−2004年
ベスト10アルバム− by
Junさん 1.
Panda Park / 90 Day Men 昨年はCDはもっぱらAmazonで買ったのでジャケ買いや衝動買いもなく、ハズレもなかったけど、大当たりもなかった1年でした。その中から選んだ10枚は上位2枚以外は拮抗していて、日に日に順位が変わりそうです。 以下は自分のページに書いたコメントと同じです。書き直そうと思ったのですが、ちょっと時間が取れそうにないのでそのままにしてしまいました… 1.
楽曲を素因数分解して現れたメロディやフレーズに目新しさはないものの、それらの衝突により緊張感と美しさが共存した音空間を構築。静かな衝動を儚げなピアノと艶やかなボーカル、音的には対極にある潰れたドラムスで表現し、閉空間から次第に解放されていく感覚の心地良さは別格。様々なモノを飲み込みながら自己増殖を繰り返すロックに対するポストロックという言葉がピッタリ。ひょっとしたら世の中の格好良いフレーズが出尽くしても、この人達ならそれらを元に新たなフレーズを合成できるかも。 2.
近2作と比べて分厚い音のレイヤが取り払われ、生々しくもバラエティに富んだ必要十分な内容。曲のクオリティが恐ろしく高く、その楽曲群をリズム隊が支え、ギターが肉付けし、他の楽器が微妙な表情を付けて、ボーカルが主張するというシンプルな方法論との相性も抜群。ベーシックトラックは基本に忠実に、そして細部は理念に忠実にというバランス感覚は秀逸で、バンドの提唱する「ユニバーサルオーディオ」は万人向けの無難な音楽ではなく、万人が楽める刺激を持った音楽として完成。 3. Steve
LillywhiteとのコラボやiPodのCFが強烈な"Vertigo"から、年寄りの冷や水的展開を危惧したものの、冷たいギターで空気を切り裂く鋭さではなく、中年のイヤらしさと脂っぽさが滲み出たロックチューンという思いも寄らない等身大のアルバムをリリース。25年という長いキャリアの中で積み重ねてきたU2節をベースとしながら、様々な視点の「リアルタイム」を表現した楽曲は瑞々しさに溢れ、エモーショナルな曲もストイックな曲もハイレベルな全方位対応型バンドの面目躍如。 4.
内向性、外向性の両方の曲と共に非常に繊細で、安定と崩壊の臨界点で何とかバランスを維持しているような危うさ。アルバムを貫くのは、常に新しくあるべきという強迫観念から絞り出した刹那的アイデアとは対極に位置する音楽で、作り手と受け手が自然体で対峙し、音楽というメディアでコミュニケーションするという理想的なゴールを「楽曲」という最もプリミティブな要素で実現できる才能に驚嘆。ただ、内容的にレベルが高いだけに、言いようのない虚脱感と喪失感が沸き起こるという逆説が留まらず。 5.
マクロ的には流行の二世代ほど前のテイストをベースにし、ミクロ的には今の空気を取り入れたスマートなポップセンスが爆発サウンド的な特徴はアナログ的な微妙な音の揺れで、チープさの中にも音の分厚さをキッチリと構築。シンプルな楽曲とプリミティブなアレンジの食い合わせも良く、ヒネたポップさを併せ持っているところにもニッコリ。唯一アルバムで物足りなかったハチャメチャさもライブでの補完に成功し、最初はそれ程でもなかったのに今ではその魅力が増加の一途。 6.
「開放的な音に対する自主規制」は序盤から鳴らしたポップな音によって取り払われ、「柔らかさ」や「優しさ」をキーワードにした人肌の温度感の世界を構築すると共に、ポップな流れの上をフラフラと行き来する不安定な安定感という新しい面もさりげなくアピール。一方で、独特のロマンティシズムも健在で、派手さこそないものの決定力は問題なし。激しいストロボライトの明滅ではなく、光源の周りだけボンヤリと浮かび上がったようなだだっ広い音空間の居心地の良さは出色のデキ。 7.
並々ならぬ決意が伝わって来るジャケットからは想像不可能なEmbrace史上最高の泣きメロと壮大アレンジのオンパレード。Coldplay提供の楽曲もエッジ部分までキレイに仕上げたEmbrace仕様に仕立て上げたかと思うと、その他の曲では適度にザラツキ感を残して後味の悪さを感じさせず、ハイレベルな楽曲に潜みがちな減点対象を封印。ここまで意志にブレがないと、「若いくせに円熟し過ぎ」なんて文句は出る幕はなく、軟弱と言われようがオヤジ臭いと言われようが全面降伏。 8.
前作で導入した音響系アプローチを残しながらも、闇討ちのように四方八方から予想外の音が飛んで来る違和感は抑制され、遊び的要素を持ったギターサウンドへと重心移動。とは言え、スンナリと以前の立ち位置に戻ることなどもちろんなく、過去のキャリアに縛られないリベラルかつ高さ方向の進化を感じさせる展開。新旧スタイルが乖離気味だった前作から、実験的要素と元来持っていたサウンドセンスがシナジックに絡み、異質のものの衝突の面白さがバンドのDNAレベルに昇華された佳作。 9.
前作同様「モテない男の夏の想い出」的トホホ感が充満しているものの、過去への未練を抱きながらも前向きに進む意欲を表明したような印象。生ストリングスを大胆に導入することで、個々の曲が持つノスタルジックなイメージを強調すると共に自然なスケール感の獲得に成功するなど、メロディとバックトラックの有機的な結合レベルが大幅に増強。絶対的キラーチューンが減り、ジワジワ来るタイプの曲が増えたのは少々残念な一方で、着実な進歩は近い将来の大ブレイクスルーの予感。 10.
苦虫を噛み潰したような表情に隠れていたポップな面やフロアへの適応能力が顕在化した前作の流れを受け継いで、リズムへの傾倒が更に進み、繊細なイメージを持っていた楽曲も筋肉隆々へと変貌。ボーカルは相変わらずヘタレながらも、リズムは太くタイトになり、ギターはしなやかさを増して攻撃的なサウンドアプローチが見事にフィット。中盤以降は前半の衝撃が減衰して少々ダレたものの、発展途上ながら瞬間的に耳を捉えるパワーを得たパラダイムシフトの着地点は非常に楽しみ。 次点はKeane、Thirteen
Sensesのピアノを活かした2バンドのデビュー作とシングル"Bochum"が最高だったSix
By Seven、Lunaのラストアルバム、パワフルに変身したGraham
Coxonなどです。 (received
'05.1.7) Junさんのプロフィール...デペッシュ・モードのアルバム・タイトルから名前を採ったサイト『Mus!c
For The Masses』管理人。鋭い考察によるディスク・レヴューは音楽ファンの間で評価高い。
2. Universal Audio / The Delgados
3. How to Dismantle An Atomic Bomb / U2
4. From a Basement on the Hill / Elliott Smith
5. Franz Ferdinand / Franz Ferdinand
6. Antics / Interpol
7. Out of Nothing / Embrace
8. A Ghost Is Born / Wilco
9. Let's Bottle Bohemia / The Thrills
10. Split The Difference / Gomez