消えた『幻の名盤』を追って

File #14

LETTERS TO CLEO-- Go!
レターズ・トゥ・クリオ『ハナ◎でGO!』
(1997年、日本盤: BMG BVCG-705)
1. I Got Time 2. Because Of You 3. Anchor
4. Find You Dead 5. Veda Very Shining 6. Co-Pilot
7. Go! 8. Sparklegirl 9. Alouette & Me 10. I'm A Fool
11. Disappear

 レターズ・トゥ・クリオは解散した。レターズ・トゥ・クリオが解散したと聞いて、まず思ったのが「よかったね、ペンフレンドのクリオちゃんから返事が来て」(爆笑〜!!!)


『ハナ◎でGO!』リリース時のレターズ・トゥ・クリオ

 レターズ・トゥ・クリオっていうバンドの名前は「昔交際していたけど、今はもう音沙汰なく近況も不明のペンフレンドのクリオへ宛てた手紙」っていう意味。「昔の友達・クリオを捜すためにバンドを組んだのよ。もしも、クリオと連絡が取れたら、私たち解散するわ」って、紅一点のヴォーカリストのケイはインタヴューで語ってたんだから...(笑)。
 ボストンを基盤にしたパワー・ポップ・バンド、レターズ・トゥ・クリオが結成されたのは1990年。ダイナソーJR.やブレイク・ベイビーズやレモンヘッズなどが根城にしたこの学生の街から登場したこのバンドは最初、ギタリストのGreg McKennaたちによって結成された。紅一点のヴォーカリスト、Kay Hanleyを加えたのち、バンドは分裂。グレッグとケイの2人は新たにギタリストのMichael Eisenstein、ドラマーのStacy Jones、ベーシストのScott Reibling を加えた5人組としてレターズ・トゥ・クリオを再出発させた。1993年、ローカル・レーベルのCherry Discからリリースしたデビュー・アルバム『 Aurora Gory Alice』が好評を博して注目を集め、これを機に一気にメジャー・レーベルからの争奪戦に巻き込まれた彼女たちは、Giantレーベルと契約。メジャー・デビュー・アルバム『Wholesale Meats And Fish』を1995年に発表。これに続いて1997年にリリースされたのが今回取り上げる『ハナ◎でGO!』。
 この『ハナ◎でGO!』(「はなまるでごー!」と読みます)、日本盤のジャケットは左のようになります。輸入盤のジャケットと比べると、ケイのキュートさを全面に出して売り出そうとした意図がよく汲み取れます(笑)。ちなみに『ハナ◎でGO!』という表記は正しくなく、ホントは『ハナ◎』は『花丸のイメージ』です(笑)。ワザワザ準備すんの面倒だから、当時の音楽メディアも、今回の私も『ハナ◎』で済ませとります(笑)。で、この頃、レターズ・トゥ・クリオにつけられたキャッチ・フレーズが『ボストンのジュディマリ』!!! ハハハ。たぶん、レコード会社の仕業でしょう(笑)。さらにレコード会社、キャッチコピーのほかに、この『ハナ◎でGO!』の収録曲にワケの解らない邦題まで付けてます。1.ピチピチ熱愛時代 2. 恋はヘトヘト 3.まかせてアワ・ラヴ 4. ふりむいてよ 5. なぞなぞ君 6. ラヴ。パイロット 7. ハナ◎でGO! 8. 私はスパークルガール 9. おわちゃったふたり 10. Getしちゃうの巻 11. 消えちゃって、消えないで...上の原題と比較してみてくださいな(笑)。このレコード会社の売りに出そうという努力、ここまでやると逆に足ひっぱったんじゃあ...。
 私がこのアルバム買ったのは1998年の1月、まだ日本盤が出る前。渋谷のタワレコのギタポ・コーナーでプッシュされてるの見て(笑)。プロデューサーがRUSHを手掛けたピーター・コリンズだったから(笑)。ピーター・コリンズってひとは他にも、ボン・ジョヴィとかインディゴ・ガールズやジュエルなど、無節操に手広げとります(笑)。あと、このアルバムには、ボストンつながりなんでしょう、なんとまあ元・カーズのグレッグ・ホークスが
“Anchor”とI Got Time”の2曲でキーボードで参加しとります。
 で、肝心の音楽だけど、インディー・ギター・ポップに分類されますが、パワーポップです。かなりバックの演奏がうるさめ。このレターズ・トゥ・クレオと音楽性の似てるアーティストとしてザ・マフスの名前挙げてんの見たことあるけど、これなかなかイイところ突いてる(笑)。パンクな要素とドラ猫ヴォーカル足せばそのまんまザ・マフスです、ハイ(笑)。ま、フー・ファイターズが女性ヴォーカルになったとか、カーディガンズが筋力アップしたとか、他にも表現思い付きますが、やっぱりザ・マフスかな。あ、そうそう、このアルバムのレコーディング前にドラマーのステイシー・ジョーンズがヴェルーカ・ソルトに加入するため、バンドを離れてるんだけど、そういうつながりゆえが、ヴェルーカ・ソルトにも似てるね。で、彼女たちの魅力はやっぱり、ちょっと舌足らずなコケティッシュなケイのヴォーカルだね。後ろの演奏がかなり荒めなんだけどそれを打ち消してポップな印象を与えてくれます。個人的にはこのアルバムだと、1曲目の“I Got Time”と“Veda Very Shining”が大好き。
 この
レターズ・トゥ・クレオ、レコード会社の意気込みと裏腹に日本では無名な存在で終わってしまったんだけど、彼女たちの名前は意外なところで取り沙汰されてます。あのハード・ロック/ヘヴィー・メタル専門誌『BURRN!』で『Open Your Heart』なる連載を持ってるゲーム音楽クリエイターの瀬上純氏がこのレターズ・トゥ・クレオのことをいたく気に入っていて、ことあるごとに『BURRN!』誌上で彼女たちの名前だしてるんだよな(笑)。いちど『ハード・ポップ』特集でこの『ハナ◎でGO!』の名前挙げてた(笑)。だけど、『BURRN!』編集部にはレターズ・トゥ・クレオの資料は無いようで、彼女たちだけアルバム・ジャケット載せてもらってなかったな(笑)。
 この後、1998年にもう1枚『Sister』をリリースした彼女たち、ヴェルーカ・ソルトに逃げた(今もニーナ・ゴードンとツルんでる)ステイシー・ジョーンズの後釜に、Tom Polceを加えて地道なツアー活動を続けてたんだけど、2000年5月4日、地元・ボストンでのギグを最後に解散しちゃったようです。
 ちなみに、冒頭に書いた「昔のペンフレンドから返事が来たら解散する」というのは彼女たち一流のジョークです(笑)。『記憶を失った男・ジョン・パー』みたいなモンでしょう(笑)。ホントにクリオから返事が来たから彼女たちは解散したんじゃないと思う(笑)。でも、「レターズ・トゥ・クリオは、クリオから返事が来たから解散したんだ」って思うのもそれはそれで美しくて、全然構わないんじゃないかな?(笑)。

LETTERS TO CLEO Discography
『Aurora Gory Alice』('93 : 廃盤)
『Wholesale Meats And Fish』('95 : Warner Bros. 9 24613 2)
『Go! 』('97 : Revolution/Warner Bros. 9 24688 2)
『Sister』 ('98 : Wicked Disc 1010)

オフィシャル・サイト:http://www.letterstocleo.com/

(2001.6.25)

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