1997年なんでもTOP10

−1997年 ベスト・アルバム10−

by ヒロくん

(1) THE OFFSPRING『Ixnay On The Hombre』
(2) LEAH ANDREONE『Veiled』
(3) MATTHEW SWEET『Blue Sky On Mars』
(4) FOO FIGHTERS『The Colour And The Shape』
(5) CAKE『Fashion Nugget』
(6) DANCE HALL CRASHERS『Honey, I'm Homely!』
(7) IDHA『Troublemaker』
(8) BELLE AND SEBASTIAN『If You're Feeling Sinister』
(9) MUNDY『Jelly Legs』
(10) BIS『The New Transistor Heroes』
(ウラの1位) HEAVENLY『Operation Heavenly』
(問題作) OASIS『Be Here Now』

(1) 『メロコア』の一番の成功者・オフスプリングの4th。どこか『もののあはれ』を感じさせる寂しげな(『BURRN!』誌の前田氏曰く「うらぶれた感じの」)メロディーを持つ曲が多く、「俺たちには明日はない。だけどそれでも進んでいかなきゃいけない運命なのさ!」と叫びながら時速200 km で疾走していくかのような爽快感あふれる曲が次々と繰り出されていく様は、実に聴いていて小気味良い。TVのバラエティー番組等で何度もSE的使われ方をされていた“The Meaning Of Life”はホント、名曲!

(2) リア・アンドレオーネ嬢のデビュー・アルバム。いちど聴いたら耳から離れない個性的な歌声、そしてピグモンを思わせる『快獣系』のルックス(これは余計か...)が実に衝撃的。アラニス・シンドロームが席巻するアメリカ出身ゆえアラニスの影響が見い出せるのは仕方ない。が、彼女が単なるアラニス・コピーでなく、リア・アンドレオーネというアーティストの個性を確立している部分が“Problem Child”や“Imagining You”といったアコースティック色の曲に垣間見られ、将来性を感じさせられる。なのに、話題にすらならないのが残念だ...。

(3)『うる星やつら』のラムちゃんの刺青を持つ男・マシュー・スウィートの6作目。前作で聴かれたグランジ的サウンド・プロダクションは後退し、親しみ易さが増した。楽曲のほうは相変わらず爽快で、マシューもいつものとおり甘く、優しさに満ちた歌声を披露している。火星の空ってこのアルバムで聴かれる世界ほどホントに青いのだろうか?

(4) 元・ニルヴァーナの肩書きも要らなくなったデイヴ・グロール率いるフー・ファイターズ(以下、フー)の2nd。某雑誌でブルース・ディッキンソンが「昔ならこれはパンクじゃなくて、パワー・ポップって呼んでた音楽だぜ」と彼らを評していたが、フーは間違い無くパワー・ポップで、乱暴に言えば『明るいニルヴァーナ』だ。ポップなのはニルヴァーナと共通だが、ニルヴァーナと決定的に違うのはポジティヴな空気があること。デイヴがもっと早く、ニルヴァーナ時代から自らの才能を発揮していれば、『あんなこと』にはならなかったのに...。

(5) カリフォルニア州の州都サクラメントを拠点とするバンド、ケークの2nd。トランペット奏者を含むオッサン5人組だが、歳を取ることの悲しさがにじみ出ていて、哀愁を誘うんだけど、何故か笑える...という『トラジコメディー』の世界を体現している。この世界の構築は若僧にはムリだし、確かな年輪の積み重ねを経てきた者のみが出せる味わい。感服しました。

(6) 自ら『ダンスホール壊し屋』を名乗るダンス・ホール・クラッシャーズ(以下、DHC)の2nd。バンド名からコワもてのハードコア・バンドを想像してしまうが、実体はエリーズとカリーナの2人の女性ヴォーカリストを看板に立てたポップ・スカ・バンド。エリーズとカリーナの2人のヴォーカルはとても息が合っていて、最初聴いたとき、ユニゾンかと思ったくらいだ。(←実際にはユニゾンではない) ゴッキゲンなサウンドに、2人の息のあったハモリが乗る彼らの音楽は fun に満ちあふれている。DHCというバンド名は、いつも聴く者を楽しませ、踊らせ過ぎてしまうので、ダンスホールの床が抜けてしまう...という意味に違いない!!!

(7) 元・ライド、現・ハリケーン#1のアンディ・ベルの愛妻として知られるイーダ嬢の2nd。元々スウェーデン出身のイーダ、ソフィー・セルマーニのようなカントリー・フレイヴァーで味付けしたフォーク・ロックをやっている。が、アメリカのアーティストのように泥臭くならないのはやはり北欧出身だからか。何の変哲のもない北欧ポップといってしまえばそれまでだが、個人的にはオルタナ聴きすぎて疲れた耳を癒すのにとても重宝しました。旦那のアンディ・ベルのハリケーン#1も悪くないけど、こちらのほうがずぅぅぅーっとイイです。

(8) アーティストの写真もなければ、インタヴューも受けない謎のスコットランド出身の7人組(らしい)。モノクロの映画を観ているかのような、はたまた淡い色づかいの水彩画を鑑賞しているかの印象を受ける雪のような純粋無垢なサウンド。そしてスチュアート・マードックの北国の朴訥な人柄が出たヴォーカル。繰り返し聴いているとジワジワきます。タイトルどおり、if you're feeling sinister な時に聴いて下さい。心が浄化されます。

(9) 映画『ロミオ+ジュリエット』のサントラに楽曲(“To You I Bestow”)が収められ、幸先の良いスタートを飾ったかにみえたが、今だに無風状態の続くイギリスの男性アーティスト・マンデイ。ウォーターボーイズ(マイク・スコット)に影響を受けたとされる英国的湿り気を帯びた歌が実にいい。

(10) 『単なるガキ向けの音楽』と切り捨てられれば『それまで』のグラスゴー出身の女のコ1人に男の子2人の3人組・bis.だが、彼女たちの音楽の最大の魅力は「自分たちの演りたいこと、ホントに好きなことをやっていること」。ハンソンなどと違い(ハンソンも悪くはないが)、こーすればウケるとか、あーすれば話題になると考えたりしたイヤラシい形跡が全く見受けられないこと。自分たちの演っていることに確信があるからこそ、彼女たちの必要以上の元気も、空廻りすることなく、私のような20代後半男のところにもしっかり届くのだ。

(ウラの1位) 私にとって、'97年1番のアルバムはオフスプリングでも、リア・アンドレオーネでもない。HEAVENLYである。このアルバム、輸入盤が出たのは'96年。国内盤はレーベル・ビート・ファクトリーから'97年中に出る予定だったが結局'98年にズレ込むことになり、『'97年の新譜』の条件を満たさなくなったので1位に推せなくなってしまったが、'97年、どのアルバムよりも愛聴した。翳りや曇りのない手作りお気楽ポップ・サウンド。お気楽ポップといえば、ヘタすれば『バカ』に聞こえそうだが、bis.同様、自分たちがホントに演りたいのはこれだ!という確信に満ちあふれているため高尚な感じさえする。音楽とは『音が楽しい』と書くが、『音楽』がホントにこれを意味するものなら、もしかしたら私はHEAVENLYで初めて『音楽』を聴いたのかもしれない(笑)。

(問題作) '97年一番の期待作だったオアシスの新作だが...。リリースから4ヶ月経った今だから言うと、あまりにも過去の自分たちの作品からのフレーズの使い廻しが多すぎる!!! 著作権上問題ないといってもここまで露骨に『自己コピー』やっていいのか? アルバムの内容じたいは素晴しいが、こーゆー作品を創る根性が気に入らん! このアルバムで初めてオアシスを耳にして、何の雑念にも惑わされず「凄い!」と興奮することが出来る新世代ファンが羨ましい...。

《総評》
 '97年に聴いた137枚の新譜のなかから選んだ私のベスト・アルバム10枚は上のようになった。HEAVENLYの作品が『'97年の新譜』の条件を満たせなくなったため、番外になったのは、すっごい心残りだが...。
 1997年の音楽シーンの動きとしては、主流といえるようなハヤリモノが無く、『何でもあり』の状態が一層強まったような気がする。そんな'97年のベスト・アルバムに私が選んだのは、オーヴァー・プロデュースな作品ではなく、あくまでも手作りな薫りのする作品。10位に選んだbis.のモットオやザ・シーホーセズのアルバム・タイトルではないが、“do it yourself”を個人的には今年のキー・ワードにしたい。文句なしの傑作は1位から5位まで。惜しくも選外になってしまった秀作としては、エアロスミス、キャスト、ザ・シャーラタンズ、ポーラ・コール、ダブスター、パティ・スミス、スニーカー・ピンプス、スーパーチャンク、スーパーグラス、ポール・ウェラーの作品で、これらの作品は6位以下の作品と比肩しうる傑作だ。これらよりも若干レヴェルが下がるものの良い作品だったのは、ブルース・ディッキンソン、TANYA DONELLY、エコーベリー、FREEDY JOHNSTON、セイヴ・フェリス、ヴェルーカ・ソルトなど。最優秀楽曲はオフスプリングの“ザ・ミーニング・オブ・ライフ”。最優秀アルバム・カヴァーは...SALADの『Ice Cream』に決まってるだろ!!!(爆笑)

('97.12.24)

ヒロくんのプロフィール...富山のローカル洋楽ラジオ番組『KNBポップス'97』の常連。この原稿は『KNBポップス'97』向けに投稿した原稿を発掘、編集したものです。

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