2004年なんでもTOP10

−2004年 映画 TOP10−

by Sweeperさん

1位 誰も知らない
*ドッグビル
*オアシス
*殺人の記憶
*オールドボーイ
*シルミド
*21グラム

*恋に落ちる確率
*パッション
*アフガン零年

(1位以外は順位なし)

2004年はかなり熱心に映画を見てしまった。それでも見きれていない映画、見過ごしてしまった映画が多々ある。幸運にもそうした中から見れた映画はみんな面白い映画ばかりで当然10で収まりきれない。でも無理やり押しこめるという作業もまた面白かったりする。 1位はダントツで選らびました、この衝撃は以前見た日本映画、海外の映画にも無かったものだった。以下は順位無し、「モーターサイクル・ダイアリーズ」、「午後の5時」、「ミスティック・リバー」、「ナコイスカッティ」も入れたかったけど外れてしまいました。 意図的ではないけど、韓国映画が3本入ってしまった。
コメントは当時映画を観たときの私の日記WEB文章を加筆校正したものです。

1位 誰も知らない
心が痛い映画だ、評判通り、これは凄い映画だ。 映画というよりドキュメンタリーを観ている感じだった。 ほとんど素のままの子どもの実態見たないなものを見ている気がした。 母親がどうの、周りの大人がどうの、とかいうことは映画では抑えられて、ひたすら子ども4人だけの生活を映し出している。カメラもひたすら子どもの視線の高さから撮影されていて思わずそこにいるかのような気持ちにさせる。そんな子どもたちの描写を見ているとなんというか懐かしい気分にもなる。 あういうこと自分の小さい頃よくやったよね、って。 子どもって、散らかすし、騒ぐし、わがままだし、遊びたいし、でも驚くほどクールだったり大人の嘘がわかったりする。映画ははっきりとした結論も出さないし、見る側にどう感じるのかを委ねている。

*ドッグビル
あまりに奇妙な物語。。。閉鎖的な「犬の町」で人間の業や欲の深さや弱さが曝け出される。誰もが持っていて封印している「弱者への陰湿な攻撃性」観ている側も心が痛くなる。 魔女狩りってこんな感じだったのかもしれない。

*オアシス
こんなに不器用で純粋な恋愛があるのだろうか? この話は実際にありえない故のファンタジーなのかもしれない。「大人」ってそもそもなんだろう、特に彼ら2人を取り巻く「大人」みたいにはなりたくないと思うけど、実際には自分もそういう社会コードに縛られていたりするものだ。そんな「大人」になりきれない2人は失うものがないから清々しい。

*殺人の記憶
前評判通り、実際にあった韓国での猟奇的連続殺人事件をもとにした重いドラマだった。奇をてらったりアクション的だったりということは無く、翻弄され愚弄される刑事達とその周りの人達のドラマとして緊張感ある話だった。 各シーンもかなり絵的に推考されてのバランス配置だったり映画らしい映画を見たという感じがした。黒澤映画の「悪い奴ほどよく眠る」や「野良犬」となどの映画のスタイリッシュな部分をこの映画は受け継いだかのようだ。犯人は一体誰だったのだろう? 映画ではそこは見る側にゆだねられる。ラストシーン、主人公の気持ちが見ている側の気持ちに見事に重なってくる、そう、もう見る側も迷宮に入ってしまってしまったわけだ。音楽が岩代太郎さん、この人のストリングスの使い方はいつも美しくてかっこいいのだ。

*オールドボーイ
日本のコミック原作で韓国で映画化されカンヌ映画祭で絶賛されてハリウッドでリメイクが決まっている映画。
不条理にも15年も理由も告げられずに監禁されてある日突然開放された後で復讐を誓う男の話。
韓国で映画化される意味より日本映画の匂いがするのは何故か?
これは北野武映画といわれても違和感は無い、そうキャストを換えるだけで北野映画になってしまうのだ。 そう、映画を観て30分で感じた。主役は当然タケシさんで脇を固めるのは。。。とかいうように。という事で観ているだけで「痛い」暴力が多いのだ。 痛すぎる暴力に呆れて笑ってしまうほどだ。 でもこの映画、つまらないと言っているのではない、凄く面白いのだ、とくにその原作は知らないのでこの物語のロジックが唸らされるのだ(当然詳しくは語れないのだけど)。この映画の音楽もこの映画の主人公の気持ちの揺れに合わせた弦ぽい音の作りの音楽が個人的には興味深い音だった。

*シルミド
「なんなんだよー」と何度も思った。男たちがスクリーンで演じている史実に心から動揺してしまう。冒頭のシーンから「そこにいるような」感覚、リアリティを感じさせる。死刑囚などの愚連隊をあつめて、鬼のような訓練をして北朝鮮に侵入させる殺人マシーンに鍛えられていくけど。。。「南北対立」という「負の部分」を正攻法な切り口で一級のエンターテインメントに作りしかも「この歴史を忘れてはいけない」と立派に訴えているこの映画、とてもパワフルでしかもやるせない。演じている男たちの何かに取りつかれたのような険しい目や鍛えられた背中や腕の筋肉が物語る。

*21グラム
21グラムとは、人が死んだら魂が抜けその分軽くなる重さ、というこの映画のキャッチコピーは物理的な軽さではなくその死によってその親しかった個々の人達の抱えた想いの逆説的な重さ。映画は3つの家族に課せられるそういった試練を断片で見せていくことでかえって感傷的にならずに客観的に言うなればドキュメンタリーのようなリアリティが生まれている。有名な俳優も出ているけど、ごく一般な人達のような演技で全然違和感の無く感情移入出来るドラマになった。キリスト教への信心や医療問題といったところは本題ではなく、やるせない状況に置かれた時の人のあり様を虚飾抜きで語った重いドラマだった。

*恋に落ちる確率
デンマークの新人監督の映画らしいけどすごくいい。コンピュータ処理された工業的なざらついた映像、時間の枠を時々無視する編集、そんな中で男が恋愛が迷宮に入って出て来れなくなる、仕掛けたのは誰か? 何故?いくつもの映像が重ねることで印象的な色彩を残して、シンクロする音楽が効果音のように聞え
一体この不条理な迷宮に入った男はどうするのか? そして彼はどこに行くのか? 3つの写真を選ばせたはずが逆にこの男が自動的に選ぶ事になった皮肉。劇の最初と最後にアステアの歌う「Night And Day」舞台劇のような設定も可能な話だけどコペンハーゲンのオールロケがありえない話にリアリティを与えている。
劇が終り最後のクレジットでハタと膝を打つ、この恋の迷宮に入り込んだ男って、観ている私ら観客じゃん!って。恐れ入りました。。。脱帽です。

*パッション
キリストの最後の12時間をあのメル・ギブソンが監督する。 ひたすら痛い。鞭を打たれ肉片が飛び散り杭を打ち込まれ血が流れ出る拷問映画。クリスチャンでない私が見ても苦痛の連続だった。でもこれが実際にあったのだと思うとぞっとする。反ユダヤ的、暴力的と非難的に言われるのも分るような気がする。 が今までいくつか見てきたものよりどれよりもリアルな気持ちで見れたのも事実だ。見終えるのがこれほど苦痛だったことは無い。見る側も鞭に打たれ続けたからだ。その解放感からか、劇場から出た後、何故か気持ちは重くは無かった。

*アフガン零年
原題は「OSAMA」 生活の為に少女が少年に成り切るために髪を切り、「女の子」であることを庇う少年がとっさになずけた名前。なかなか言葉が出てこない。観たシーンのリアリティが圧倒する。女性たちだけのデモがある種異様に見えるけど真っ当な事を言っているに過ぎない、「生活が出来ない、このままだと飢え死にしてしまう」。八方塞がりなアフガニスタン(というかイスラム)女性、女性には基本的に人権はないかのように、放水で蹴散らされ鶏と同じ籠に入れられる女性たち。女性たちがタリバンを恐れつつもその存在をのろい「地獄に落ちるといい」と言っていたシーンが何度も出てくる、けっして報道で見れなかった側面を映画は伝えている。一応ドキュメンタリーではないけどそのリアリティは静かに深く問いかけてくる。 
「その国の事情はその国に任せておけばいい」という人がいる。 そう言う人にこれを観て欲しい。そういったことへの打開策として武力介入するだけという発想をしか出来ない人は無視しするとして、困って貧窮している人達を救援・援助を試みても逆に捕まってしまうありさま。 移ろいやすい忘れやすいもので、もうイラクの(自衛隊だけ)ことしか報道も世間の関心もいっていない偏重ぶり。もうTVからはアフガニスタンの事は殆ど伝わってこない、戦争が無いから、爆発が無いから、テロがないから、特に大きな事件も無いから。。。 無関心を決めつけるのはもうやめよう。タリバン後のアフガニスタン映画第一作の映画は厳しい現実を反映したものになった。

(received '05.1.8)

Sweeperさんのプロフィール...ウクレレ前田さんのサイト『ぷりみてぃぶポップ』の掲示板の常連さんで、4年続けて『なんでもTOP10』に参加いただきました。どうもありがとう!

 

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