−2008年
映画 TOP20− by
Sweeperさん 1位
潜水服は蝶の夢を見る (1位以外は順位なし) BEST10ではなく20までようやく絞り切りました。 1位 潜水服は蝶の夢を見る 君のためなら千回でも クローバーフィールド JUNOジュノ ハプニング 闇の子供たち トウキョウソナタ おくりびと 告発の時 アイアンマン ミスト ゼア・ウィル・ビー・ブラッド ブロークン さくらんぼ 母と来た道 ノー・カントリー Boy A 落下の王国 イントゥ・ザ・ワイルド 僕らのミライへ逆回転 ダークナイト (received
'09.1.20) Sweeperさんのプロフィール...故・ウクレレ前田さんのブログ『裏声喫茶』の常連さん。8年続けて『なんでもTOP10』に参加いただき、こっちのほうでもすっかり常連さん。どうもありがとう!
君のためなら千回でも
クローバーフィールド
JUNOジュノ
ハプニング
闇の子供たち
トウキョウソナタ
おくりびと
告発の時
アイアンマン
ミスト
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
ブロークン
さくらんぼ 母と来た道
ノー・カントリー
Boy A
落下の王国
イントゥ・ザ・ワイルド
僕らのミライへ逆回転
ダークナイト
2008年はいい映画が多かった。邦画もよかった(20枠から外れたけど「リアル鬼ごっこ」は面白かった)し、そんななかで、1位は「潜水服は蝶の夢を見る」で、ダントツの素晴らしい映画でした。以下順序は付けようがないのです。
生きているということ
愛されているということ
体が全然動かなくても愛されていること
今までそんなことを考えもしなかった男が気がついて考え始める
この主人公は僕であり、あなたである
今更のように普通のことと思っていることを感謝するようになる
そして愛するようになること
こんなに映画を観終わって省みることも多い映画もなかった。
必見です、どんなに困難なときでもこれを観れば勇気が出ます、涙も出ますが。
ドリームワークスというタイトルからアルベルト・イグレシアス(アルモドバル映画の音楽)で一気に世界が一変する。
アメリカ資本でありながら舞台と出演者の大半(前半)がアフガニスタンという映画でありながら、どこか普遍的なものを感じさせる映画です。裕福でありながら厳格で身を呈してまで守るべきことは守ろうとする父親の姿、子どもの頃負い目を大人になってもどこか捨てられないでアメリカに住んでいるその息子。
アフガニスタンからの亡命の若者を通して、過去に現代に導かれてその当時を知らない我々は今のカブールしか知らされていないので違和感があるけどソ連侵攻前は凧上げ大会があるほど平和なところだったわけであるけど、同時に人種格差と差別(パシュトーン人とハズラ人)が存在していたり映画は様々なエピソードでその時代を伝えようとする。カイトランナーという原題と邦題は映画の冒頭と最後に結びつくことになります。地味でやや甘い部分はあるけどこの映画を見れてよかったという実感があります。
うーん、確かに酔う、手ぶれな映像が厳しい。
でも映し出しているのがなかなか姿が見えない恐怖だったりして。。。
あれ、これって「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」じゃないですか、まあ規模が違うけど。
正体の分からない恐怖ということでは観客視点で動く展開なのだけど、やはり視点が動きすぎなのでかなり大変だ。
逃げ惑うスリラーとしては見ている間はハラハラしたけど終わってしまうと結構残らない。
でもね、これ映画館で見たほうがDVDで見るよりいいですね、迫力はありますので。
16歳の女の子が妊娠して云々という話なんだけど、それからがいい。
全然暗くも悲壮感もないしさっぱりとしているし屈託もない。取り巻く人たちも癖はあるけど悪い人はいないし。
平和的でこんな風に人生が物事が進んでくれたら最高にいいんだけどね、というタッチで映画も終わる。
コメディのようで実は芯のあるドラマにもなっていてあんな家族、あんな友達、そしてあんな自分になりたい、と思ってしまう。そしてそれはそうしようと思えば誰でもできることでもあるとも教えてもらっている気がする。
楽しめました。
Mナイト・シャラマン監督作品でスリラーです。
いったい何が起きているのかわからないまま逃げ惑うバイオテロなのか、それとも自然界のなせる技なのか、結構目を背けたくなるようなシーンもありこの映画がどこに落ち着くのかというところ、ハラハラする恐怖でした。その恐怖を増幅させているのがJames
Newton Howard
の音楽、ヒッチコック映画のバーナード・ハーマンのような効果を出している。
いったい原因はなんだったのか?それを考えさせる非常に示唆に富んだ話でした。ネタばらしということもできないのですがそれにしても少々覚悟が必要です、終わった後も考え込んでしまいます。
日本映画で「誰も知らない」以来の衝撃です。
我々が普段知らないタイの暑くてゴミゴミして騒がしくてそして臭う感じが映像から強く感じられる。
タイでの子供の人身売買の実態を映像化することで深く掘り下げて問題提起している。
日本人の登場人物はそれぞれのキャラクターを持って出てきているがこれは問題、問題と云いつつも歯がゆいままで終わっている日本人自身である。まずはこれをなるべく多くの人に見てもらってこの現状を知るべきです。
こういう映画が撮れること自体(日本人・現地スタッフの頑張りとこの事実そのもの)が驚きである。
カンヌで絶賛された、黒沢清監督作品。
家族4人がバラバラで関心があるようで自分のことで精いっぱい
そのうちそれぞれ秘密を持ちはじめてほころび始めていく。
リストラされた父親には笑えた、というか全然笑えない、デフォルメされてはいるけど、リストラされたんだからネクタイしてスーツ着る必要ないんだけどという世間体が気になる心理はヒシヒシわかる、うんうん。息子も黙って給食費をピアノレッスンにつぎ込んでピアノを弾きたいという気持ちせつせつに分かる。母親もすでに燃え尽きてしまっていている。ユーモアと虚無感とそのスパイラルから抜け出したい焦りがこの映画のテーマであり、ちょっと昔の映画「家族ゲーム」とは違った方向をこの映画は指示している。
納棺師という仕事があるということを初めて知った。
広末涼子の妻役が意外にいい役をしている。でも何といっても人の死について考えさせられるこの話そのものが素晴らしい。
納棺師という仕事が「普通」な仕事ではないのだけどなるほど立派な仕事であるというスポットをあてたともいえます。
生き別れた父親と意外な形で巡り合わせられるところがなんとなくKコスナー主演の「フィールド・オブ・ドリームズ」に似ているのかもしれない。広末涼子の妻役以外は配役に意外性はないけど話の良さがこの映画を魅力あるものにしている。
「クラッシュ」が好評だったポール・ハギス監督作品。イラク戦争を取り上げた映画だけど、舞台はイラクから帰ってきたはずの息子を探す元軍人の話になっている。CMで有名になった「宇宙人」ジョーンズはここではまじめな役に徹していて問題は一筋縄ではいかないところを提示している。そもそもイラクでの戦争というのはまだ右も左もわからない若者にとっては正気を失わせる場所であることを示唆してそれを語る帰国兵士の無表情なところが妙に気になるところである。
原題のin the valley of
Elahの聖書の話をどうとらえるか、小さなダヴィデは勇気があるという意味だけでこの映画のタイトルに使われなかったであろうこのタイトルに星条旗の掲げ方をなぞらえることはできないだろうか?
この話は事実に基づいて制作されたとのこと。やはりあってはならないアメリカの暗部である。
あまり期待していなかったけどかなり楽しめました、というかかなり面白かったです。途中これ「ロボコップ?」って思えるところもあったけど、しっかりした俳優がいて土台しっかりした感じで映画が作られているのでやや屈折したヒーローというのもなじめる。昔から知っているR.ダウニーJrの復活というのも個人的にはかなり嬉しいところである。続編が早くもあることをにおわせるエンディングもなかなかである。
スティーブン・キング原作の映画化、霧の中から人間を襲うモノが恐怖に陥れるというもの。
段々とその正体がわかってきて閉じこめられた人たちの動揺(キングのテーマのようですね、脅威・恐怖に閉じこめられるというテーマ)がむしろ怖かったりする。さて、活路を見出すべくとった行動のあとのラストが信じられない結果になるのでこれはびっくりしました。究極とはまさにこのラストのことを言うのかもしれないですね。
ポール・トーマス・
アンダーソン監督作品。この映画でオスカーをとった主演ダニエル・デイ・ルイスの土壇場である。
金採掘人から石油王になっていく様、そしてその後の軌跡を描き、貪欲、欲望、石油への執念、神を恐れない言動、人間不信、のそういう粗野だけど計算ずくの男の2時間を超える圧倒的な物語あった。物語導入部分はセリフが一切省略されてまるでドキュメンタリーのような展開かと思いきや、セリフありの映像は「石油王」の演説から始まるのはかなりインパクトがあった。あれだけ冷徹で冷静でないと石油王になれなかったのだろうか?と思うけど彼の生きざまは源田にも通じる強欲・貪欲へのあくなき探究を続ける現代の金持ち支配層の姿にも重なって見えて間接的にはブッシュ一族を想起させるような内容にもとれた。あういう男のモデルが実際存在したのでしょうね、きっと。音楽はセリフのない部分を補うかのような重厚なオーケストレーションを聞かせるジョニー・グリーンウッド。
ショーン・エリス監督作品。鏡に映った自分、やがて鏡が割れて、日常が狂い始める。
ガイ・ファーレイの担当する音楽が緊張感を呼び不安定にさせる。
得体のしれないものに立ち向かっていくホラー映画でもある。恐怖は主人公も見る側も同じでひたすら暗い部屋での音が気になりだす。そんなとき映画館という場所は怖い空間になる。サスペンスでありながら不条理を感じさせてその恐怖のあり方やその正体について明かされることがない。かなり衝撃的だったのはラストである。なかなか考え抜かれた論理構成である。主人公の見方が必ずしもベクトルとして負の方向に向いているとは限らないしその逆もしかりなわけである。
カプグラ症候群、鏡、内蔵逆位、公衆電話
そんなヒントを出されてもまだそれに納得するような気になれない。
なかなか尾を引くような後味である。
「初恋のきた道」と同じ脚本家の映画。中国の貧しい農村での話で知的障害を持った母親とその娘との交流を描いた物語である。話は素朴でストレートな展開になっている。切ないほど純粋に娘を愛おしく思う母とそれをだんだん疎ましく思う娘、足が不自由でうだつの上がらない父親(でも胡弓はうまかったりする)と農村の人達の人の好さや温かみも感じられて農村出身でもない私でも「懐かしい」と思わせるような日本のアジアの原風景みたいなものを感じさせる映画である。
母の子供を思う気持ちというのは親になったことがないから分からないけどそれほどこの映画で描かれたものと変わらない気がする。それを恥じることなく気にすることもなくという一種の映画では寓話として扱っているけど本質をよくとらえた映画であることは間違えないです。日本との合同制作らしくて、日本人スタッフもクレジットされていたがその中でも気になったのが、音楽はなんと安田芙充央さんであること。この人のライブに何回行ったことか、もうあの素晴らしいジャズピアノは弾かないのだろうか?アジアな音楽に根ざした素晴らしい音楽でした。
原題がno country for old
men。コーエン兄弟が「バートン・フィンク」や「ファーゴ」や「バーバー」のようなハードボイルドな映画を撮るとやはり違う。
犯罪者のじわじわとする怖さ、冷血なところ、追われる者の切迫感がひたひたとくる。誰が主役か?というほど並行して物語が進む。謎の残るラストのあたりはどう解釈すべきか? また最後の「2つの夢」の解釈をどう理解すべきか? 誰が得をしたのか? なかなか示唆的な映画でありました。
日本でも「少年A」とか「少女A」で言われるけど、イギリスでも同じくそういう扱いをされる訳である。
話は、その成人した「Boy
A」が出所して名前を変えて溶け込もうとするけど、あまりにも10年間近くそれまでの経験が欠落しているせいかぎこちないし、素性を隠していることへの後ろめたさもやはり付きまとう。その少年は昔何をしたのか?は本編中にちりばめられていくのだけど、問題はその主人公があまりにもナイーブでいい青年であるにも関わらず、その過去が忌まわしいものであったならどうなるのだろうか? 許す? 恐れる? 遠ざける? 状況だけ聞く限りではそう思うのは当然なのだろうけど、映画を見ている側はそう思わない人が多いと思う。この映画は少年側のない面的なところまで踏み込んで描いているので「白黒」判断することが難しい問題を扱っている。
日本でも少年犯罪への実名報道や写真報道が論議されているがイギリスでも同じような論争があるに違いない。
ターセムという人は前に「ザ・セル」という極彩色の映画を撮ったけど、今回もロケを中心に鮮やかな映像を提供する。
入院したスタントマンの少女に聞かせるホラ話が中心なのだけどいわゆるヒーローものかと思いきやスタントマンの心の変化でそのヒーローものが変わっていくところが意外に面白い。音楽と壮大な映像で自然(ネイチャリングといってもいい)とコスチュームと背景を楽しむ映画ですね。これはたぶんDVDでは楽しさ半減するでしょうね、これこそ映画館で見るべき映画かもしれない。
あのショーン・ペンが監督して俳優としては出演していない。
事実に基づいた原作があってその映画化なのだろうが、ほとんどが大学を卒業してから物質世界から背をそむけた主人公のモノローグになっている。車を捨て、紙幣を焼き、定住せず、アラスカに向かう。2年間放浪して別に何か得ようとしての旅・生活なのではなく、何かを捨てる作業だったのでしょうね、ほとんど現代の修行僧のようなものかもしれない。
とても説得力のある演出・編集をするショーン・ペン、ただものではない。イーストウッドのように化けるかもしれない。
M・ゴンドリー+J・ブラック の組み合わせのアナログな映画。
いまどきVHSのレンタルというのも古いなぁと思ったらアメリカでもそうらしい。で、勝手に映画をリメイクしてしまってそれが評判を呼んでしまい、それが当局の目に触れることになる。ここで普通なら終わりなのかもしれないけど話はじつはそこからが面白いのだ。誰もがやりたくてもやれなかった「勝手にリメイク」って相当楽しそう(やってみたい)だと思うのだけどなぁ。またこれを楽しい!と言ってくれる近所の人たちがおかしい。まあ、これって一種のファンタジーなのだけど、そのファンタジーはラストシーンを見ると明らかいになる。
まだまだ延々と続いてほしいなと思える楽しさがあります。カットせずに全部やってほしいぐらいである。
ナイトはknightの方、で「闇の騎士」ということか。
バットマンシリーズは完全に前のティム・バートン色を払しょくして映画のタイトルからなくしてしまった。完全にハードボイルド的な世界に入っている。そういえば新しい007シリーズもユーモアをバッサリ切って完全にハードボイルドな世界(カジノロワイヤル)を作り上げたけどこれもその流れなのだろうか? ジョーカーが出てくるのでどうしてもジャック・ニコルソンのイメージもあるけど、そこは配役されたヒース・レジャーがなりきりになってただただ何をしでかすか分からない残酷な暴君のようなキャラクターを出してこの映画の主役を食ってしまっている。なかなか見ごたえのあるハードボイルド映画になった。前作はやや説明的だったけど今回は哲学的すら感じさせる。重厚な音楽はハンス・ジマーとジェームズ・ニュートン・ハワードの共作。