消えた『幻の名盤』を追って

File #23

MARTIKA-- Martika
マルティカ『誘惑のマルティカ』
(1988年、import : Columbia CK 44290)
1. If You're Tarzan, I'm Jane 2. Cross My Heart
3. More Than You Know 4. Toy Soldiers
5. You Got Me Into This 6. I Feel The Earth Move
7. Water 8. It's Not What You're Donig 9. See If I Care
10. Alibis

 1980年代の後半、具体的にいうと1987年頃から10代の女性シンガーがブームになったことがありました。デビュー曲から連続2曲『Billboard』の「HOT 100」のNo. 1ヒットを出したティファニー(1987年当時、16歳)、そして、自分で曲まで書いてた天才少女デビー・ギブソン(1987年当時、17歳)。この2人が代表例だけど、'90年代に入ってから再生したシャニース・ウィルソンや、日本だけで人気者???のアナやら、ブームに便乗して1987年から翌1988年にかけて、カワユい10代の女性シンガーたちがそれこそ雨後のタケノコのようにニョキニョキとデビューしてきたものです。
 今回紹介するマルティカは、そのブームがひと段落した1989年に日本デビューを果たした女性シンガーです。出現した時期がブームが過ぎ去った後だったため、私のなかではマルティカは、1987年からのティーン・シンガー・ブームの仲間には入ってないのですが、世の中には彼女もブームの恩恵に預かったひとりとする向きもある模様(笑)。1969年8月12日生まれの私にとって、1971年10月2日生まれのティファニーも、1970年8月31日生まれのデビー・ギブソンも「歳下の女のコ」なんだけど、1969年5月18日生まれのマルティカはあくまでも「タメ」(笑)。「同い歳」か「歳下」か...ここらへんには敏感です(笑)。さらに彼女が日本で人気が出た'89年の夏以降、すでに彼女は満20歳に達してたことになり、「10代の女性シンガー」には当てはまらない...と、私は主張したい(笑)。実は...今回この文章を書くために誕生日調べてマルティカが「タメ」だったって初めて知ったんだけど(爆笑〜!!!)、彼女の大人びたキャラクターから、ティファニーやデビギブと違ったキャラクターの持ち主って、当時からちゃんと線引きしてましたよ (笑)。
 マルティカの日本での人気は、デビュー・シングルの“
More Than You Know”の邦題が“ときめきヴァージン・ラヴ”というセンス疑うトンデモないものだったため出遅れましたが(笑)、'89年の夏に全米で大ヒット(『Billboard』の「HOT 100」で1位)を記録した“Toy Soldiers”(旧邦題“おもちゃの兵隊”。シングル化の際に“トイ・ソルジャー”に改題)で人気がブレイク。キャロル・キングの有名曲“I Feel The Earth Move”(邦題“空が落ちてくる”)のカヴァーがヒットした頃には、オーディオのCM(パイオニア、Private B7)に出演し、日本のTVでも頻繁に姿を見るような存在になってました。そして、極めつけは大ヒット・シングル“Toy Soldiers”の日本語版制作プロジェクトでしょう。当時のレコード会社のCBSソニーが、全国の6つの洋楽番組を通じてマルティカ・ファンおよびリスナーに“Toy Soldiers”の日本語歌詞を募集しました。全国の6つの洋楽番組とは、NHK札幌『ほっからんど北海道』、東北放送『男女りすなぁ若者語』、TBS『ポップン・ルージュ』、SUN-TV『Big Time Television』、RKB毎日放送『Hi Hi Hi』、そして我が地元・富山の『KNBポップス'89』です。...ということで、『KNBポップス'89』のヘヴィー・リスナーだった私はこの“Toy Soldiers”の日本語歌詞募集に応募しました(爆笑〜!!!)。自分で日本語詩考えましたよ(笑)。んで、結果はというと...。よっぽどマシな歌詞が送られて来なかったのか、CBSソニーは日本語詩をプロの作詞家に依頼するという、協力してくれたファンやリスナーたちをコケにようるような暴挙に出ました。したがって、私の力作も闇に葬られました(爆笑〜!!!)。結局、森 浩美という作詞家が日本語詩書いた日本語版“Toy Soldiers”は、日本だけのスペシャル・ミニ・アルバム『スペシャル・タッチ』の目玉トラックとして1989年の12月に世に出ます。原曲では、麻薬に汚染されていく友達たちを憂える曲のハズが、日本語版では単なるラヴ・ソングになってました(苦笑)。
 ...ということで、この“
Toy Soldiers”って曲にはメチャクチャ思い入れあります。去年、MOTOさんのホームページで『'80年代名曲TOP10』を自分で選んで持ち寄る企画に参加させてもらったことがありましたが、この曲を10曲のうちに選んだのも、必死に日本語詩を考えた想い出があるからこそでしょう。残念ながら、どんな日本語詩を書いたか、記録にも記憶にも残ってませんが...(苦笑)。
 ということで、このマルティカのデビュー・アルバム『誘惑のマルティカ』について見ていきましょう。このアルバムで聴けるサウンドは如何にも'80年代らしい、きらびやかな打ち込みが主体のガールズ・ポップ。今の耳で聴くと、恥ずかし−よーなサウンドが続きます。今の耳で聴くに耐えるのは“
Toy Soldiers”(やっぱり名曲!!!)とキャロル・キングのカヴァー“I Feel The Earth Move”だけでしょう(これは原曲が素晴らしいからなぁ〜)。オープニング曲の“If You're Tarzan, I'm Jane”では、曲名に合わせて「オイオイオ〜!」とターザンの声のような男声コーラスが入ったりして、思わず失笑...。“Cross My Heart”は、当時アイドルとして男性洋楽ファンに人気があったパッツィ・ケンジット(のちのオアシスのリアム・ギャラガー夫人)率いるポップ・バンド、エイス・ワンダーのヒット曲として知られてます。日本ではエイス・ワンダー・ヴァージョンのほうが知名度あったため、「エイス・ワンダーのカヴァー」と看做すひとが多いと思うけど、レコーディング時期がほとんど一緒ってことを考慮すると「競作」と思ったほうが正しいかもしれません。
 この後、マルティカはプリンス殿下との共作が話題となった2ndアルバム『マルティカズ・キッチン』を1991年にリリース。しかし、話題とは裏腹に大コケしてしまい、彼女はそのままシーンから消えてしまいました...。
 私のなかでは彼女は決して『一発屋』じゃないんだけど、みんなの目からみると『一発屋』の仲間なんだろうねぇ〜?

Martika Discography
『Martika』(1988)
『Martika's Kitchen』(1991)

(2003.7.1)

INDEX