消えた『幻の名盤』を追って

File #10

FRENTE !-- Marvin The Album
フレンテ!『オーディナリー・エンジェル』
(1994年、BMGファンハウス BVCP-732)
1. Girl 2. Labour Of Love 3.Ordinary Angels 4. Lonely
5. Most Beautiful 6. Cuscutlan 7. Pretty Friend
8. No Time 9. Reflect 10. Explode
11. Accidently Kelly Street 12. See/Believe
13. Dangerous 14. Bizarre Love Triangle

 1994年にこのアルバム『オーディナリー・エンジェル』でワールドワイド・デビューを果たしたオーストラリアのバンド、フレンテ!は、女性ヴォーカリストのアンジー・ハートをフロントに立てた4人組。このアルバム『オーディナリー・エンジェル』リリース時のメンバーは、アンジー・ハート(vo.)、そのアンジーの元・恋人で、別れた後も音楽パートナーのサイモン・オースティン(g.)、そして、ティム・オコーナー(b.)と、マーク・ピクトン(ds.、リコーダー)。


『オーディナリー・エンジェル』リリース時のフレンテ!

 当時の日本では『フレンテ!』っていうバンド名は、「『おでこ』っていう意味だよ〜」というふうに紹介されてたんだけど、実際のところは、スペイン語で『解放戦線、ゲリラ』という意味らしい(笑)。そんなコワい意味を持つフレンテ!の音楽性は、バンド名に反してアコースティックな音造りが特徴。エレクトリックで(電気通して)演奏してるんだろうけど、アコースティックに聴こえます(笑)。ただ、アコースティックっていっても、『四畳半フォーク』のような湿っぽさは微塵もなく、オーストラリアという土地柄か、カラッとした音。ザ・サンデイズのハリエット・ホイーラーや、ジュリアナ・ハットフィールドを思わせるアンジーの舌足らずで可愛く爽やかなヴォーカルもあって、一種ミネラルウォーター的爽快感がある。真夏の暑い盛りのBGMに最適。『耳で聴く扇風機』的サウンド(笑)だった。
 「こんな爽やかな音楽をやって、可愛らしい声で歌って、そしてルックスもメッチャ可愛いアンジーが脱いだ!」...当時の音楽メディア(とロック・ファン)はこの点ばかり話題にしてたような気がする。アンジーは(オージー版『SPIN』の)『JUICE』誌の表紙でヌードを披露してて、当時、P・J・ハーヴェイやリズ・フェア、ソフィー・B・ホーキンスなどヌードを披露する女性アーティストが多数出没してたものだから、それらのアーティストと一緒に話題にされ、「女性アーティストたちの考え方も変わったもんだ」という括りで扱われてた。だけど、アンジーにはP・J・ハーヴェイやリズ・フェアみたいな「女性の性を開放する!」というような確信犯的考えはなかったように思うけど。たまたま脱いだ時期が同じだっただけという...(笑)。
 このアルバムの最後に収録されてる“Bizarre Love Triangle”はニュー・オーダーのカヴァー曲(オリジナルはアルバム『ブラザーフッド』収録)で、実に爽やかな仕上がり。当時、話題になってた...というか、ひとによってはこのカヴァー曲だけ取り上げるという失礼なことしてた(笑)。私が一番好きなのは、元気な“Dangerous”です(笑)。この曲、一番ロックしてる曲だと思うんだけど、やっぱりアコースティックな仕上がり(笑)。
 この後、メンバー・チェンジを経て、バンド名から『!』が取れ、単なる『フレンテ』名義でアルバム『シェイプ』を'97年に発表した後、消息不明に...。今、何やってるの?

(2001.3.11)

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