File #20
WENDY
JAMES-- Now Ain't The Time For Your
Tears
ウェンディ・ジェイムス『ナウ・エイント・ザ・タイム・フォー・ユア・ティアーズ』
(1993年、国内盤
: ユニバーサル MVCM-365)
1. This Is A Test 2. London's Brilliant 3. Basement
Kiss
4. Puppet Girl 5. Earthbound
6. Do You Know What I'm Saying? 7. We Despise You
8. Fill In The Blanks 9. The Nameless One
10. I Want To Stand Forever
1991年にリリースされた3rdアルバム『リトル・マグネットとザ・バブル・オブ・バブルの対決/Little
Magnet Versus The Bubble Of
Babble』を最後に解散した英国のポップ・パンク・バンド、トランスヴィジョン・ヴァンプのリード・ヴォーカルだったウェンディ・ジェイムスが1993年にリリースした最初で(そして、今のところ)最後のソロ・アルバムが、コレ。このウェンディのソロ・アルバムは全曲、あのエルヴィス・コステロ先生が作詞・作曲(“London's
Brilliant”、“Basement Kiss”、“Puppet Girl”、“Earthbound”、“We
Despise
You”の5曲は、『コステロ妻』ケイト・オリオーダンとの共作)という珠玉の楽曲揃い。ドラム叩いてるのもアトラクションズのピート・トーマスだし、コステロ一家がバック・アップしてる感がある。
トランスヴィジョン・ヴァンプ時代には、肌の露出度の高い衣装を着て、そのお色気度と、勝ち気な発言/行動でシーンの話題を集め、1989年には2ndアルバム『ヴェルヴェティーン/Velveteen』が全英チャートNo.1に輝いたりして一度は頂点をも極めたウェンディ。“Born
To Be
Sold”というタイトルの曲を歌って、「商品になるために生まれて来たのよ〜♪」とアッケラカンと宣言したのも支持を集めた?ものだった。だけど、人気が盛り上がるのも早かったけど、落ちるのも早かった(苦笑)。1991年の3rdアルバム『リトル・マグネットとザ・バブル・オブ・バブルの対決』が商業的にコケてしまい、あっという間に解散を余儀なくされてしまったトランスヴィジョン・ヴァンプ。失意のドン底に陥っていたウェンディが、便箋8枚(!)に亘って自分の犯した過ちを書き連ね、ザンゲする手紙を書いてすがった相手こそが、コステロ先生!!! ウェンディ自身も、全く面識の無い人間にそこまで赤裸々な告白を送っていいものか逡巡がなかったわけでも無かった...と、当時のインタヴューで話してたけど、このウェンディの懺悔に対し、「ソロ・アルバムが作れるくらいの曲が書けたから、よかったら使ってくれ」と太っ腹な返事を寄越したコステロ先生。こうして、コステロ先生書き下ろしの名曲群を手に入れたウェンディが嬉々としてレコーディングに臨み、リリースしたのがこのアルバム。このアルバムのプロモーションでは、もう肌を露出するような服装はやめ、コステロ・ナンバーを歌うにふさわしいオトナのファッションになってました(笑)。
私は、このアルバムをリリース直後に購入。大コケ・アルバム『リトル・マグネットとザ・バブル・オブ・バブルの対決』が気に入ってた(笑)から、ウェンディの動向はトランスヴィジョン・ヴァンプ解散後も注目してました。んで、アルバムを聴いたんだけど、アルバムのアタマの“This
Is A Test”と“London's
Brilliant”の2曲は、元・ポップ・パンク・バンドのヴォーカルらしいイケイケ・ナンバー。出だしから絶好調〜!!! 「オッ! コレ、いいね」とノリノリ(笑)になって聴いてた私、3曲目の“Basement
Kiss”のイントロにさしかかる。いかにもコステロらしいバラード調のイントロだ。「おおっ! 次はバラードかぁ? イイね〜」と思いながら聴いてると...ウェンディの歌が入った。♪Lucy
Grace can't show her face down in the North End Road〜for in
Belgravia〜....。...これ聴いて、私はズッコケました(笑)。あまりの歌のヘタさに(爆笑〜!!!)。私が歌ったほうがマシだと思った(笑)。だけど、繰り返し聴くうちに、ヘタな歌にも味があることが気付いた(笑)。この“Basement
Kiss”、今ではアルバムの中で一番好きな曲(笑)。
その他に、“Do You Know What I'm
Saying?”もいかにもコステロらしいバラードだし、アルバム・ラストの“I
Want To Stand
Forever”はストリングス導入の仰々しい曲けど、やっぱりウェンディには最初の2曲や、“Puppet
Girl”、“Fill In The
Blanks”のようなパンキッシュで元気なロック・ナンバーのほうが似合うし、安心して聴いて居られる(笑)。しょーじきに言うけど、私はこのアルバムをコステロ先生のどのアルバムよりも愛聴しとります(笑)。他人に提供するからって手を抜いてないし、楽曲の質は高いッス。よっ! さすが、コステロ先生!(笑)
コステロ先生から書き下ろしの楽曲群を頂いたというのに、このアルバムは彼女のキャリアに対してプラスに結びつくことは、残念ながら無かった。お色気/露出度/過激発言などを売り物にしてたウェンディが突如オトナの女にイメチェンしたせいで、多くのファンはついて来なかったのだろうか? 一度決まってた来日公演が中止になるほどだから、コステロ先生がらみの話題性はあっても、本格的に支持を集めるには至らなかったようだ。このアルバムの後、彼女が音楽シーンからすっかり姿を消してしまい、音沙汰無くなったことが何よりも如実にそれを証明してる...。
コステロ先生も、「せっかくの書いた楽曲がそのまま死んでるのは勿体無い!」と思ってるのか、たまにこのアルバム収録曲をセルフ・カヴァーで歌ってる。私が気に入ってる“Basement
Kiss”もコステロ先生が歌ったヴァージョンがリリースされてる(1996年のE.P.“The
Other End Of The
Telescope”収録)らしいが、コステロ先生の完成された歌唱ヴァージョンを聴いて、せっかく「味がある」と(私の中では)認められるようになったウェンディ・ヴァージョンが「やっぱりクズ!」とその価値が暴落するのを恐れて聴けずに居るし、聴かないほうがいいかもしれない(苦笑)。
※トランスヴィジョン・ヴァンプについては、いずれ詳しく取り上げる予定。
(2002.7.24)