2011年なんでもTOP10

−2011年 に触れた音楽 TOPいくつか −

by Toneさん

・RED / Until We Have Faces (写真)
・Anthrax / Worship Music
・August Burns Red / Leveler
・Chickenfoot / Chickenfoot3
・Switchfoot / Vice Verses
・Demon Hunter / Death a Destination
・The Devil Wears Prada / Dead Throne
・Underoath / Disambiguation
・Hurtsmile / Hurtsmile
・Stryper / Covering
・Yao Amoabeng / Yokohama
・Yngwie Malmsteen / Relentless
・MR.BIG / What If
・Montrose / Montrose
・Trixter / Hear!
・RUSH / Vapor Trails
・XTC / Wasp Star
・Skillet / 来日公演
・Def Leppard / 来日公演
・Article One 解散
・Revive 解散

今年はいろいろの関係で新譜をあまり聴けてません。
ジャンルにも偏りがあります。しかし覚えている範囲でいくつか。

・RED / Until We Have Faces
今年のナンバーワンは間違いなくREDだったと思う。1stと2ndも良かったが、この今年発表された3rdアルバムは、今までに比べて、メッセージ性が非常に強力になり、バンドとしての表現の焦点がぴったりと合ってきた。そしてリフメイキングやソングライティングが今までになく高度な次元に昇華した。クリスチャンバンドの最前線にいる彼らのようなバンドが、音楽シーン全体を牽引する位置にいるのは素晴らしいことだ。内容は相変わらず暗いが、戦う姿勢を示しており、2月に発表された作品であるが、その後の2011年を通じて崩壊していく世界を予見するような内容だった。実力や、運命、使命の点で、他のバンドより頭ひとつ抜けた存在であり、今後のミュージックシーンの台風の目であり続けるに違いない。

・Anthrax / Worship Music
スラッシュメタルBIG4、四天王の一角、というか、四天王の4番手の存在であるAnthraxであるが、4バンドの中で最も売れていないということはすなわち、ストリートレベルでのメタルのリアルを維持できているということでもある。ジョーイ・ベラドナの復帰作であるこのアルバムは、間違いなくバンドの歴史の中でも特別な位置づけのものだろう。ヘヴィでありながら、軽快かつ、時にはポップといえるくらいにかっとばすスラッシュメタルは、彼らならではのもので、完成度は恐ろしく高い。Worship Musicというタイトルとともに、少し宗教色を感じる内容に取り組んでいて、アルバム後半に進むにつれて重く、悪く言えばかったるくなっていく。決して悪くはないのだが、本来、これは王者Metallicaが取り組むべき内容のテーマであったと思う。しかし現実には、キャリアの中でこの境地までたどり着きこの作品を作ったのは、4番手であるAnthraxだった。運命の皮肉を感じさせる名作だ。

・August Burns Red / Leveler
クリスチャンメタルコアの新しい旗手と言える立ち位置にいるバンドの新譜。非常に真面目かつ実直なバンドであると感じる。前作の方がとっつきは良かったような気がするが、やはり内容は高度であり濃密だ。Loudparkにおけるパフォーマンスは、その実直さが裏目に出ていたような気がする。B!誌にクリスチャンとしての信仰に焦点を当てたインタビュー記事が載ったときには本当に驚いた。時代は変わる。

・Chickenfoot / Chickenfoot3
言わずとしれたスーパー面子によるスーパーバンドであるが、前作以上にこれはサミー・ヘイガーの作品だと思う。おそらくはこのプロジェクト、金を出しているのもサミーならば、イニシアチブを取っているのもサミーだろう。立ち位置や力関係のせいもあるだろうが、つまりは、これだけのメンバーを揃えても、サミー・ヘイガーという男とは個性の点で互角にはやりあえないのである。そう感じた。サミーはそれくらい確固としたものを持ったロックアーティストであり、また一流のビジネスマンだ。そんなサミーを脇役扱いしていたエディ・ヴァン・ヘイレンはやはりとんでもない力量を持ったアーティストだったわけだし、サミーもいつまでもエディの隣で脇役を演じるわけにはいかなかったのだと納得できる。内容は、前作以上にポップさ、バラエティ、とっかかりの多い作品で好感が持てるが、サミーの良い部分と、限界が両方出ている。正直、個人的には"Not 4 Sale"や"Ten 13"あたりのサミーのソロを聞いている方が良いと感じる。2012年にはついにようやく本家Van Halenのアルバムが出るようだが、音楽的にはこのChickenfootでは本家に勝ち目は無いだろう。

・Switchfoot / Vice Verses
前作"Hello Hurricane"は結局グラミーを獲り、新たにシーンの頂上に立った感のあるSwitchfootの、早くも出た新作。たぶんビジネスの関係でリリースしてないだけで、もっとたくさんの楽曲がとっくに完成しているものと思われる。それくらい今のSwitchfootは創造性にあふれている。このVice Versesは、前作Hello Hurricaneほどのストーリー性というのか、ドラマ性はなく、その意味ではインテンスな密度では前作に劣ると思われるが、独特のポップセンスやメッセージ性は全開になっており、魅力を存分に味わえる。サーファーの心を持ち、全盛期のジョン・ボン・ジョヴィのような魅力のハスキーヴォイスと、時に山下達郎のような独特の歌いまわしを持つシンガー、Jon Foremanは、もはや向かうところ敵なしの状態だ。今回、バラードソングが特に出来がよく、聞いていると本当に癒される。信仰を持ったサーファー、海と神を愛する男たち。いちばんいかしたクリスチャンロックバンドである。

・Demon Hunter / Death a Destination
ここ2年ほど、少しずつクリスチャンのメタルコアバンドを聴いて試してきたが、その中でも個人的にいちばん気に入っているのがDemon Hunterだ。曲の構成がしっかりしており、ある意味伝統的でもあるが、不思議なハーモニーや高度に構築されたリフなど、他のメタルコアバンドでは味わえない、異形の美しさともいえる魅力を持っている。そして地に足のついた、確固とした活動スタイルと信仰の強さを感じさせる、そんな魅力を持ったバンドだ。異形のマイノリティと信仰(Faith)という、ヘヴィメタルの究極の概念を高度に体現していると感じる。この"Death a Destination"は、彼らの1st, 2nd, 3rdの3枚をパッケージしたものであり、非常にお買い得だ。ファーストは若干作りが荒いものの、彼らの特異な音楽性は、当初から完成されており、むしろ段々と聞きやすくポップになっていったのだと感じる。最初に聴くのであれば、よりポップというかとっつきやすい4thや5thアルバムをお勧めするが、ここに収録された2ndや3rdの完成度は息を呑むほどだ。正直なところ、誰もが理解できる音ではないと思う。

・The Devil Wears Prada / Dead Throne
若い世代に人気のあるクリスチャンメタルコアバンドの新譜。それほど詳しくは知らないが、ヘヴィながらも元気がよく、ユーモアのあるキャラクターと曲構成、特徴的な声質でキャッチーなメロディを歌うコーラスが強く印象に残る。面白い立ち位置にあるバンドだ。

・Underoath / Disambiguation
クリスチャンメタルコアシーンにて、大きな支持を得て第一線で居続けるバンドの新作。なんでもクリーンヴォイスを担当していたドラマーが脱退し、バンドにとって大きな損失となったが、それを感じさせない作風の深化である、とのこと。メタルコアではあるが、ポストロックの影響が色濃く、また力量のしっかりしたシンガーの見事なパフォーマンスにより、ただのヘヴィロックでは終わらない内容である。音楽性はかなり高度であり、自分は全然チェックしていないが、他のアルバムをチェックしなければと思う。2011年にはフェスティバルの中止により、来日が中止になってしまったが、2012年前半に来日の予定があるとのこと。この劇的な音世界がどのように再現されるのか、期待したい。

・Hurtsmile / Hurtsmile
ExtremeのGary Cheroneと仲間たちによる新バンド。ギターはゲイリーの双子の兄弟であるMark Cheroneなので、顔が同じでわかりづらい(笑)昔ながらのハードロックではあるが、楽曲、サウンドともに十分に高いレベルにあり、勢いもあって素晴らしい。シンプルではあるが、それを上回るロックへの愛情と経験を感じさせる。そしてゲイリーの独特の表現世界が存分に展開されている。小さめのライヴハウスを回るツアーにて来日、ライヴパフォーマンスを目撃することができた。素晴らしかった。うれしかったのは、Van Halen 3 時代の代表曲である"Without You"をやってくれたことだ。ゲイリーに聖書にサインしてもらった。

・Stryper / Covering
元祖クリスチャンヘヴィメタルバンド、Stryperによるカバーアルバム。おなじみのヘヴィメタルの名曲たちを、かなり原曲に忠実なアレンジでカバーしている。彼らのルーツが正しく分かる内容になっている。選曲も、ベタすぎず、渋すぎず、ちょうどいい。そして、なにより素晴らしいのが、それらの名曲の中にあって、最後に収録されている彼らのオリジナルの新曲である"GOD"が、いちばん凄い名曲だということだ。今のStryperの実力の高さが見て取れる。
昨年はLoudparkが一度決まった後にキャンセルになるなど、なかなか来日が実現しなかったが、2011年のLoudparkにて、22年ぶりの来日公演がついに実現した。そのLoudparkにおけるパフォーマンスは、すさまじいほどに素晴らしいものだった。近年体験したヘヴィメタルのコンサートの中では、間違いなくベストと言える。会場に居たメタルファンたちの間に、ちょっとしたStryper旋風を巻き起こした。彼らは歳をとって数倍も良いバンドになったようだ。ここまで凄いとは、正直思わなかった。そんでやっぱし聖書にサインしてもらったのだった。

・Yao Amoabeng / Yokohama
また身内シリーズですが、うちの牧師さん、ガーナ出身の自称浜っ子、ヤオさんが、レゲエのアルバムをついにリリース! 地元横浜でのコンサートも大成功、新聞にも載った、テレビにも出た。親しみやすく、シンプルでいて、味わい深い、素晴らしいソングライターであり、シンガーです。いけいけ、ヤオさん。
http://web.me.com/amoabengyaw/

・Yngwie Malmsteen / Relentless
正確には2010年に出た作品と思う。かなり酷評されてるし、確かに手間と予算をかけずに手抜きして作ったアルバムだし、内容もダレダレだけど、かといって皆が言うほど酷くもないと思う。良い曲は良いし、雑なプレイも一部収録されているが、凄い曲ではやっぱり凄い。で、結局聴き込んでしまう。ピックアップをセイモアダンカンに変えてギターの音が変わったのは、数少ない変化のひとつというべきか、ものすごく音抜けが悪くなった(笑)

・MR.BIG / What If
これも正確には2010年に出た作品と思う。楽曲のフックは正直弱いが、プレイやサウンドは円熟していて素晴らしい。繰り返し聴ける、味のあるアルバムだ。だが、やっぱり楽曲は弱い。そんで、年齢を重ねてスピードだけでなく表現力を増したポール・ギルバートが独壇場といえるくらいに輝いている。同時代のトップを走り抜けてきたハードロックバンドの、旅のひとつの終着地として、興味深く、感慨深いアルバムでもある。

・Montrose / Montrose
大昔の旧譜。モントローズはロック史上かなり過小評価されているバンドのひとつだと思う。アメリカンハードロックのひとつの元祖であり、Ronnie Montroseは、エディ・ヴァン・ヘイレンほどではないかもしれないが、紛れも無く凄い才能を持ったギタリストだ。この先進的かつ普遍的なハードロックをこの時代に作り上げたのは物凄いとしか言いようが無い。

・Trixter / Hear!
大昔の旧譜。私の好きな、80年代終わりや90年代初期に出てきた世代のヘアメタルバンドだ。デビューしたと思ったらメタルブームが終わってしまったという気の毒な世代のバンドでもある。そしてこのTrixterは、ニュージャージー州のParamusという平和な街の出身であるが、80年代ヘアメタルのイメージにふさわしい、元気いっぱい、明るく健康的、ポジティブで純粋という、絵に描いたようなバンドで、個人的にツボにはまった。この2ndアルバムはサウンドも素晴らしく、内容も骨太で画期的な内容だ。ギタープレイもExtremeのヌーノに負けていない。しかし世間にはスルーされたのだった。1stは非常にチープな作りだが、とても若々しくキュートでポップだ。とても萌えるバンドである。

・RUSH / Vapor Trails
大御所RUSHの旧譜。今年もちょっとずつRUSHを聴いたし、来年もきっと聴くだろう。個人的にはRUSHはどう考えても天才のバンドではない。素晴らしく優秀な凡人が最高の努力を積み重ねてできたバンドだと感じる。だからRUSHがどんなに複雑なサウンドを作り上げようとも、天才がコードを一発鳴らしただけで負けてしまうと思う。しかしだからといってRUSHが人間に作りうる最高のロックであり地上最高のバンドのひとつであることに変わりはないし、ミュージシャンならRUSHから学ぶことは誰だって山のようにある。

・XTC / Wasp Star
大御所ニューウェイヴアーティストの、事実上のラストアルバムであるらしい。どれだけ時代や世界から離れたところに、どれだけ豊かで豊穣で幸せな境地があることか。僕たちはそれに気づかずにいるだけだ。でも、いまどきもうこんなロックは許されないだろうな。本当に素晴らしい。一個ずつ旧譜をたどっていきたい。

・Skillet / 来日公演
昨年、アルバム"Awake"を高く評価したが、2月に来日公演を見ることができた。見ているだけでのせられてしまう女性ドラマー、手を触れなくても音が出るベース(ていうか影でサポートプレイヤーが弾いていた)、外人ばっかの会場、そして、しかし、なにより現代を代表するバンドの、とてつもなく熱いメッセージとパフォーマンス。日本のライヴにもかかわらず、MCで「僕たちの救い主ジーザス・クライスト」と発言する真摯な姿勢。十分に私の心に火をつけてくれた。

・Def Leppard / 来日公演
80年代に、凡百のメタルバンドとはまったく違う次元で桁違いの売り上げと、誰も届かない高度でキャッチーなロックを完成させたDef Leppardの、健在ぶりを見せ付ける来日公演を秋に見ることができた。全盛期のサウンド作りは名プロデューサーMutt Langeによるところが大きいのはよく言われることであるが、ロックの本質を常に捉えたブリティッシュロックの王道といえる音楽性はいつの時期にも不変だ。ロック、そしてブリティッシュロックというものの本質を、これ以上ないくらいに体現するバンドとして、高く評価していたが、今回、こうして素晴らしいライヴパフォーマンスを体験する中で、ブリティッシュロックが持つ負の側面を図らずも感じてしまい、それ以降、世界観というのか、ロック史感が変わってしまった。もはやDef Leppardも素直に聴けなくなってしまったが、貴重な体験だった。

・Article One 解散
個人的に気に入っていたカナダのクリスチャンバンド、Article Oneが解散した。
昨年発表したアルバム"Clarity"を最後に。なんとなく予想はしていた。
しかし、それでもやはりショックだ。"Clarity"は今年、たくさん聴いたし、バンドの遠征中にも聴いていたし、とても素直で美しく画期的なアルバムであったと思う。音楽業界の状況がどんどん厳しくなっていってるのはわかるが、こういう稀有なバンドこそ、もっと粘ってがんばってくれたらいいのに、と、心からそう思う。

・Revive 解散
個人的に気に入っていたオーストラリア出身のクリスチャンバンドであるReviveが解散した。昨年発表されたアルバム"Blink"は本当に凄い作品だっただけに、本当に残念だ。これもなんとなく予想はしていた。この手の素直なクリスチャンロックのバンドにしては、骨太すぎるというか、ハードすぎるサウンドを持つ彼らの苦戦は予想していたからだ。こういう稀有な個性を持ったバンドこそ、そう簡単に解散すべきではない。もうちょっとがんばって音楽を届けて欲しかった。家庭を優先する、とか、学業に専念する、とか、教会を通じて地元に貢献する、とか、言うんじゃねえ(泣) そして、バンドの遠征時に、某所のカンファレンスにて、メンバーの一人に会うことができた。2ndから参加した雇われアメリカ人ギタリストだけど。貴重な出会いだった。シンガーのデイヴに言っておいてくれよ、お前らの大ファンだった日本人がいるってさ。

(received '11.12.30)

Toneさんのプロフィール...日本初のクリスチャンヘヴィメタルバンドを名乗るImari Tonesで演奏したりしている人でございます。(御本人による紹介)

INDEX