2006年なんでもTOP10

−2006年 映画 TOP10−

by Sweeperさん

1位 ナイロビの蜂
硫黄島からの手紙
歓びを歌にのせて
ミュンヘン
エミリー・ローズ
クラッシュ
胡同のひまわり
トゥモローワールド
ホテル・ルワンダ
ミス・リトル・サンシャイン

(1位以外は順位なし)

2006年に公開された映画、ということで、DVDでみたもの、2005年に公開されて2006年1月に入ってみたものも含めてのBEST10にしました。かなり選考が厳しいことになりましたが、「ナイロビの蜂」は極めてシリアスな問題に、サスペンスの要素や夫婦愛などからめた本当に素晴らしい映画でしたのでこれをBEST1に上げたい。「硫黄島からの手紙」にしようかとも悩みましたが個人的な好みで最終的に決めました。「ユナイテッド93」や「ワールドトレードセンター」は素晴らしい映画だったけど2006年末に読んだ本の影響からか、敢えてBEST10から外しました。 以下は順不同としました。

1位 ナイロビの蜂
傑作 です。社会派的で、サスペンスあり、アクションあり、そして貫かれているのは、愛についての物語である事だ。映像編集はテンポよくあきさせないし主役二人のうまい演技で本当に泣けることもある。大きな企業や政治の力の前には、誠実な人間は黙っているしかないのか? それとも告発すべきなのか? 映画は結論を出さずに、愛についての余韻をのこしたままケニヤの美しい大地と共に映画は終っていく。

硫黄島からの手紙
日本人が作った映画のようでそうでもない殆ど日本語によるクリント・イーストウッド監督の映画。感謝すべきは世界はここで何があったのか、再び注目する事になること。あれだけの名声を得た人が日本の硫黄島のことに注目してくれて、しかも全部が全部何の違和感も無く纏め上げてしかもその映画の2時間半圧倒されぱなしだった。
過去にも戦争映画が幾つも作られてきたけど、これだけ切ない気持ちになったのは初めてかもしれない。
渡辺謙の本物の演技、二宮クンの憂いの表情など、もうすでに俳優が演じているので無く「そこにいる」人か、かつてその硫黄島にいた兵隊がそうさせているのかと思わせるくらいリアルな表情だった。1年いや数年にそうそんなに無い、必見な映画です。音楽は息子のカイル・イーストウッド。

歓びを歌にのせて
スウェーデンからの音楽が起こす奇跡の映画
少年の頃果たせなかった音楽少年
大人になり成功した音楽家
体を患い故郷に戻ってからのコーラス隊に出会い彼も変わっていく、村民も変わっていく
小さい村の妬みや嫉妬はその妨げにならないくらい大きな力になっていく
村民の心の解放は観る側も同様である
ラストは奇跡が降りてくる
声やコーラスの持つ力が言葉や思考を超えたものに変えていく

ミュンヘン
スティーブン・スピルバーグ監督作品はやはり重い映画で真っ向ストレートな勇気ある政治映画でした。
1972年ミュンヘンオリンピック村でのテロに対する報復をするユダヤ人
70年代のサスペンス映画のようなカメラワークのような雰囲気
目を背けたくなるような暴力、これを徹底したリアリズムで表現している
「敵」って見た感じはそんな悪いようには思えないのは私だけだろうか?
復讐ってなんだろうか?
単に、「イスラエル(ユダヤ人)」対「パレスチナ」というだけでなくCIAやKGBというのが絡んでいる事も本筋ではないにしても触れている。映画はそのあたりから四面楚歌なサスペンスな展開になってくる。
観る側は確かにこれは歴史のなかのヒトコマだけでなく、一体何で戦争って起きるだろうか?ということを考える。
そして、映画のラストシーン、歴史は繰り返されるという暗示で終る事になる。ラストシーンにこめられた意味に、「これからの世界って?」という課題を見る側に与えてこれは「過去」の出来事でないということを考えさせてくれる。

エミリー・ローズ
実話に基づいた話らしい。けっしてオカルト(だけな)ストーリーでなく、裁判劇として真面目な作りになっている。
判例として認められているという点が価値がある裁判だったのだろう。
陪審員制度での裁判のあり方、「悪魔の存在」をどう裁判されたのだろう、というのも興味深い。
悪魔がとりつくという、日本ではあまり実感がない、というか欧米に特有の現象なのだろうか?
とりつかれているという現象ってわからないなあ。
音楽は当然恐怖をそそるような恐いサウンドだった、クリストファー・ヤング(たまに目にするこのひとの名前)

クラッシュ
人種差別、やりきれなさ、品位を保つ事、家族を愛する事、愛される事、そして、寛容すべきすべての出来事
普段話題からなんとなく避けている部分を正面から見据えている
アメリカ映画の主役級の人達がみんな控えめに演技して舞台劇のような調性をもってII-V-Iと行くように思われたけどところがそうでもないようなそうなったかのようなエンディングを迎える。 良い意味でもかなり悪い意味でも(つまりやや統一感が薄れている)なんというか質の良いドキュメンタリーを見させてもらったかのような印象だ。
その統一感を補っているのがマーク・アイシャムの音楽だ。

胡同のひまわり
私とほぼ同じ年の主人公を通じて文化大革命や現在の急速な発展する中国における父と子との、心の葛藤の物語。なかなかいい映画だった、絵的にもキレイな構図も多く映画そのものを堪能した。主人公の父と子のキャラクターはなかなか日本には無いような気もするけど子ども時代や親の心も両方偏り無く語られている所がいい。 ただ途中でわかってしまうところなのだけどこの構図イタリア映画の某名作に似てなくも無い。 それでも魅力のある映画だった。

トゥモローワールド
前評判が良かったので観た。見て損が無い映画です、一応近未来2027年の世界の混乱の物語だけど今世界の各地で起こっている事そのものの描写がある。長回し撮影の多用でドキュメンタリーを見ているかのような自分がその混沌とした世界にいるかのような錯覚に陥るようなカメラ視線。映画後半の長回しでのある場面、神々しい(と思える)シーンは涙が出るほど素晴らしい。物語の最後、描かれていないその後を見た人は明日に繋がる希望と見るのか、それともやはり未来の無い世界と見るのか、その見る側の感覚に委ねられる事になるでしょう。

ホテル・ルワンダ
ウガンダ、ルワンダ、と不幸な土地柄なのだろうか?
映画では、嗅覚は伝わらない、湿度は伝わらない、でもどこかこの映画は伝わってくるような気がする。アフリカの政情不安は政治が悪いともいうけど、民族の摩擦ということもやはりどこかあるのだな、という普段わからない民族のモザイク化されているところは一旦社会が悪くなると一気に壊れてしまうのでしょうか?そんなことをこれを観ながら感じていた。人を救う天使になれ、と運命から言われたときにこのやり手の主人公は見事に答える事が出来た。そんな事自分が出切るのだろうか?「あなたならどうする?」 この問いかけは本当に難しい。

ミス・リトル・サンシャイン
教訓めいているけど笑える。憎めない愛らしい家族。世間的には「負け組」なのだろうけど世間的な「勝ち組」にはなりたくねーという気持ちになってしまうだからといって諦めるという事でもない、そんな家族のみんな勝手に主張しているところがいつのまにか一体感を持ってくる。 あれ、観いている側もいつの間にか家族の一員になっていない?
楽しい映画でした、ホント。

(received '07.1.19)

Sweeperさんのプロフィール...故・ウクレレ前田さんのブログ『裏声喫茶』の常連さん。6年続けて『なんでもTOP10』に参加いただき、こっちのほうでもすっかり常連さん。どうもありがとう!

 

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