−1992年
ベスト・アルバム10− by
ヒロくん (1) RIDE『Going Blank
Again』 (1)
一連の英国・ギターノイズバンドの筆頭格のライドの2nd。前作ではあまりにも同じ『色』を使い過ぎ、金太郎飴みたいなアルバムになっていたが、本作ではバラエティを意識したのだろうか、曲個々の主張がはっきりして、『単なるギターノイズバンド』からの脱皮を果した。これを否定的に捉える人もいるが、バンドの成長と好意的に受け取りたい。 (2) 前作『Orange And
Lemons』から3年振りの作品。私が◎を付けられると思った曲は“The
Ballad Of Peter Pumpkinhead”“The Smartest
Monkey”“The
Disappointed”“Crocodile”“Rock”“Omnibus”“Bungalow”“Books
Are
Burning”...と、こうなったらもう名曲ばかりになってしまう。ただ『どれか一曲』という決め手にかける。それがこのアルバムの欠点だが、それをいうのはちょっと贅沢か....。 (3) 前作『Cosmic
Thing』で再び一線に返り咲いたB'sの新作。全編ダンス・ミュージックで占められており、特に“Tell
It Like It T-I-Is”から“Good
Stuff”までの流れは強力。フレッド・シュナイダーとケイト・ピーアソンの無機質ヴォーカルの駆け引きも凄く、特にケイト・ピーアソンのヴォーカルは不景気といわれる世の中を吹き飛ばすほど能天気で圧倒される。 (4)
今年最もミュージックシーンをお騒がせした新人・マニックス。解散発言や『4Real』事件など過激な行動ばかり注目しがちになるが、肝心の音楽の方はというと、一部で言われているような『ハッタリ野郎』が作れるものではないことは確か。決して目新しい事をしているわけではないが、楽曲の良さと勢いに降参。 (5) 前作『Out Of
Time』はホーン・セクションの導入、多彩なゲストを迎えるなど、実験作的色彩が濃い作品だった。本作では従来のいメージ通りのR.
E. M.
の音を披露している。『いい加減にしろと言いたくなる程、暗い』という声もあるほど地味な作品だが、“Try
Not To Breathe”“The Sidewinder Sleeps
Tonite”“Everybody Hurts”“Man On The
Moon”などを聴くと、マイケル・スタイプのソングライターとしての才能に改めて気づく。 (6)
ロバート・スミス率いるキュアーの3年振りの新作。相変わらずのキュアーらしさは不変。この独特の雰囲気には妙な習慣性があって、一度ハマるとなかなか抜け出せない。といってもこのアルバムをこの選に入れたのは独特の雰囲気に屈したからではなく、楽曲が良いからである。特に“Friday
I'm In
Love”は素晴らしく、今年1番の名曲と私は思う。 (7)
無機質な打ち込みリズムが横行する現在のミュージックシーンにおいて、『音楽とは何か?』『ロックとは何か?』という問いに対して明確に答えを示してくれる作品。このアルバムを聴いていると、演奏者の姿が見えてくる。彼らの魂が感じられる。今のミュージックシーンでこういうのは
本当に少ない。『単なるレトロ・バンド』なる陰口も吹き払う堂々とした一枚。 (8)
アイスランド出身のシュガーキューブスの3rd。これまでの2枚の作品ですでに彼らの独自性は確立されていたものの、アルバム全体を通すと『変化球』的要素が多かったと思うが、本作では『直球勝負』に出ている。ビョルクのヴォーカルは子鹿の跳ねるがごとくはつらつとしていて、聴くものを圧倒する。彼女のヴォーカルは唯一無比だ! (9)
アメリカン・アンダーグラウンド・ミュージックシーンの帝王、ソニック・ユースのメジャー移籍第2弾となるアルバム。前作『Goo』よりアングラ臭が薄れ、聴き易くなっている。とは言ってもソニック・ユースらしさは失っておらず、聴き手にソニック・ユースの偉大さを知らしめるには充分な作品。レコード会社の作ったコピー『そにそに、くゆくゆ、うすうす』には泣ける....。 (10)
スザンヌ・ヴェガの2年半振りのアルバム。フォーク・シンガーというこれまでの彼女に対する見方を幾分修正せざるを得なくなるくらい、大胆にエレクトロニクスを導入。新しいスザンヌ・ヴェガの世界を披露している(おまけにインナースリーヴでは網タイツ姿も披露している)。しかし、従来の純フォーク路線の方が良い曲があるように思えるのだが...。 (付録)
『世界で一番有名な日本のバンド』少年ナイフのメジャー第1弾。この作品については、喜ぶ人と、『なめとんのか!』と怒る人と両極端に分かれると思う。純粋に『音楽』が好きな人は支持するが、音楽にファッションを求めている輩は怒るだろう。『本当に音楽が好きか否か』の踏み絵的作品。 ('92.12.23) ヒロくんのプロフィール...富山のローカル洋楽ラジオ番組『KNBポップス'92』の常連。この原稿は『KNBポップス'92』向けに投稿した原稿を発掘、編集したものです。
(2) XTC『Nonsuch』
(3) THE B-52'S『Good Stuff』
(4) MANIC STREET PREACHERS『Generation Terrorists』
(5) R. E. M.『Automatic For The People』
(6) CURE『Wish』
(7) THE BLACK CROWES『The Southern Harmony And Musical
Companion』
(8) SUGARCUBES『Stick Around For Joy』
(9) SONIC YOUTH『Dirty』
(10) SUZANNE VEGA『99.9 F゜』
(付録) 少年ナイフ『Let's Knife』
《総評》
'92年は個人的に残念な年となった。例年だとベスト10に入れる候補があり過ぎて、泣く泣く選外にするアルバムが結構あるものだが、今年はベスト10に入れる水準に達している作品が少なく、例年なら選外になるアルバムも入れざるを得なかった。これはあくまでも私個人の意見で中には『'92年は良いアルバムばかり出た、充実した一年だった』と振り返る人もいるだろうが....。特にヘヴィ・メタル系は4枚BEST10に入った去年と比べると特に不振だったと思う。さて、今回一番迷ったのは『1位をライドにするかXTCにするか』で、結局、将来性を買って、ライドにした。7位のブラック・クロウズは同系列のキースのソロ、イジーのニューバンドなどの代表格として選んだ。今年出た新人ではやはり、マニックスが抜きん出ていたと思う。他には、ディジー・チェインソーか。いずれにせよ、1993年には素晴らしいアルバムがたくさん出ることを期待したい。