−2011年
映画 TOP10− by
Sweeperさん 1
冷たい熱帯魚 (1位以外は順位なし) 2011年という年そのものがトラウマになりそうな年でしたが、映画もそういう映画が多かった。 Best1 冷たい熱帯魚 アンチクライスト 恋の罪 ヒアアフター 127時間 人生、ここにあり ブラックスワン スコット・ピルグリムvs.邪悪な元カレ軍団 孫文の義士団 ブンミおじさんの森 (received
'12.1.25) Sweeperさんのプロフィール...故・ウクレレ前田さんのブログ『裏声喫茶』の常連さん。11年続けて『なんでもTOP10』に参加いただき、こっちのほうでもすっかり常連さん。どうもありがとう!
アンチクライスト
恋の罪
ヒアアフター
127時間
人生、ここにあり
ブラックスワン
スコット・ピルグリムvs.邪悪な元カレ軍団
孫文の義士団
ブンミおじさんの森
3.11のようなものを見せられてしまうとどんなトラウマ映画もそうでなくたってくるのかもしれない。
それでもこれは、という映画を10本選びました。別にトラウマ映画ばかりではない感しれないけど結果そうなったかもしれない。
「冷たい熱帯魚」は日本映画での「事件」ともいえるべき衝撃でした、これを超える「毒」はなかなか出てこないかもしれない。
1位以下は順不同です。
園子温監督作品
反道徳、盛りだくさんの暴力、鬱積する感情、溢れ出る血液、むき出しの欲望
「死霊のはらわた」スプラッタ性と、「ドッグヴィル」「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のラース・フォン・トリアー+「ファニーゲーム」のミヒャエル・ハケネの人間が持つ残酷な一面をもってきて、主演の人達に「こんにちは よろしく」と言わせる凄い映画でした。前半は身を乗り出して、後半は身をのけぞるような画面でした、見ればわかります。諏訪太郎さんが出ているしその時点でカルト映画だけどさらに超カルト映画です。ラストも全然解決になっていないしシュールなおわり方をしているし。。。
主役の吹越さんも「元WAHAHA」のと言われない代表作が出来てしまった。
映画館を出て、「熱帯魚」店の看板に苦笑し、手羽焼きの居酒屋の看板にげんなり、更に韓国料理の生肉で食欲低下しました。
ラーズ・フォン・トリアー監督作品
またこのトリアーは、見てトラウマになるもしくは嫌悪感を感じさせる映画を作りました。はっきり言うとお勧めは出来ません。万人が共感できる映画でもありません、人間の本質を描いているとも思いません。登場人物が2人だけ、そこで交わされる言語と感情のやりとり、しかし状況は願う方向とは全く逆に進んでいく。ドグマ手法なのかもしれないけど、厳格なドグマ手法から離れて、効果音を使い(日本のホラー「リング」の影響らしい)、デジタル映像処理の多用、と外見的には洗練された美しい映像も観れはする。しかし、このザラザラと重く救われない終わりかたはなんということなのでしょうか?アダムとイブをエデンに呼んでまったく逆のことをしてしまった。
だからアンチなんでしょうね。
園子温監督作品
東電OL殺人事件から着想を得て制作された映画。3人の女性の壊れ方が尋常でない。壊れた女たちには当然壊れた男たちが付きまとう。どこかで踏み外してしまった世間的な常識を超えてしまう境界線、エピソードで語られる、ある時ゴミを出そうとして出せずにゴミ回収車を追いかけていくうちに知らない街に辿りついてしまうその結果そのゴミを置いて家には戻らないという語りが前半に語られる。このエピソードがそのうちジワリジワリと効いてくる。前作「冷たい熱帯魚」同様今回の映画も容赦無く追い込まれていく主人公たち、いや追い込まれていくというより深みに入っていく主人公たちという言い方がよりいい。ただ途中から登場するもうひとりの女性の存在感が不気味且つ圧倒的で物語のキーになっていく。この2時間半の奇妙な映画との時間の共有は普段あり得ないなと思わせておきながら実は身近な所に存在する業や願望を凝縮した形なのかもしれない。今回の映画も「人間が一番恐ろしい」というドラマを園子温監督は作ってしまった。
クリント・イーストウッド監督作品
イーストウッド映画でありながら3.11の関係で途中打ち切りになった映画で見に行きそびれた映画であった。
なるほど、これは冒頭の津波のシーンはトラウマを呼び起こさせるシーンの連続であったりする。打ち切りはやむを得ない賢明な選択だったかもしれない。
ただこの映画は「津波映画」ではない。それはひとつのエピソードであって、他にも「呼び起こしたくない」記憶や潜在的な心のひだ、そして語りかけたい気持ちをもちあわせているにも関わらずどうする術も持てないで日々を過ごしている人が多いこと。そしてそのの能力のある人間もまた傷つきやり直したいと思いつつ日々を無為に過ごしてしまっている。劇中の特殊な存在というよりも状況を少し変えれば一般の我々にも当てはまるその気持ちのやるせなさを描き「再出発」のきっかけに出来ればという願いも込められている気がします。巨匠イーストウッドにしてはかなり小ぶりではありますが、暴力も無く静かな心の静寂からまた誰かに繋がりたいと願う気持ちを素直に受けとめれるいい映画でした。
ダニー・ボイル監督作品
単独でアドヴェンチャーを楽しむ若者が岩の裂け目と岩に右手をはさまれて孤立無援になる状況映画。
原作、つまり実際にあった話を元に作られているのだろうけどこれはなんともトラウマになりそうな映画である。映画は恐らく相当脚色しているだろうし、現実のこの状況の時間の流れは恐ろしく長いはず。身動き出来ない状況は何もこういうはさまれてしまう状況だけで無い。現実世界にでもそういうことは存在していると思う。想像力が延命の手助けをして時間をやり過ごすことを何とかしたのかもしれないけど逆に心を惑わせ時間だけを浪費させて問題解決をしていなかったりする、ここに置かれた状況はまさに一人では何もできない生活を痛感させる。殆どモノローグな映画だったけど文字通り「あがく」映画でした。
イタリアで実際にあった話を元に、また細かいエピソードも忠実に再現したところがあるという。イタリアの精神病院で働く患者たちにもっと機会を増やそうという野心的な労働活動家が奮闘、それに患者たちが応えるという話。映画はコメディタッチで描かれているけど背景にある事実は重く、人間は何処まで寛容になれるのか?というテーマにも踏み込んでいて、差別や偏見というところから離れるところの出来ない患者たちとの接し方をも示唆していて勉強になることが多い映画でした。
ダーレン・アロノフスキー監督作品
体を酷使して足の指先が手や腕が痛くなる、傍から見ていると華麗で美しいバレエダンスが近くに寄ってみるとなんと生々しくも痛々しいことか。しかもバレエダンスは常にライバルが居て競争する心のヒリヒリも存在する。主役を射止めてから段々と何かに取りつかれ始めていくような感覚、回りから何か取られるのでは?誰か追い落とそうとするのではないか?それは親切心なのか?そのうち自分自身が信じられなくなってきて現実か幻想か夢か妄想か分からなくなってくる、そんな世界にヒロインが独り入り込んでしまう映像はバレエ同様表面的に美しく申し分ないまでに肉体改造してヴァレリーナになったナタリーとそのシェイプアップしすぎた体を酷使する映像とも相まってしまう。ラストは果たしてそれから解放される喜びからなのかそれともただ妄想から覚めるところかなのかそれとも幕を閉じる前の一瞬なのか。ホラー映画のような怖さを持ちつつも主役級の異常なまでのがんばりでこの映画は成立している。
エドガー・ライト監督作品
「ショーン・オブ・ザ・デッド」や「俺たちスーパーポリスメン!」のエドガー・ライトが、カナダでTVゲーム感覚の映画を作った。
何せ新しい彼女のために以前その彼女と付き合った人達が邪悪な「敵」になって、決闘を挑んでくる不条理は状況を、ゲームの「鉄拳」や「ストリートファイター」ばりの戦いを見せる。その彼はマッチョでも何でも無く頼りなさそうなでもゲームは巧い若モンというギャップのある設定がおかしすぎる。この映画が日本でヒットしないのなら他でもヒットしないだろうね。主人公の彼が新しく惚れる彼女よりもその前に付き合っていた中国系の女の子の方が個人的には好みなんだけど、その女の子も振られてそのまま消えるというわけではなくかなり後半においしい場面を持って行くのが気持ちがよかった。カタヤナギ・ツィンズなんていうお馬鹿なキャラも出してくるし、彼がアトムのTシャツ着ているし、ルームメイトがゲイだったり、元彼だけでなく例外的にレズがいたり、ブラッドパック映画「恋しくて」を思わせる屈折した女ドラマーがいたり、宇宙人みたいな破壊的な能力を持った元彼(「スーパーマン・リターンズ」に出演していたスーパーマン役!というシャレ)などなど、小技大技ありの設定だけでも笑わせてくれる。とにかくゲーマーでなくても、徹底したおバカ感覚が満載の100%オカシイ映画でした、ハマりました。
予告編が素晴らしかったので是非見てみたいと思って見に行った映画。結果、後半は香港カンフー映画全開な展開なアクションとなりました。なかなか見どころがあり面白い映画でした。孫文暗殺を目論む集団とそれを守る義士とまさに英語原題の「暗殺者たちと警護団」との戦いそしてよくドラマとして作られている。ややアクションの過程での殺戮シーンが穏やかだったらもっと映画の印象が違ったかもしれない。後半の「過去の映画の有名なシーン」で見せるオマージュは臭くも無く緊迫感あるシーンに溶け込んでいたけど救いがないのがリアリティある映画に仕上がったのかもしれない。甘い、中途半端な妥協のある香港映画とは言わせない政治を絡ませたアクション映画ではありました。かなり堪能させていただきました、孫文があのように実際にふるまったかどうかな別にして暗殺者に追われる身であったのは確かなようでそういう歴史の裏を垣間見せてくれるところが映画の醍醐味でもあると思う。
タイ映画でカンヌ映画祭パルムドールを受賞した映画。
自然の中、夜の森の中の静けさ、自然の音、精霊、これらが説明的でなくゆったりとしたテンポで映画が進んでいく。
タルコフスキーのような哲学と自然の一致に似ていなくもない。でもここで描かれるのはアジア、タイの田舎の農園。主人公は肝臓を患ったブンミおじさん。ここには悪人も現れなければ邪悪な心を持った者も出てこない、平坦な視線はずっと変わらず。最後のエピソードの部分、あれが理解出来ない、とても重要なところだしかといってそれが陳腐とも思えない。とても最後で不思議な気分にさせられて終わってしまった映画、でもとても余韻がいっぱいでタイの田舎を感じ居る事が出来た。