1995年なんでもTOP10

−1995年 ベスト・アルバム10−

by ヒロくん

(1) ALANIS MORISSETTE『Jagged Little Pill』
(2) OASIS『(What's The Story) Morning Glory?』
(3) HEATHER NOVA『Oyster』
(4) MATTHEW SWEET『100 % Fun』
(5) WEEZER『Weezer』
(6) GREEN DAY『Insomniac』
(7) CAST『All Change』

(8) SOUL COUGHING『Ruby Vroom』
(9) DIZZY MIZZ LIZZY『Dizzy Mizz Lizzy』
(10) BON JOVI『These Days』

(1) マドンナの主宰する『マーヴェリック』から弱冠21歳でメジャー・デビューしたアラニス・モリセット。とても21歳とは思えないくらい、女のドロドロとした情念に彩られており、こちらの胸グラをつかんで『私の歌を聴いて!』と強要するかのような彼女のヴォーカルも21歳のものではない。マドンナが自分のレーベルに引っ張り、レッ・チリのフリーとデイヴ・ナヴァロがアルバムに参加するのもよく分かるような気がする。

(2) オアシスの2ndアルバムは前作同様、キャッチーなメロディーを持つロックン・ロールを披露している。“Hello”、“Roll With It”、“Don't Look Back In Anger”、“Hey Now!”、“Some Might Say”、“She's Electric”、“Morning Glory”、“Champagne Supernova”など、良い曲が目白押し。これだけのポップ・ナンバーを書けるノエル・ギャラガーの才能と、ポップ・ナンバーをロック・ナンバーにしてしまうリアム・ギャラガーの声に改めて感服せざるを得ない。

(3) 英領バミューダ諸島出身という異色の経歴を持つ、文字どおり新星のごとく現れた新人女性シンガー、ヘザー・ノヴァ。彼女の音楽性を誤解を恐れずに説明すれば、『スザンヌ・ヴェガの曲を演るケイト・ブッシュ』ということになるだろうか。アラニス・モリセットと匹敵するくらい今年の新人女性アーティストの中ではピカイチだが、アラニスとの決定的な違いは、アラニスに見受けられる『私の歌を聴いて!』という気迫が一切なく、一貫して『聴きたいひとだけに聴いてもらえればいいの』という姿勢を貫いているところである。ま、そこが彼女の曲を『スザンヌ・ヴェガ的』と感じさせる要因になっているんのだが...。

(4) 『うる星やつら』のラムちゃんの刺青男として有名なマシュー・スウィートの約2年振りの新作。あまりにもグランジ色が濃厚なサウンド・プロダクションのため、失敗作との第一印象をもったが、繰り返し聴くうちに楽曲の親しみ易さに降参。苦いクスリを砂糖で包んで飲み易くした糖衣錠とは逆で、甘ったるい楽曲をグランジィなサウンドで包み込んで聴きにくくしているが、それでいてもひとの心を捉えられるんだから、曲の質はもの凄く高い。

(5) あのリック・オケイセックがプロデュースしたウィーザーのデビュー盤。“Buddy Holly”を始めとして、すべての曲が1曲聴いただけで、口ずさめそうなくらい親しみ易いメロディーを持っている。バス・ドラムの入れ方も効果的。リーダーのリーヴァス・クオモのハーバード大進学のため、しばらく活動停止しそうなのが残念。

(6) 『新世代パンクの旗手』ともて囃される一方で、コアなパンク・ファンからは『アイツらはパンクじゃない』とこき下ろされたりして毀誉褒貶が激しいグリーン・デイのメジャー第2弾。疾走感あふれるポップなパンク・ナンバーが次々と繰り出されるさまは聴いていてとても小気味よい。

(7) '90年に発表した(日本盤は'91年)大傑作のデビュー・アルバムを「あんな出来損ないのアルバム、いつでも作れる」と豪語し、2ndアルバムに大いに期待を集めていたものの、その後まるっきり音沙汰のなかったザ・ラーズのジョン・パワーが新しいバンドで帰って来た。そのバンド、キャストのデビュー作は、ザ・ラーズの延長線上の作風。リヴァプール・サウンドのキャッチーな楽曲にクセの強いヴォーカルが乗るところも、まるっきりザ・ラーズ。このヴォーカル、一度耳にすると、なかなか頭から離れんわ....。

(8) BECK、G・ラヴ&スペシャル・ソース、ジョン・スペンサーらと同系統のワケワカラン系のアーティストとされているソウル・コフィング。これらのバンドの共通項は、ブルースの新解釈を行っている点とされているが、ソウル・コフィングは他の3つと違い、もの凄く知性が感じられる。BECKたちが『バカパク』なら、ソウル・コフィングは『シブ知』である。

(9) デンマーク出身の新人バンド、ディジー・ミズ・リジー。一応、ハード・ロック/ヘヴィー・メタルにカテゴライズされているが、普通のロックである。“Waterline”や“Glory”などはキャッチーなロック・ナンバーだし、特にバラードの“Silverflame”の出来は素晴らしい。ヴォーカルがちょっと弱いので、この点が今後の課題だろう。

(10) 「今更、ボン・ジョヴィでもあるまい」と思ったが、ここまで良い曲ばかり入っているアルバムを「トレンドじゃないから」という理由だけで抹殺したくない。こうなると、前作『Keep The Faith』はこのバンドにとっては大きな“汚点”だね。

《総評》
 1995年は女性アーティストが活躍した年。(コイツらは日本でしか売れていないが)シャンプーのヒット曲の如く“Girl Power”が目立った一年だった。なかでも、アラニス・モリセットとヘザー・ノヴァのデビューは特筆すべき事項である。他にもリサ・ローブなどがデビューし、マライアのアルバムは激売れしているし、ビョーク、P・J・ハーヴェイ、ジュリアナ・ハットフィールドが高品質の新作を発表。女性をフロントに立てたバンド...エラスティカ、スリーパー、SALAD etc...も登場。当分女性アーティストから目が離せない。
 もうひとつの動きとしてはいわゆる『ブリット・ポップ』の隆盛。ブラー、オアシスに続けとばかり次から次から新人が登場。ジーン、スーパーグラス、メンズウェア etc...。今のところブラー、オアシスに匹敵するバンドは出て来てないが、しばらくはイギリスから目が離せない。また、この『ブリット・ポップ』の隆盛によって、一度シーンから消えていたアーティストが復活してきたのも特筆に値する。(ブラック・グレープ、キャスト)
 そんな1995年のベストアルバムにはこの2つの動きを代表するアルバムが上位を占めた。特に、アラニス・モリセット、オアシス、ヘザー・ノヴァの3組のアルバムは特に素晴らしく、どれを1位にしてもいいのだが、アラニスを1位にした。ヘザー・ノヴァのアルバムはまた1位に推すほど聴き込んでいないので今回は3位に置いたが、1位と3位の入れ替えが起こる可能性がそのうち起こる可能性は大である。
 惜しくも選外にせざるを得なかったアルバムは、ジュリアナ・ハットフィールド、ソウル・アサイラム、ヴェルーカ・ソルト、ベリー、レディオヘッド、ティーンエイジ・ファンクラブ、エラスティカ、P・J・ハーヴェイ、ソニック・ユース、ジ・アーティスト・フォーマリー・ノウン・アズ・プリンスなどである。特に、ジュリアナとソウル・アサイラムについてはギリギリになって、ヘザー・ノヴァ、キャストとの入れ替えで、断腸の思いでBEST10か外したことをここに特筆しておく。
 今年1番の曲(Song Of The Year)はオアシスの『モーニング・グローリー』かエコーベリーの『キング・オブ・ザ・カーブ』。最優秀新人は最初は「何だ、コイツら」と思ったエラスティカ。

('95.12.27)

ヒロくんのプロフィール...富山のローカル洋楽ラジオ番組『KNBポップス'95』の常連。この原稿は『KNBポップス'95』向けに投稿した原稿を発掘、編集したものです。

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