2001年なんでもTOP10

−2001年 ベスト10アルバム−

by Junさん

1. Let It Come Down / Spiritualized
2. Exciter / Depeche Mode
3. Things We Lost in The Fire / Low
4. Rock Action / Mogwai
5. It's A Wonderful Life / Sparklehorse
6. Origin of Symmetry / Muse
7. The Photo Album / Death Cab for Cutie
8. Here's to Shutting up / Superchunk
9. Get Ready / New Order
10. Rings Around The World / Super Furry Animals

1. ブラス、ストリングス、コーラス、ピアノ、ギターを丁寧に重ねて作られた世界は、"Ladies and Gentlemen〜"の浮遊感や、ライブ盤のようなサイケデリアは感じられないですが、壮大感ではで大勝利。来日公演でのパフォーマンスもケタ外れのインパクトで、全てにおいて2001年のベストでした。

2. アブストラクトっぽさを抑えて素直に持ち味を生かしたMartinのメロディ、前作とは比べ物にならない程に表現力を取り戻したDaveのボーカル、そしてMark Bellによるところが多いと思われる微妙な今っぽい感覚の音づくりと、溜まりに溜まったストレスを完全に吹き飛ばす大復活劇。特に、ラストの"Goodnight Lovers"の美しさはこれまでの楽曲の中でもトップレベルで感無量でした。

3. ギター、リズム、ピアノ、ボーカル、コーラスの基本的な要素で作り上げられるシンプルな構成の曲なのに、それぞれの曲のアイデンティティがしっかりしていて、飽きることのないアルバムでした。雰囲気を演出するのに重要な役割を果たしているのは音の密度の変化、特に密度が小さくなる部分で、無音を発することができる楽器を演奏することで曲を完成させた印象さえありました。今年聴いた中で最も繊細で美しく、視線をそらすことなく真正面を向いたアルバムでした。

4. キーボードとボーカルの割合を高めることで直感的になったアルバム。モノクロの映像的音楽に微妙な色をつけ、さらにダイナミックレンジの振れが狭くなっているのに、感情への直接的な訴求力は確実にアップ。美しさと力強さのバランスも絶妙で、これまでの彼らの音に心底は馴染めなかった僕にも速攻でアピールしてきたアルバムでした。でも、このアルバムが好きで、"My Father My King"がダメな僕は軟弱なんだろうなあ。

5. ギターのノイズを脱ぎ捨てたDave Fridmannワールドは意外でしたが、色々な音を使いながらも散漫な印象になっておらず、過剰な演出を避けて原曲のメロディラインの良さを生かすアプローチに大満足。シンプルで完成度の高いバッキングに頼りなさげなボーカルと主張の強いコーラスが絡み合って、そこらの内省ロックと一味違うスケール感とドリーミーさを両立させた世界を描き出しています。多少タッチは違いますが、Lowにも真正面から対抗できる美しさを持ったアルバムでした。

6. ウェットなRadioheadフォロワーといった印象の"Showbiz"のイメージをぶち壊したのが2000年のサマーソニックでのアクト。このアルバムには何かに取り憑かれたようにギターをかき鳴らしてノイズを発するライブそのままに力強さが充満していて、前作での評判を振り払おうとするようなダイナミズム溢れるボーカル、タイトなベースライン、個性の強いギターとそれぞれのアイデンティティが高いレベルで結実していて、聴いているうちに鳥肌が立ました。

7. 地味なDIY.感覚の強いギターロックですが、アレンジや効果的なエフェクトによって一つ一つの音の粒の存在感がクッキリしていて、曲と共にそれぞれの音の芯の強さを感じさせます。ボーカルの表現方法や原曲の持つ体感温度、加えられるアレンジは奇を衒わない常識的なアプローチですが、曲毎の微妙な変化がそれぞれの曲の表情の変化を生み出しています。些細なことがあるだけで大きな変化を感じるような僕らの日常、そんなシーンをキャプチャしたタイトル通りのフォトアルバムでした。

8. メロディが良くてポップ、パンキッシュかと思えばノスタルジック。楽曲の持つバラエティの豊富さを武器にしながら、ギターポップバンドが陥りやすい金太郎飴現象をアッサリと回避。家内制手工業的な素朴さに加えて、キーボードやSEによるコクと深みの付加も大成功で、スピード感も手伝って自然に身体が動いてしまうヴァイヴも感じます。レーダーチャートを作ったら正多角形になりそうなほど個々の要素のバランス感覚も良く、文句のない楽しいポップミュージックに思わずニッコリのアルバムでした。

9. サイドワークや"Beach"のサントラに提供した曲からギター中心の予感はありましたが、Electronic経由の骨っぽいギターとMonaco経由のノスタルジックなメロディのハーモニーは、7年間の空白を埋めるだけでなく、Joy Divisionからの連続性まで作り上げたかのようでした。Primalのメンバーが参加した今の音よりも、いかにもNew Order的なヘボヘボな音の方がデキがいいのも何となく納得。僕の好きな彼らの音ではなかったですが、フジロックへの登場効果もあってノスタルジック感を絶妙に刺激してくれました。

10. 予兆通り前作の"mwng"よりも楽曲のバラエティが広まっていて、驚異的なペースのリリースによる疲弊感など微塵も感じさせないアルバム。ノイズやSEなど様々な音をゴッタ煮感覚で詰め込んでいるのは相変わらずですが、曲自体が分かりやすく整理されてクセのあるアレンジでも輝きを失わない強靱さを手に入れたため、これまでになくストレートに受け入れられます。自由奔放に動き回りながら常識の枠を壊してながら進んでいく姿勢には共感です。

次点はちょっと地味ですが、Monica Queenの"Ten Sorrowful Mysteries"でした。

(received '02.1.27)

Junさんのプロフィール...デペッシュ・モードのアルバム・タイトルから名前を採ったサイト『Music For The Masses』管理人。鋭い考察によるディスク・レヴューは音楽ファンの間で評価高い。

 

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