売れていたフィクスってのが居たけど、ちょうどこのフィクスと通づるモノがあるサウンド。要は、アメリカン・バンドなのに英国的湿り気があるってこと。
 で、Mr. ミスター、この大ヒット作に続いて'87年に3rdアルバム『ゴー・オン』をリリース。ところがものの見事にズッコけてしまい、元のとおり、バンド名がたまに物笑いのネタとして登場する存在に逆戻り...。となると、他の同業者のインタヴューでも『良い音楽を演ってるのに世間が振り向いてくれなかった例』として、名前が挙がるようになってしまった(笑)。
 この後、バンドは解散の道を選んだようだ。リチャード・ペイジの名前をたま〜に聞くこともあるけど、今、一番音楽シーンの一線で活躍してるのはドラマーのパット
マステロット。'94年に復活再始動した6人編成キングクリムゾンの2ndドラマーとして参加。ビルブラッフォードが辞めた今では、キングクリムゾンの『正ドラマー』の地位を確保して、大活躍中〜。

(2000.8.31)

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