−2002年
ベスト・アルバム10− by
Junさん (1)
The Last Broadcast / Doves (1)
意表を突く開放的なアレンジと様々な音を丁寧に重ねて曲に表情をつけるアプローチは、アルバムを通してゆっくりと感情の揺り動かし続け、アルバム後半でシッカリと共振させてくれました。期待した方向に期待以上のステップを踏んで、次の着地点を想像できないところに達しました。 (2)
感情表現をフィルタリングしたMuseのような雰囲気を持ったアルバムは、ナイーヴさと力強さをシナジックに連携させた秀逸な曲の連続で、曲の数だけギターの表情とアレンジが存在します。今現在の本流の音ではないですが、次々に分化していく本流に繰り出したカウンターは会心の一撃。 (3)
意表を突く陽性サイケデリアには唖然としましたが、Paul
WellerやLiam
Gallagherらをゲストに迎えても色褪せないオリジナリティとゲストのパワーを利用した「柔よく剛を制す」的サウンドプロダクションは見事。Dot
AlisonやHope
Sandovalを迎えた直球のキレも抜群で即効性と常習性が共存。 (4)
前作までの息苦しいまでの重さが和らいだ代わりに、開放感を感じさせるポップさをツールに加え、早速それを使った深みあるサイケデリアを展開。もちろん、それはあくまでもツールであって、根底にあるサイケ感覚は維持したままで、その辺から聞こえてくる音とは一線を画しています。 (5)
自由奔放に飛び回る突拍子ない音で描き出された世界は、完成するための最後のピースを敢えて埋めないことで不格好ながらリアリティを持った美しさと欠けた部分への没入感を演出。彼らの世界と現実世界の間の揺り戻しの頻度とタイミングも文句なく、不思議の世界を満喫。 (6) ミックスにJim
O'Rourkeを迎えて音響系へと構造改革(?)。これが意外と枯れたボーカルに嵌っていて、意外な方向への伸張が見られました。本来の土埃りを感じさせるメロディも健在で、アイデンティティの確保によってハッタリの利いた音処理の中にも埋もれず輝きも損なわず。 (7)
どこか人を食ったような態度変わってないものの、自分名義でもサントラという意識があるためかBadly
Drawn
Boyであることのアクを抑えた楽曲は、シンプルで優しいメロディがズラリ。アルバムに流れるストーリーを軸にした展開で、散漫さが取り除かれ、長所が分かりやすくなっています。 (8)
もったいぶらずに結論から入る欧米人のロジックと同じく、3分間に表現のエッセンスのみを含ませるのは最近流行の手法。とかコムズカシイことを考えるのもバカらしくなってしまうくらい、スピード感に溢れた楽しいアルバム。ただ、次作を同じロジックで乗り切れるかどうかはチョイ不安。 (9)
音と言葉の全てを抽象化しながらも袋小路に迷い込むことなく、充分にポップミュージックとして成立している器のデカサはサスガです。フジロックでの映像的なサウンドマジックは「あの場」の力を借りた部分がないとは言わないけど、通勤電車の「日常の場」でもモノの違いを証明しました。 (10) The
Verveのように、張力と揚力が均衡したギリギリの危うさは感じませんが、深みと暖かさを持つ楽曲の総エネルギーはThe
Verve時代に遜色なし。メインストリームさえオルタナティブになりそうな多様化したシーンでもブレることなく、自分の音を自信満々に鳴らしている様には感服。 The Chemical
Brothers、Underworld、Oasis、Primal
Screamらが期待を上回れなかったのを後目に、Dovesが2作連続で圧勝。新人のMinuteman、方向性が変わったDeath
in
Vegasも期待を軽く上回る作品でインパクト大でした。 (received
'02.12.29) Junさんのプロフィール...デペッシュ・モードのアルバム・タイトルから名前を採ったサイト『Mus!c
For The Masses』管理人。鋭い考察によるディスク・レヴューは音楽ファンの間で評価高い。
(2) Resigned to Life / Minuteman
(3) Scorpio Rising / Death in Vegas
(4) The Way I Feel Today / Six By Seven
(5) Yoshimi Battles The Pink Robots / The Flaming Lips
(6) Yankee Hotel Foxtrot / Wilco
(7) About A Boy / Badly Drawn Boy
(8) Up The Bracket / The Libertines
(9) Point / Cornelius
(10) Human Conditions / Richard Ashcroft