2005年なんでもTOP10

−2005年 音楽 TOP10−

by Sweeperさん

1位 Trio Tage / Gruntz-Lang-Salzzi
Europique Music / Tango Five
両手いっぱいの風景 / Quipu
Ruby, My Dear Richard Galliano NewYork Trio
Jumping the Greek / Charles Lloyd
ディファレント・トレイン / スティーブ・ライヒ
Special Encouner / Enrico Pieranunzi
ワンダーラスト / ソルト・カルトツガー
Day Is Done / Brad Mehldau Trio
よい天気 / カラヤ

(1位以外は順位なし)

2005年に発表されたもの、もしくはその2005年のものではないけど感銘を受けてそのベスト10にのせたいと思うものをピックアップしました。 例によってベストワンはこれ、とまあ指し示せるけど、2位と3位の違いというのはあまり意味が無いので、2位以降は順不同とさせていただきます。
その1位というのでも随分迷うのですが、「Trio Tage」 ティエリー・ラングとジョルジュ・グルンツの2台のピアノにディノ・サルーシのバンドネオンはひたすら美しくしかも躍動感溢れるピアノとのカラミが絶妙でこの音楽に逢えたことが本当にうれしい。

以下10番目までは相変わらず、偏った傾向の音楽の趣向のものを選んでいますが実際年間通じてよく聴いたものです。

1位 Trio Tage / Gruntz-Lang-Salzzi
ティエリー・ラングとジョルジュ・グルンツのピアノはひたすら美しく相変わらずディノ・サルーシは素晴らしい。なんというか理想の音楽というかこんな音楽自分でもやれたなぁ、と思うくらいだ。録音が2002年らしい、録音後少し埋もれていたらしい。日本語のライナーに気に入ったフレーズがあったので触れてみるのだけど、ジョルジュ・グルンツがその昔にアルゼンチンのツアーの際にクラブのオーナーからのディノ・サルーシのことをこう紹介されたという
「この男が演奏するのはジャズでもタンゴでもないんだ」
これほどディノ・サルーシに合う言葉はない。このアルバムはだからといってディノ・サルーシだけでなく、3人のそれぞれの美しさが前面に出た傑作だ。ディノ・サルーシが過去に演奏した哀しくも力強い曲、ティエリー・ラングが作った美しいメロディの曲、ずーとこの素晴らしい世界に浸っていたいくらいだ。

Europique Music / Tango Five
ヴァイオリンのグレゴール・ヒューブナール(リッチー・バイラークとのドュオが良かった!2回も聞きに行ったもんね)を中心にしたグループのようだ。ヴァイオリン、ベース、クラリネット、ピアノという4人にゲストのバンドネオン、パーカッションの二人が絡む構成になっている。アルバムタイトルから音楽性、バンド名から音楽の方向性が何となく分るようだけど、Astrorという曲ではピアソラの曲Fugataを意識した構成の曲(当然難しい曲)をやったりして確かにタンゴをやっているが、それより色が強いのがロマ(ジプシー)音楽への傾倒で、そのメロディラインをクラリネットとヴァイオリンがなぞる。ビートがきいていない分ユダヤ系(クレズマー)音楽にも聞える。
CDジャケットはセンス無いけど、暗くて、強く情熱的な音楽だ。ところで、どっちがグループ名でどっちがアルバムタイトルなのかしばらく悩んでしまった、だってFIVEといっても4人だし。。。 どちらとも取れるし〜

両手いっぱいの風景 / Quipu
相当の技量を持った方々の演奏なのでトガッタ感じかと思っていたら、全体に「曲が丸い」のでスルッとメロディが入ってくる。 「曲が丸い」とはいえ、アルバム内に同じような曲がない。 歌詞もそのメロディに乗っかってその歌詞が印象に残る。
歌詞ばかり気を取られがちだけど細かいプレーが随所にあって飽きさせる事がない。表題曲「両手いっぱいの風景」の何とも言えない歌詞の世界、「Mother」の力強さ、「やさしい気持ち」の心地よいメロディ(でもよく聴くと結構複雑なことしていますけど)と歌詞の融合が、個人的に気に入りました。

Ruby, My Dear Richard Galliano NewYork Trio
ブラッド・メルダウ・トリオで活躍しているラリー・グレナディアのベース、小曽根真さんと一緒にやっているクラレランス・ペンのドラムスでのライブ盤。このガリアーノはギターやピアノといったコード楽器がなくても音的にちっとも「寂しくならない」饒舌な演奏なのでいつもいつも鏡のように参考になりぱなしだ。今回もどんなきょくを取り上げてもはまってしまうのだけど、今回のサティのグノシェンヌ1の選曲は意外な気がした(これがまたいい、自分でもやってみたくなるような演奏の持って行き方を示している)。ラテンナンバーの「ある恋の物語」がアコーディオンにはまり過ぎていてラテン曲の奥の深さを感じてしまう。 御馴染みのオリジナル曲の「スプリーン」や「ワルツ・フォー・ニッキー」もいつも違う表情で演奏している(「ワルツ・フォー・ニッキー」はいつもより早いテンポの演奏でかっこいい!)。
ラリー・グレナディアのベースがすごくこのトリオにマッチしていてもっとこの組み合わせでやって欲しい気がする。

Jumping the Greek / Charles Lloyd
御馴染みのECMからのリリース。某レヴューで絶賛されていたので早速購入する。ピアノがジェリ・アレンでこの人の最近の演奏ってそう言えばあんまり聴かなかった気がするなあと思いつつやはり凄い演奏だった。意外とECM的な音にあっている気がするジェリ・アレンのピアノ。チャールズ・ロイドが吹き始めるとパタと寄り添うような演奏に変わるところがまたいい。 意外といえばベースもブランフォード・マルサリス・グループにいたボブ・ハーストだったり。 演奏は自由に伸縮する方法でライブな感覚の演奏だ。

ディファレント・トレイン / スティーブ・ライヒ
サンプリングされた声が何度となく繰り返されその声のトーンを基に転調していって音が重なり合う、ホロコーストを題材にしたとされている冒頭の曲が圧巻だ。マリンバとピアノがリズムを作りポリリズム的にストリングスが重なってくる、そのうちリズムも変わってくる、かなり知的で挑戦的な曲もあり、で聞くたびに発見がある。

Special Encouner / Enrico Pieranunzi
ベースがチャーリー・ヘイデン、ドラムスがポール・モチアンというトリオによるバラード集。
チャーリー・ヘイデンの名曲「Nightfall」(以前は「エレン・デーヴィッド」という曲だった、キース・ジャレットとのドュオで初めて知った)が入っているので即買いだった。もう一つの「Waltz for Ruth」もいい。 これに限らず硬いタッチのエンリコのタッチがかっこいいし、バラード演奏になるとチャーリー・ヘイデンのベースは各段に聞かせるベースになる。バラード曲を題材にした美しいトリオ・インプロに徹している。

ワンダーラスト / ソルト・カルトツガー
ピアノ(キーボードも)とエレベ、パーカッションの三人編成。普通のピアノトリオのようにスイングしない、どちらかというとタテノリな音。このエレベの正確なリズムとメロディアスなパーカッションがこのピアノに大きく作用して化学反応に近いものが起きる、あんまりこういうピアノトリオは無いのだ。ハンガリーの人達らしいけどその土地特有な音での勝負ということは特にしていないようだ。この3曲目がえらくいい、独創的かつ疾走感ある展開はもうピアノトリオを聞いているという感覚でなくアコースティックなスポーツ感覚?かもしれない。

Day Is Done / Brad Mehldau Trio
また凄いトリオだ。ドラムが変わったけど今までのトリオのサウンドを損ねることなく損ねるよりも違ったアグレッシブなサウンドを聴かせてくれている(確かチック・コリアのトリオでやっていた人だと思う)。
She's Leaving Homeとポール・サイモンの曲「恋人とわかれる50の方法」の選曲はずばりいい!1曲目や最後の曲はかなり鋭い演奏だ、かっこいい。メルダウさんはずっとトリオという形で聴き続けたいピアニストだ。

よい天気 / カラヤ
スウェーデンから届いた女性4人アカペラトラッド。これは癒されます、毒々しい厳しい激しい際どい音楽ばかり浸っているとこういう穢れの無い音楽が新鮮に聞こえてくる。それは気分の問題では無くてかなりこの音楽は純粋に美しい。奇をてらうこともなく、ハーモニーがとっても自然な感じだ。結構万人ウケする気がしてならないのだけど、どうだろうか?

(received '06.1.21)

Sweeperさんのプロフィール...ウクレレ前田さんのブログ『裏声喫茶』の常連さん。5年続けて『なんでもTOP10』に参加いただき、こっちのほうでもすっかり常連さんです(笑)。どうもありがとう!

 

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