2010年なんでもTOP10

−2010年 おんがく TOP10−

by Sweeperさん

1位 Scratch My Back / Peter Gabriel
Absolute Ensemble / Joe Zawinul 
オーケストリオン / パット・メセニー
PSP LIVE
Highway Rider / Brad Mehldau
BACH / Richard Galliano
Jasmine / Keith Jarrett Charlie Haden
LLYRIA / Nik Bartsch's Ronin
Rock Jazz Vol.1 / エリック・ルイス
Double Sextet 2x5 / Steve Reich
次点 Utau / 大貫妙子&坂本龍一

(1位と次点以外は順位なし)

2010年はPGの新作が出たということ自体凄いことなのですが、その内容が衝撃でした。カバーアルバムでありながらそれに聞こえないオリジナリティが貫かれています。2位以下は順番をつけるのが厳しいので毎回パスです。次点で申し訳ないのがUTAU。こんな教授の素晴らしい音楽は「1996」以来です。

1位 Scratch My Back / Peter Gabriel
驚きです。カバー集とまでは聞いていたけど、全編ストリングスとピアノのみ。そしてPGが朗々と歌い切る。今までテクノロジーやエスニックビートを大胆に導入してきて多くのワールドミュージックを紹介し続けてREALWORLDを紹介してきたPGがno guitar, no drums の音楽なのです。しかも曲が知らないものばかり。まるでPGのオリジナルのような世界観を持った曲のような、それぐらいシンクロしたような個性をもった無名曲ということなのです。それでいてダレた曲が相変わらず一つもない。気合いが十分入りきった曲ばかりです。これだからPGの動向から目が離せないのです。
傑作です。

Absolute Ensemble / Joe Zawinul
これは究極なザヴィヌル音楽。
これが本当の遺作になるらしい。
ザヴィヌルのスコアに忠実にこれでもか、というくらい忠実に管弦楽でザヴィヌル音楽を再現している。勿論御大も演奏に参加しているけどアンサンブルの一員としてで派手に音を出してはいない。通常はエレクトロニクスなコードだったりラインがフルートだったりヴァイオリンだったりブラスだったりする。勿論リズム隊はご機嫌にはねまくっているし、アフリカンかつジプシーなヴォーカルは前面に出ている。継承されていく音楽を見守ったザヴィヌルは病床を押してレコーディングに参加そうだけど何を思ったのだろうか。今までワンマンなまでにセンターの位置を譲らなかったザヴィヌルが一歩譲ったところでの演奏はエレクトロニクスだろうがアコースティックだろうが骨格の素晴らしい音楽であることをその音楽そのもので証明している。最後の貴重な贈り物になりました。

オーケストリオン / パット・メセニー
思いもよらないことをやってのける人である。
サウンドはPMGの音そのものなのだけどかといってそうでもないようなところもある。
「シークレット・ストーリー」という傑作があるけどそれと比べるというのは野暮なことである。PMGのサウンドが大好きなので、このオーケストロンはやや平坦でダイナミクスには欠けるところがあります。
しかし、それを知って敢えてこれをやった挑戦は失敗を恐れない(このクオリティなので失敗と考えていないのでしょうけど)チャレンジはピカソ的なものかもしれないです。

PSP LIVE
サイモン・フィリップス、フィリップ・セス、ビノ・パラディーノのトリオが素晴らしい。
ベテランのサイモン・フィリップスのドラミングがドラマティックでしかもきめ細かいところもある。フィリップ・セスのアイデアあふれるキーボードがいい。しかもソロは結構ピアノの音でソロをとっているのだ。ELPのようでもなくとてもジャズ的な演奏であるけどアグレッシブで知的な演奏が聞けてとてもうれしい。

Highway Rider / Brad Mehldau
2枚組だけどその長さを感じさせない濃い内容です。Joshua RedmanをゲストにドラムにもLargoで共演したMatt Chamberlainをスネアを中心に叩かしてサウンドが著しく特徴的で現代的な音の並びになっている。オーケストレーションのアレンジもこなしてピアノ奏者としての力量云々より音楽家としてのトータルな完成度を目指していて成功している。ピアノトリオでのやや行き詰った感も無きにしもあらずだった最近だったけどこのアルバムの完成度やち密な音楽の構成は素晴らしい。
Largoをはるかに上回る力作です。

BACH / Richard Galliano
グラモフォン・レーベルである。
バッハである。ソロではなくて、ピアソラを一緒にやった人達とのバッハである。
ピアソラをやってもっと掘り下げると行きついたのがバッハというのが歩む道だったのですね。当然ガリアーノではなくバッハの曲が全面に出ているだけど演奏や表現はガリアーノそのものである。音楽の素晴らしさ、音色の美しさ、気高さ、どれをとっても超一流です。しびれました。

Jasmine / Keith Jarrett Charlie Haden
明らかにスタンダーズトリオのような弾き方ではない。
メロディがあってベースラインがあって演奏がなりたつ。決して饒舌でなくそうなる必要もなくひたすらシンプルな演奏に震えが来ます。
For All We Knowの内省的かつ自然な演奏にこのDUO演奏の意義を早速感じ取ることが出来る。中のライナーの2人の背景にスタンダーズトリオの日本公演ポスターの一部が写りこんでいるがどことなくうれしい。

LLYRIA / Nik Bartsch's Ronin
Zen Funkなる「ビート」を掲げてのECM3作目。
浪人や禅という定義をどれだけ理解しているかどうか分からないけど、ここでも変則バラバラ変拍子全開である。Nik Bartschは今回は全部アコースティックピアノで通している。これが編集無しの録音であるのが凄いことである。しかも今回はロック的な局面がいくつもある。がそこに安住することなくどんどん拍子やリズムや局面を変えていくのでいろんな旅をしているような感じがします。ECMならではのピアノやドラムスの音の撮りかたが繊細かつダイナミクスを残してのものなのでこのバンドの録音に適したレーベル&エンジニアなのでしょう。前作STOAより格段に進化した飽きさせることのない素晴らしい演奏が途切れることが無く常に変拍子の緊張感もたまらない傑作アルバムになりました。

Rock Jazz Vol.1 / エリック・ルイス
聞いた名前だと思っていたら、ウィントンマーサリスグループに在籍していたピアニストでした。そのころはおそらくこんな演奏はしていなかったと思う。とにかく暴力的すぎるぐらい低音をガンガンならし連打することでピアノを鳴らすスタイルはフリーインプロではあることだけど、これら全て統一してしかも曲はロック系の曲を取り上げている。連打し過ぎなのか、曲によってはピアノのチューニングがオカシイところもある。
この演奏はまるでハードロックギターのようである。これを真似てピアノ演奏してみたけど疲れて1分と持たない。
すさまじいパワーが必要ですね。演奏するにもそして聞く方も。
最後の「黒く塗れ」はこのアルバムを象徴するかの演奏です。

Double Sextet 2x5 / Steve Reich
新作である、左右に振れる2つの音源とそのずれ、曲が進むと段々とスイングしてくるのである。このシンコペーションのズレがたまらないのである。
カッコよすぎる。この音楽に言葉や説明は不要である。聞き逃してはいけない!
2つの組曲になっていて、エレクトリックの曲は新しい境地ともいえる出来栄えである。メセニーがやっていそうな曲でありながらしっかりライヒの刻印をしてスリリングな演奏を展開している。

次点
Utau / 大貫妙子&坂本龍一
科学融合的に大貫さんの声と教授のピアノがマッチする極上の音楽。
教授のドビッシーのようなピアノと日本語の語感を大切に歌う大貫さんの声が今までに聞いたことがある曲の色を塗り替えていくつもの物語いくものの懐かしい景色に誘ってくれる。

(received '11.1.8)

Sweeperさんのプロフィール...故・ウクレレ前田さんのブログ『裏声喫茶』の常連さん。10年続けて『なんでもTOP10』に参加いただき、こっちのほうでもすっかり常連さん。どうもありがとう!

 

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