2012年なんでもTOP10

−2012年 美術 TOP10−

by Sweeperさん

1位 生誕100年松本竣介展@世田谷美術館
・没後150年歌川国芳展@森アーツセンターギャラリー
・'sogno・夢 二田原英二と時代を担う作家展@佐藤美術館
・ジャクソン・ポロック展@東京近代国立美術館
・原弘と東京近代国立美術館 デザインワークを通して見えてくるもの@東京近代国立美術館
・セザンヌ パリとプロヴァンス展@新国立美術館
・アンリ・ル・シダネル展@損保ジャパン東郷青児美術館
・ジェームズ・アンソール展@損保ジャパン東郷青児美術館
・特別展「生誕100年 船田玉樹(ふなだ ぎょくじゅ)」@練馬区立美術館
・棚田康司‐たちのぼる。展@練馬区立美術館

(1位以外は順位なし)

1位以下は順不同ということです。
1位は松本竣介展、若くして亡くなった芸術家の物語が作品を通じて追える中身の濃い企画でした。
数年ごとに作風を変えていく姿勢に共感もするも生き急いだ才能を惜しむも既に遅いのでしょう。

1位 生誕100年松本竣介展@世田谷美術館
どこかの常設展にあった、「Y市の橋」という絵がずーと印象にあって、いつかまとめてみてみたいという気持ちがあった。
この近所の世田谷で見れるのは正直うれしい。(Y市は横浜市のこと、その橋もそのものの橋は無く幾つかのスケッチ/イメージの合わせたものらしい)ルオーを思わせる太い黒の輪郭線からピカソを思わせる蒼い絵とモンタージュ手法(モチーフを重ねる)、デフォルメした人物画、空虚な風景(「Y市の橋」はここに入る)、さらに抽象的な構図にまで行ったのだけど、道半ばで早世してしまう儚さしかし作品は残り、こうやって当時を全く知らない私のようなものでも触れられるそして感嘆すべき幾つかの作品がありそれは理屈をこえて伝わってくるもの、しかし作品そのものはかなりクールな絵だったりもする。万人に共有できるものではないものの後を弾く魅力にあふれている。彼は耳が不自由だったらしい、そんなことは別に作品に関係ないと思う。でも空虚な風景の作品にはその音の無い冷ややかな感覚が感じようと思えばそう思えるかもしれない。常設展も排して一部、二部という量もさることながら、ある芸術家の物語性まで描いて見せた企画力も流石でした。

・没後150年歌川国芳展@森アーツセンターギャラリー
エネルギッシュ、ダイナミック、独創的、奔放、繊細、ユーモア、どの言葉も当てはまるこんな天才が江戸時代にいたのです。
浮世絵の作品そのものはやや小さいけれどこれほど作品を残せたのが奇跡とも思えます。
ヨーロッパからの影響も取り入れているというけど、当然歌川国芳がヨーロッパの芸術家たちに与えた影響はかなりあると思う。これだけの天才は日本人である云々である前にみんな見て欲しいと思う。これは見逃してはいけない!

・'sogno・夢 二田原英二と時代を担う作家展@佐藤美術館
佐藤美術館という存在を初めて知った、千駄ヶ谷にあるビルなのだ、美術館というよりギャラリーに近い。
二田原英二展は4F、「時代を担う作家」は3Fでの開催。
二田原英二展は興味深い、街のワンポイントで設置されているモニュメントアートとして有名らしいのだけど初めて知りました。こうやって作品(といっても10点ぐらいでしたが)その作家性が理解できてくる。やはりこういう機会があるとその作品の根底を流れている物語性も理解できてくる。ブロンズ作品は1日やそこらで出来るものではないし、何人もの共同作業で無いとあれが出来あがって来ないというスライド画像も見れて勉強になりました。
「時代を担う作家」は何人かいたのですが、なかなか面白い半面、寄せ集め的になってしまい顔が見えない展示になってしまうのがとても残念ですね、もっと展示があればいいのだけど数点ではとても評価も出来ないです。まあ、作品は楽しめるオブジェアートがあってよかったけど。

・ジャクソン・ポロック展@東京近代国立美術館
まあ、ポロックの全作品が見れるというわけではないけど普段見ることが無い若いことの、あの有名なペインティングに至る前の作品を多く見れたという意味ではかなり収穫のある展覧会だったと思う。MOMAにある所蔵品はもっとあるはずなのだけど今回の展示ではわずか数点でしかなかったのが心残りでもある。とはいえ、生であのペインティングに接することの重要性を語らなくてはいけない。圧倒されます、後ろにのけぞりそうになります、ポロックが描いた絵が既に彼の所から離れて違ったエネルギーを発してグワグワと前面にオーラを発し続けるのですね。「Number7 1950」、「Number11 1949」、そしてアメリカでは見ることができない、テヘラン美術館所蔵の「インディアンレッドの地の壁画」、これらには「うねり」を是非感じて欲しいなぁと思う。初めて見た時も凄い衝撃だったけど、今回見ても十分なくらいパワーがみなぎっていた、やはり本物です、確かに評論家の中にはあれはアートではないという人もいますが、別にアートで無くてもいいから凄いものは凄いんだ、というもので感じればいいだけだと思う、感じなければそれまでかもしれないけど。

・原弘と東京近代国立美術館 デザインワークを通して見えてくるもの@東京近代国立美術館
装丁、ポスター、これらの仕事は一見デザインやアートの世界からは一つランクが下がる評価がされることがあることを聞いたことがある。ただ、原弘氏の仕事を見るとこれはもうアートそのもので、コラージュもあったりするけどクリエイティブなセンスが無ければあれだけの仕事が出来ないはず。今回初めて名前を知ったのだけど見たことがあるデザインも幾つかあったりそうでなくても時代の匂いを文字の形やデザインに映しこんだりまちゃその時代とは別にしっかりした広告性おも備えつつはっきりとその人の仕事と言える作風が感じられてとても刺激になる展示でした、こういう通常は裏方の仕事になり埋没しがちだけど、これはとてもいい企画かつ見れて良かったと思える企画でした。

・セザンヌ パリとプロヴァンス展@新国立美術館
溶けていくような緑
歪な建物
静物絵もその歪なところから緊張感がある、今にも落ちそうなクロスに乗っている果物や皿もユーモアなのか?
相当塗りたぐった表面
繰り返し同じモデル、テーマを書き続ける
庭師ヴァリエは重厚な塗りたぐった物と晩年に描かれたものとありどちらもいいが敢えて言うなら「塗りたぐった」絵に強く引き付けられた。風景画は得意なのだろうけど水面に映る景色は少ないし意外と得意ではなかったかもしれない
サント=ヴィクトワール山はもっと描かれているのが全部きているというわけではないけどと思うけど多い題材
初期の絵画は誰でもない絵画が多いけど確立してからの絵は全てセザンヌの絵画という雰囲気があふれている。
http://cezanne.exhn.jp/

・アンリ・ル・シダネル展@損保ジャパン東郷青児美術館
点描画のような淡いタッチで日本でも人気が出そうなものだけど知名度はいま一つかもしれない。多分に絵画の完成度や作風の統一感が薄いからかもしれない。実際この画家はこれほど見るのは初めてだったしそう思った。しかし、夜の月明かりや夕暮れの町や家の風景は引き込まれるような世界があり、この画家の魅力はその辺りなのだろうと思った次第。その淡い絵は近付くと細かく書き込んで無いように見えるけど遠くに離れてみるとボンヤリと浮かんで見えるまるでマジックな絵でこの計算づくな絵画には圧倒もされあのような景色に溶け込んでみたいと思う瞬間でもある。

・ジェームズ・アンソール展@損保ジャパン東郷青児美術館
最初に言っておかなくてはいけないのだけど、ジェームズ・アンソール本人の作品は半分くらいしかない。
ジェームズ・アンソールの同時代もしくは影響を与えた作品が、アントワープ王立美術館所蔵から来ているという印象でした。その意味では初期の作品のものもあるけどその隣にはその影響を与えた別人の作品があったりする。
それがかなり散漫な印象になってしまうよくない展示の仕方になっている。
ジェームズ・アンソール本人のポスターになっているようなグロテスクな作品は多くなく、それもややがっかりする。
ジェームズ・アンソール本人のポスターになっているグロテスクな作品は、その絵のまえに来た老人が「これ酷いな」と突然叫ぶ、そのあとでこれを見ていた人に「これ、どう思います?」と聴いたりしていた。確かにそう思われてもおかしくないくらいセンセーショナルな作風ではある。ジェームズ・アンソールは譜面が読めなかったらしいけど音楽を残していてその譜面があった(多分誰かが書き写したのでしょう)、GmajorからGminorに唐突に変わる曲だったり不安定なメロディが提示されていたりして、これも当時は「これ、酷いな」と言われたことなんのでしょう、この曲は面白そうだったなぁ。

・特別展「生誕100年 船田玉樹(ふなだ ぎょくじゅ)」@練馬区立美術館
琳派とも洋画ともいえぬ何とも言えない画風
淡い色彩ともいえるけどそうでもないような色使いもあり。
個展をやってくれなかったら巡り合わなかった絵の数々
正当派とは言えないらしいけど、このどこか考えさせられる構図と色彩は後を引きます。

・棚田康司‐たちのぼる。展@練馬区立美術館
絵画ではなくて、木彫を基に細過ぎる少年少女をテーマにした現代アートという、一貫したテーマが示されている。
出品数はやや少ないのかな?と思ったりもした。
かたどりした顔にデコレーションするものもあったり、単に木彫のアートというモノではない世界がある。
1967年生まれということでまだまだ第一線で現代アートシーンをドンドンと混とんとさせてほしい気がします、かなり異質だけどこの異質さはなかなか気持ちがいい。

(received '13.1.21)

Sweeperさんのプロフィール...故・ウクレレ前田さんのブログ『裏声喫茶』の常連さん。12年続けて『なんでもTOP10』に参加いただき、こっちのほうでもすっかり常連さん。どうもありがとう!

 

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