消えた『幻の名盤』を追って

File #7

CHRIS DeBURGH-- The Getaway
クリス・デ・バー『ザ・ゲッタウェイ』
(1982年、import : A & M CD-4929)
1. Don't Pay The Ferryman 2. Living On The Island
3. Crying And Laughing 4. I'm Counting On You
5. The Getaway 6. Ship To Share
7. All The Love I Have Inside 8. Borderline
9. Where Peaceful Waters Flow 10. The Revolution
11. Light A Fire 12. Liberty

 私は中学2年生から高校1年までの約3年間、Billboard のチャート・マニアやってまして(笑)、ラジオ日本の『全米TOP40』を毎週土曜の夜、欠かさずに聴いてました(笑)。今でも、湯川れい子先生の姿をTVとかで拝見したり、ラジオでお声を拝聴する機会があったりすると、身の引き締まる思いがします(爆笑〜!!!)。ま、冗談はさておき、一般の音楽ファンや洋楽ファンは殆ど知らないのにBillboard のチャート・マニアだけがよ〜く知っている名曲というものが世の中には多く存在します。今回取り上げたクリス・デ・バーの'82年作『ザ・ゲッタウェイ』のアタマを飾る“Don't Pay The Ferryman”なんかもその典型でしょう。ちなみに、この曲、『Billboard Single Hot 100』で1983年7月2日付で最高位34位ね(笑)。当時、LPもちゃんと日本発売されてるんだけど、彼のこととこの曲のこと知ってるひとはよほどの通の洋楽ファンですよ、チャート・マニアやってない限りはね(笑)。

 

このひとがクリス・デ・バー

 クリス・デ・バーってひとは、英国王室の流れをくむ名家出身のシンガー/ソングライターで今でもヨーロッパを中心に活躍中のハズ。アルバム聴けば解るとおり、この“Don't Pay The Ferryman”って曲だけがハード・ロック的なエッヂが効いた曲になっていて、他の11曲は「いかにもシンガー/ソングライターじゃのう」といった感じの佳曲。当時の私はこのハード・ロック的ドライヴ感に魅せられてこの曲メッチャ気に入ってたんだけど、このアルバムで聴けるヴァージョンはクリス・デ・バーってひとの本質からかけ離れてると言わざるを得ないよね。
 この曲がもう一度脚光を浴びた時があります。1986年5月17日にアイルランドで、U2やシン・リジィ、クリス・レアやエルヴィス・コステロなどが参加して『セルフ・エイド』なる失業者救済チャリティー・イヴェントが行われたんだけど、このチャリティー・イヴェントにクリス・デ・バーも参加して、この“Don't Pay The Ferryman”を披露してます。この時の模様は『ライヴ・フォー・アイルランド』という題でレコード化されて'88年に日本発売もされたけど(ワーナー・パイオニア 32XD914)、ここで聴ける“Don't Pay The Ferryman”はギター1本の弾き語りに近いヴァージョンだったと記憶してます。いずれにせよ、このチャリティー・アルバムで聴けるヴァージョンのほうがクリス・デ・バーってひとの本質を表してるってことで。
 なお、この“Don't Pay The Ferryman”のサビの部分の歌詞は...。

♪Don't pay the ferryman, Don't even fix the price, Don't pay the ferryman, Until he gets you to the other side 〜

 『渡し守に前払いしちゃいけない。いくら払うかも前もって決めちゃいけない。君がきちんと対岸に運んでもらうまで』っていう意味になると思うんだけど、こんなに意味深な歌詞だとは知らずに今まで居ました。ウ〜ン...。
 このアルバム『ザ・ゲッタウェイ』のプロデューサーは当時、フィクスを手掛け、この後、ハワード・ジョーンズを大ヒットに導き、さらにはスティーヴィー・ニックスを手掛けた際には彼女と浮き名も流した(笑)'80年代を代表するプロデューサー、ルパート・ハイン先生。私にとってはRUSHのアルバム手掛けたプロデューサーとして印象残ってるんだけど(笑)、このアルバム収録の“Don't Pay The Ferryman”がクリス・デ・バーの本質離れてハード・ドライヴィンなのは、ハイン先生のしわざかな???...と思ったりします(笑)。

(2000.11.4)

INDEX