−2010年
美術展 TOP10− by
Sweeperさん 1位 田中一村 新たなる全貌開館15周年記念 特別展 @千葉市美術館 (1位以外は順位なし) 1位は不思議に後を引くように印象的だった田中一村の回顧展。 1位 田中一村 新たなる全貌開館15周年記念 特別展 @千葉市美術館 モーリス・ユロリロ展 @損保ジャパン東郷青児美術館 ドガ展@横浜美術館 フェリックス・ティオリエ写真展 @世田谷美術館 エミール・ガレの生きた時代 近代生活のエレガンス展 @目黒区美術館 内井昭蔵の思想と建築 展@世田谷美術館 藤田嗣治展 東京 ニューヨーク パリ @目黒区美術館 ザ・コレクション・ヴィンタートゥール @世田谷美術館 フランダースの光 展 ベルギーの美しき村を描いて@渋谷Bunkamuraザ・ミュージアム セーヌの流れに沿ってー印象派と日本人画家たちの旅@ブリジストン美術館 (received
'11.1.14) Sweeperさんのプロフィール...故・ウクレレ前田さんのブログ『裏声喫茶』の常連さん。10年続けて『なんでもTOP10』に参加いただき、こっちのほうでもすっかり常連さん。どうもありがとう!
モーリス・ユロリロ展 @損保ジャパン東郷青児美術館
ドガ展@横浜美術館
フェリックス・ティオリエ写真展 @世田谷美術館
エミール・ガレの生きた時代 近代生活のエレガンス展 @目黒区美術館
内井昭蔵の思想と建築 展@世田谷美術館
藤田嗣治展 東京 ニューヨーク パリ @目黒区美術館
ザ・コレクション・ヴィンタートゥール @世田谷美術館
フランダースの光 展 ベルギーの美しき村を描いて@渋谷Bunkamuraザ・ミュージアム
セーヌの流れに沿ってー印象派と日本人画家たちの旅@ブリジストン美術館
2位以下は順不同、ドガ展もユトリロ展もフェリックス・ティオリエ写真展もよかった。
企画性のある集め方の展示会も個人的には楽しめました。
生前無名のまま69歳で亡くなって何年もたってから評価が高まった画家の回顧展。
幼少のころから天才的なひらめきがある絵を描いていてこれらも展示していたがこれが10代の少年が描いたものとは思えないものばかりでした。千葉県で生活して芸大も入学するも数カ月で退学、日展にも作品も出すも落選する。そんな評価されない生活からか奄美に行く、ゴーギャンがタヒチに行くような楽園があると期待もあったのだろうか、生活はともあれこれまでやっていた作品に深みと個性が浮き上がってくる。以前から鳥と花を描いていたその経験がこの「楽園」のような絵という集大成する。絵画もそうだけど、世間に背を向けて、自分のやりたいことを実現するために生活実践してきたその人生も痺れましたよ。手の先まで痺れたよ。感動しました、千葉市まで見に行った甲斐があった。
http://www.youtube.com/user/ChibaCityMuseumofArt
日本初公開の作品ばかりなのだという。
随分前に見て以来なので殆どこの人の作品に真剣に向かうのは初めてかもしれない。
建物、教会、通りの風景、建物、建物、建物の白い壁。。。
そして建物の精緻な描写に比べてそこにいる人物を描くタッチが完全に手を抜いている。。。まるで子どもが描くような人物の描写だったりする。完全に何か欠落しているんですね、この絵は心の不毛を描いているのかもしれない。人物への関心のなさ、美しいといえるものへの拘りの無さ、いくら街を描いてもそこから抜け出せない迷路のような心象風景。ユトリロの私生活はその才能を搾取する母親と妻、そしてアルコールにおぼれる自身であったという。そんなエピソードを抜きにしても閉塞感のある絵に少々気がめいったです。勿論この個性や画風を否定するつもりは毛頭ないのですが。
スケッチや写真をもとに複数のモチーフをパッチワーク的に組み込んでいく。
見たものをあるのままではなくてここにドガの表したいものの演出を読み取ることが出来る。
「エトワール(星)」は聞いてはいたけど小さい。オルセーで見たかもしれないけどあまりにも見るべきものがいっぱいありすぎたせいか記憶にない。踊るエトワールの一瞬の動きがある。首に巻いた黒いリボンのたなびき、ウエストから裾にむけて散らされた花束の花びらが、放射状にのばした手足の動きと呼応して、踊り子の美しい動きを強調しています。
舞台袖に、出番を控える踊り子に混じって、黒い背広姿の紳士が立っています。明らかにダンサーとは異なる立ち姿の謎の紳士は、舞台で踊る踊り子のパトロンと考えられています。不気味な存在でパトロンらしいのだけど、ドガはパトロンではなかったのか?本人を投影したものでは?とも考えてしまう。
「マネとマネ夫人像」は興味深くちょっと衝撃である。なにしろ右三分の一を切ってしまっているのだから。ドガが送ったこの作品を見たマネは、夫人の出来がよくないとして右端を切断したという。
「バレエの授業」は稽古場で振付師ジュール・ペローが指導している様子が描かれている。ポーズをとる踊り子や順番を待つ踊り子たちの自然な仕草が克明に映し出されている。背中を掻いている踊り子やら視線が指導する方向に向いていない踊り子やら。このあたりはきっとスケッチをもとにあてはめていったのでしょうね。「綿花取引所の人々」もそれぞれ人物が有機的でなくバラバラに存在しているようで、部屋には何人もいて忙しそうにしている割にはどこかひんやりとしたクールさが漂っている。
「14歳の小さな踊り子」は唯一出展したブロンズなのだそうだ。ブロンズにスカートやリボンをつけさせてブロンズというより人形のような印象を持つ。
趣味で始めた成功を収めたフランス商人の引退後の写真の数々。
初めはおそらく恐る恐る孫の写真を中心に撮っていたのだろうけど段々と絵画的な要素が加わってくる。
1900年パリ万博のころのパリの写真、大自然をとらえた写真、ゼラチンシルバーでの現像はややセピア色に冬の枯れた木々は白と黒の陰影にそして黒と白の曖昧になっている独特な淡い感じがデジタルでは到底撮れないような豊かな表現になっている。
最初は見よう見まねでそれの教育も受けていない人が(埋もれていたので今ようやく脚光を浴びているというけど)こうやって海を渡って多くの感銘を与えるということになにか始めるのに遅すぎることは無いという一歩の励みになればいいかと思う。
ガレだけでなく同時代の工芸家たちの作品も展示されてかなり興味深い展示です。ジャポニズムの影響など説明もしっかりしてくれていて展示としてかなり細かい仕事をしてくれているので助かります。目黒区美術館は連続での来場になりました。ガレやルイスCティファニーらの作品の色使いや一つのもの込めた情熱やアイデアが伝わってくる作品が多くこういうものをもっと日常的に見なくてはいけないな、と反省してしまうほどです。作品の美しさにため息や息をのむことがこのガラス工芸に多いです。繊細な表現にここまでしなくてもいいのにというくらい徹底した追求があって手を抜かない透徹さが感動します。
情報によると今上天皇が先週金曜日にご覧になったそうです。それは、今の御所を設計した内井昭蔵の回顧展がやっているからでした。
建築家の祖父、父、そして内井昭蔵へ受け継がれたキリスト教の神信と和とモダン、そして機能的なデザインの追求。そしてぬくもりが伝わるような設計。
デッサンと図面、メモ、そしてその作品である建物の写真。いつも観る絵画とは違うことはちがうがデザインとその一貫した手法が堪能出来ました。これは思いがけないほどの面白さを提供してくれました。流石!世田谷美術館。
おもな作品
世田谷美術館
国際日本文化研究センター
新御所
大分市美術館
ベルナール・ビュフェ展と同じくして開催されているレオナール藤田展は興味深い。
キューピーのような眼差しは前から気が付いていたけど、自画像も実はキューピーな目だったりしているところである。そして副題の「東京 ニューヨーク パリ」は絵ハガキや手紙に書かれた落書きというかイラストというか、これが結構ユーモアたっぷりでレオナール藤田のイメージが随分と違って見えるわけである。展示としては多くはないけど意外な一面を観れただけでもよかった。
http://www.mmat.jp/event/buffet/press.htm
スイスにある美術館のコレクション、全部日本初登場なのだそうだ。
近くに住んでいてやはり見逃せない。
モダンアートのものも多いけど、普段それほどみれない、スイスやドイツの画家の絵が見れて発見もあったりした。アンリ・ルソーの「ご褒美」の絵はマジカで見ないと迫力が伝わらない。かすかに(赤ん坊にも関わらず)眉間にかすかにしわが入っているように見える。ジャコメッティの父親も画家であるのは知らなかった。ゴッホの作品はポストマンのジョゼフ・ルーランのみです。コレクションものってテーマが定まらないからどうかな?とおもったけど、スイスに行く機会など無いし向こうから来てくれるのだからやはり行くべきでしょう。
いわゆる有名どころの絵画やブロンズは一つも無い。20世紀初めのベルギーの田園風景の絵画を集めた展覧会。フランダース地方のとある村に芸術家村が出てきて村長自ら筆を取って描き始めて村は芸術家コロニーのようなものが出来たらしい。その変遷がおもしろい。本当に美しい絵画ばかり作風の芸術家が段々とキュービズムや前衛などの側面をもった人たちも移り住んできて当初の美しい田園風景を描く環境とは段々と無縁になっていくその過程が展示の仕方でも明らかにされる。なかなかキューレーターの腕の見せどころ的な展示でした。楽しめました。特にエミール・クラウスが描く田園に生きる人たちを明るい光で包む絵画の美しさには感嘆させられました。
印象派は一瞬の光や風の動きを封印して描かれている。
次の瞬間にはその光や雲や水の流れが変わってしまう儚さが、物語性が心ひかれる。日本人が印象派絵画が好きなのはそういうところなのでしょうか。宮廷絵画や宗教画がピンとこないからなのだとは思いますが。非常にいい企画でここで持っている作品とひろしま美術館とのコラボをするだけでこういう物語が出来るのは素晴らしいことです。